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「発達障害者はきらめく才能を持つ」という都市伝説


「発達障害者はきらめく才能を持つ」という説があります。

実際、発達障害を持ちながら活躍する人がいます。

セカオワの深瀬さん、リトグリの芹奈さん、YouTuberのかわにしみきさん等、発達障害を公表している有名人は少なくありません。
偉人でいうとエジソンやモーツアルト、ピカソ、ゴッホは発達障害者だったと言われています。

しかし、「発達障害は才能を持つ」説は、ひとつの都市伝説だと私は考えています。


 *  *  *

 

なぜ、このような説は生まれたのでしょうか。



ひとつは単純に発達障害の人口数が多いことが挙げられます。

発達障害は数十人に一人の確率で持っているとされ、決して珍しい存在ではありません。
才能を発揮している人をランダムに100人選んだら、確率的に一人か二人は発達障害の人がいるはずです。


 
もう一つは、才能を持った発達障害者がメディアに取り上げられやすいことが挙げられます。

障害の特集番組を作りたいとき、感動ポルノを作りたいとき、ダイバーシティーを語りたいとき、ストーリーになるのは平凡な発達障害者よりも、何かしらの才能を持った発達障害者です。

メディアに登場する発達障害者がきらめく才能を持つ人に偏ることで、世の皆さまは「発達障害の人は突出した才能を持っているのね」というイメージを持ちます。




これら表面的に左右される要素に加えて、当説にはもっと根の部分にマイノリティー特有の背景が絡んでいると私は考えます。




 
突然ですが、ユダヤ人には優秀な人が非常に多いという話をきいたことはありますか?

ユダヤ人は世界人口の0.2パーセントであるのに対し、ノーベル賞受賞者のうちユダヤ民族が占める割合は20%を超えています。


ユダヤ人は迫害の歴史を歩んできました。
祖国を追いやられ、新たな土地についてもまた逃げなくてはいけない過酷な境遇にありました。

いつ土地を奪われるか分からず農業の道も閉ざされた彼らにとっては、「勉学」が生き残るための手段でした。
頭の中にある知識だけは誰にも奪われることはありません。

ユダヤ人はストイックに勉強することを宗教のシステムとして取り入れ、彼らの多くが、研究者や弁護士、教師、金融業といった頭脳労働で生計を立てる道を選びました。

彼らが優秀なのは生まれ持った才能があるからではありません。
彼らが背負ってきた厳しい宿命の中で、優秀にならざるをえなかったからです。



現在の発達障害者の境遇は、かつてのユダヤ民族と似ているように思います。


発達障害者は不登校だった人、退職に追い込まれた人など、集団から弾かれた経験のある人が多い。
また発達障害者は学校の中退率も高く、短期離職を繰り返しやすいと言われています。
特に日本の学校教育や企業組織では協調性が重んじられるため、発達障害者にはいっそう生きづらい状況にあります。


発達障害を持った人は集団では爪弾きにされてしまいがちです。

だからこそ、世間の物差しで測られることのない世界で生きていくために得意分野を必死に磨き続けた、というのはよく聞く話。


突出した特技は発達障害者が社会をサバイブするうえでの武器になるのです。


「発達障害は才能を持っている」説ができた背景には、集団から排除されてもなお人生を諦めないために特技を磨き続けた、彼らの哀しくも逞しい姿が私には垣間見えるのです。