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エッセイ

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#恋愛

あぁ、この時なのか、と。

あぁ、この時なのか、と。

別れるその日の後ろ姿がいちばん美しかった。

冬の風の強い日だった。
倒れそうになる自転車を懸命に漕いだ。
彼に懇願してももうダメなことは明確だった。
それでも携帯越しなんて、顔を見れば何か、何か違うはずだと、思いたかった。
思えば2年近く付き合っていた。
強い風の音が耳を塞ぎ遮断した。
自転車を漕ぐのに精一杯で、不安とか悲しみとかよりも彼の後ろについて行くのがやっとだった。
田んぼの間の道を西日

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