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山小屋の読書感想文②『黒部源流山小屋暮らし』

山小屋本2冊目は、
やまとけいこさんの『黒部源流山小屋暮らし』(山と渓谷社)



北アルプス 薬師沢小屋のスタッフで、
イラストレーターでもある
やまとけいこ さんが綴られた山小屋本です。

現役で働いている山小屋スタッフが書いているという点で、非常に珍しいかもしれません。


この本の特徴は何といっても、
やまとけいこさんの描くイラスト。

とても優しい雰囲気で、
色使いもよく眺めているだけで心が和みます。

特に薬師沢小屋に現れるクマやヤマネのイラストが必見です。

また山小屋の見取り図や従業員部屋の様子、
夕食のメニューなど、
他の山小屋の本では
情報があまり出ない部分まで
詳しく描かれているので参考になります。


絵を楽しみながら読み進めていくと、
あっという間に読了してしまう作品です。



またこの本のもう一つの特徴は薬師沢が舞台ということ。
他の北アルプスの小屋と比べると特殊です。

北アルプスの山小屋というとイメージする稜線ではなく、本当に沢の近く。
標高は1920mということで、
私の働く小屋よりも700mほど低い場所です。

沢の近くなので飲み水には困りませんが、
逆に増水した時のトラブルなど
稜線の山小屋とはまた違ったエピソードもでてきます。

森林限界よりも下なので、
山の小屋というよりも森の小屋といったほうが近いかもしれません。
故に動物たちのエピソードも他の本と比べて圧倒的に多いです。

以下は実際に私が訪れた時の写真↓

周りを沢に囲まれた小屋


実は小屋が傾いているそうです…
小屋前の吊り橋


イラストによって非常にわかりやすい一方で、
前回ご紹介した『山小屋ガールの癒されない日々』と比べて、
薬師沢小屋という舞台がはっきりしているため、小屋のある黒部源流周辺の地名が頻繁にでてきます。


この場所の魅力を語る上では外せない部分でもるので、
北アルプスの位置関係をザックリとでも知っていたほうが、より楽しめるような気がします。
(本の中にも簡易的な地図はあります)

全く山を知らない方でも楽しめますが、
少しでも山に関わっていると、
読みやすくより楽しめる作品かな、と思います。

ちなみに、やまとけいこさんの2冊目の作品
蝸牛登山画帖』は、
より著者のバックグラウンドに迫った作品です。
一登山家の、また一山小屋スタッフの
生き方が垣間見ることができる作品になっています。


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