御社の社風

「御社の社風を教えてください」という質問はなぜイケてないのか?

結論としては、「御社の社風を教えてください」と聞かれても、"会社さん" はいないので明確に答えようがないから、です。

「会社」は、実在しないモンスターだ。これは、弊社の社長・青野が最近よく話している言葉です。

多様な個性を持つ個人が集まってチームをつくり、それらのチーム同士が絡み合って会社という組織ができています。そこに確かに存在するのは、会社を構成する人々です。ですから、「会社」そのものは、手に取って確かめうる存在ではなく、虚像でしかありません。つまるところ、会社を明確に指し示すことのできる表現としての「社風」は実在しないのではないでしょうか。

確実に存在すると言えるのは、あるチームに所属する具体的な個人です。人が「社風」という言葉を用いるとき、それが意味するのは、ある特定のチームに所属するメンバー間のミクロな関係性が相互作用し、結果的に醸成された雰囲気や空気感のようなものを指してのことだと考えられます。


「御社の社風を教えてください」


採用担当者として多くの学生、求職者の方とお話をしてきたなかで、よく聞かれる質問です。

この質問をすることへの否定はしませんが、ひとつ気をつけておきたいことがあります。この質問への回答には「相手の価値観や偏見を通した上での会社に対する所感しか含まれない」ということです。

正直な話をすると、僕が学生からこの質問をされたときには「明確に話せるのは、ふだん接しているメンバーや所属する部署のことに限られるのですが……」と前置きをしてから話します。

部署やチームの数だけ違いがあります。それらすべてを熟知できるほど、多岐にわたってのフルコミットはできません。各部署で働く人たちの現在を、ひとりの人間がリアルな感覚でありありと伝えるのは難しいことです。

(弊社には他部署の業務を経験することのできる「体験入部」という制度があるので、それをフル活用すれば擬似的には伝えられるかもしれないですが)

サイボウズでは、情報が常にオープンに共有されており、社内で今どんなことが起こっているのかを知ることはできます。テキスト上から読み取れる空気感や、日常の接点から感じたことを伝えるだけであれば難なく可能です。しかしながら、実際に顔を合わせて長い時間をともにすることでしか分からないチームの熱量を、そのままに伝えることは容易ではありません。

部署やチームという単位ですらこれなので、ましてや「社風」となると、これを明確に表現するのは実は難しい。そういう結論に落ち着きました。


結局のところ、聞き方の問題に帰着するのではないでしょうか。

もし「会社全体として目指していきたい方向性」のことを問われれば、企業理念を答えます。「一人ひとりのメンバーが大切にすべき行動指針」のことを問われれば、バリューとして定めている4つの考え方を答えます。下図、右側を参照。

企業理念2019

「社風」という言葉には「会社」というあいまいな存在の影がつきまといます。言葉の解像度を上げ、自分が欲しい情報を得るためにどんな聞き方をすればよいのかを考えることが大切です。

希望する部署やチームがあれば、もっとも確実なのはそこに所属するメンバーに実際の話を聞いてみることでしょう。OBOG訪問だったり、SNSでの発信を確認することだったり。企業の情報公開が盛んになっている今、透明性あるコミュニケーションを取ってくれることもあるはずです。

質問の聞き方、情報収集の動き方を変えるだけで、得られるものに差が出てくる可能性があります。ここまで読み進めてくださったあなたに、何かひとつでもヒントを持ち帰っていただけたなら幸いです。

頂戴したサポートは、私からのサポートを通じてまた別のだれかへと巡っていきます。