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雨の自然を楽しむために

私は夏場は主に山小屋で働いていますが、それ以外の期間も山間部や自然豊かな地域のホテルや旅館で働いています。
そのためお迎えするお客様も「ハイキング」や「渓流散策」といった屋外でのアクティビティを楽しみに来られます。

このような宿では、晴れていれば問答無用に満足していただける反面、
雨が降ってしまうとお客様の残念そうな様子が見受けられ、宿の評価自体にも関わってきてしまいます。
そんな雨の日、いかに楽しんでもらって満足度を上げるかが「自然」を売りにしている宿の1つの大きな課題と言えます。

私も最近までは雨の日は、いかに館内で寛いでもらうか、楽しんでもらうか、を意識していましたが、
最近は雨であっても外に出てもらったほうがいいんじゃないか、と改めて思っています。


雨の日はよくあいにくの天気と称されます。

あいにくのお天気ですので本日は中で営業いたします」

あいにくのお天気ですが館内でごゆっくりお寛ぎください」

ですとか、今パッと思い浮かんだ言い回しを上げてみましたが、
雨の日はこのような言葉を使ったり、言われることが多いのではないでしょうか。


ただ最近は雨の日も決して「あいにく」ではないと思っているので使わないようにしています。

確かに晴れの日ほど景色も見られませんし、散策するにも寒く、傘を持ちながら行動するのも手間、濡れるのも不快かもしれません。

しかしながら雨の日は雨の日で自然の中では普段とは違った空気が流れています。

そう思うようになったきっかけは今年の冬を岐阜県の奥飛騨で過ごした時のこと。

奥飛騨は豪雪地帯ではないものの、冬の間は雪に包まれる雪国です。そのため気温が高くならない限り雨が降りません。
それはある意味とっても乾燥した期間です。雪の世界では匂いがありません。

匂いの成分は水蒸気によってその場に留まる性質があるようですが、乾燥していると匂い成分は大気中に散らばっていってしまうのだそうです。

以前テレビで登山家の野口健さんがエヴェレストについて「無臭」だと話していましたが、それと同じような感覚だと思っています。

春になって暖かくなり、3カ月ぶりくらいの雨が降った時に、急に木や土の湿った香りが漂ってきて、急に嗅覚が「くんくん」と忙しく活動し始めます。

そしてこの香りは同時に植物が生き生きとしているような雰囲気をもたらすのです。
春先の最初の雨の日はなんだか興奮したのを覚えています。

上記は冬から春へと移り変わった際のギャップなのですが、
恐らく都市から自然豊かな場所へ来た際にも同じ感覚が得られるのではないでしょうか。

雨の日の自然は、多分五感を使って楽しむ最良の日だと思うのです。

先ほど上げた例は「嗅覚」でしたが、

耳を澄ませて雨のしずくが落ちる音を「聴覚」で感じたり、草木やクモの巣についた水滴を「視覚」でながめたり。

「触覚」については、傘ではなくてレインウェアを着て体で雨を感じれば良いと思っています。
極端な話、気温が低くなければ濡れてもよい服装でびしょぬれになってしまえばいいとも思っています。

全身で雨を感じ、雨に濡れた自然を楽しんで、宿に戻って温かいお風呂や温泉に浸かれば最高なはずです。
(きっとずぶ濡れになって登山をした経験のある方ならわかってくださるはず!)

普段町で生活を送るぶんには、ずぶ濡れになっていたら好奇の目で見られてしまいますが、
自然の中ではきっと大目に見てもらえるはずです。

いつか雨の日に嬉しくなる感覚を、色々な人と共有できるようにしたいと思います。

つの

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