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命が願う世界を生きる。「ヒューマンテクノロジー」ワークショップレポート#最終回

2021年6月からスタートした「TSUNAGU FASHION LABORATORY」。「個人の心の在り方からファッションの世界を再生する」をテーマに、毎月多彩なナビゲーターによるワークショップを行ってきました。

これまでTSUNAGUでは、リジェネラティブデザインプログラムとして、心のあり方・意識を捉え直す「ヒューマンテクノロジー」と、新たな社会変革を考える「クリエイティブイノベーション」の2つの軸でワークショップを展開してきました。

「ヒューマンテクノロジー」の最終回となる今回は、これまでの学びを振り返りながら、自分自身の願いをライフマップに描くワークを実施しました。自分の願いを生きるとは、一体どのようなことなのか?今回も、心の変容と社会変革のつながりを学んでいきました!

☆後藤さんの取材記事はこちら

すべてがつながりあう、ヒューマンテクノロジーの世界

心の変容と社会変革というアプローチとして、個々人がそれぞれの命が願う世界を生きる。それこそが、意図せずとも結果として起きてくる社会変革の源動力であり、仕組みである——。後藤さんは、そういった視点に立ち、これまで「命が願う世界を生きる」をテーマにヒューマンテクノロジーのプログラムを育んできました。

実際に、環境や社会問題に対しては興味があるけど自分の心についてはよくわからなかったり、逆に自分の幸せに興味があっても社会問題には関心がなかったり…。そういった場面を目にすることがあるかもしれません。しかし、このプログラムでは「すべてがつながっている」という意識が基盤にあると後藤さんは話します。

ここで、思想家・環境活動家のサティシュ・クマールさんからの「愛のメッセージ」が紹介されました。環境運動や社会運動の活動をするサティシュさんは、常に愛の心を持ちながら、Soil(土)・Soul(心)・Society(社会)を大切にしているといいます。地球や自分自身を大切にすることは、自分の周りや社会を大切にすることに直結している。そして、まず重要なのは、これらがつながっているということに意識を向けること。そして、自分自身の「氣」がどこに向いているのかを意識することが、結果として自分の命の願いにつながると後藤さんは話しました。

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(後藤さんのスライド資料より)

自己の拡大とは、すべての生命が仲間であり、つながりあっていたということを思い出していくこと。わたしたち人間、そしてすべての生命がつながりあっていることを思い出した時、分断されたもの同士が結びついていき、織り直されていく——。こうしたつながりを思い出すことこそ、今ある社会問題や環境問題が持続可能な方向へと転換する解決策だと後藤さんは考えています。

このTSUNAGU FASHION LABORATORYを主催する小森さん自身も、環境破壊などに対する問題意識を持ち、「人間社会」(上記の図の緑の部分)にずっと目を向けていたと話します。その中で、環境問題や社会問題など社会的なことは大切にするのに身近な人を大事にしていなかったり、コミュニティのことは大切にしているのに自分は大切にしていなかったり…と、矛盾した状況を感じてきたといいます。そして、結果としてそうした「矛盾」が自分自身の傷になっていったと話します。

後藤さんは、そうした小森さんの話を受けながら、自分と社会の幸せは同時に起こるものだと話します。「自分を幸せにする」という一端だけでなく、「すべてが自分とつながっている」と意識した時、自分が環境問題など社会的活動をしているのにパートナーを傷つけていたことに対する自覚が生まれ、その状況に変化が生まれる——。

自分の痛みは社会に反映されていくため、自分自身に意識を向けるだけでなく、「すべてが自分とつながりあっている」という構造自体を捉えることも大事だと後藤さんは話します。こうしたつながりあった構造を意識すると、自分の幸せが環境破壊につながったり、逆に環境問題に取り組みことは自己犠牲を伴ったりするという、ある意味で矛盾した関係は本来起きないといいます。

自分を見つめ、命の願いに耳を傾ける

次に、このリジェネラティブデザインプログラムがスタートした時から今回のワークショップまでの時間を連続した流れとして紙に描いていきました。その中で、自分の人生を豊かにしてくれた出来事や転機、意味を感じていることなどにシンボルやアイコンを描きます。現在地までを描いた後、そこから今後自分がどのような人生の道を歩みたいか、自分自身の「命の願い」に触れていきました。

そうした命の願いを見つめる上で重要な鍵となるのが、自分自身が持つ「パワー」です。実は、最も自分が恐れているのは「闇」ではなく「光」、すなわち自分の並外れたパワーだと後藤さんは話します。自分が生まれ持ったパワーは何か、そしてそのパワーを自分自身のイメージや感覚を使って捉え、描いていきました。

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(後藤さんのスライド資料より)

ヒューマンテクノロジーの核を捉える際、「すべてが私」という大きな自己がありますが、そもそもその自己にも多くのレイヤーが存在します。外側の肉体や、内部、そして魂があり、これらが集まって「自分」になる。本来の命の願いには、自分の使命やコーリングから来るものと、「こうしたい!」というマインド(意識)から生まれ出てくるものがあります。それぞれ願いの形は異なりますが、こうした願いに優劣はないといいます。自分自身の願いに触れ、自分と社会とのつながりを見出した時、「すべては自分だ」という血流が巡っていくと後藤さんは話します。

アボカドに例えると、「皮」が自分の肉体、「身」が内部、そして「種」は魂を意味します。その種に栄養を与えれば、自分らしい花を咲かせることができる。すなわち、自らの「種」を振り返ることが自分の命の願いとつながるといいます。

「使命」と「リソース」を明確にする

ここからは具体的に、ジョアンナ・メイシーさんのワークをもとにして作られた「前へ進むワーク」を実施しました。自分は、自分自身と地球上で生きるもののために何をするか、その目的を実現するために助けとなるような内側のリソース (才能や性格、知識や技術など)や外側のリソース(人脈、人間関係、不動産、貯金など)にはどのようなものがあるか。そして、現在自分が必要としている内側・外側のリソースとは何か——。こうした問いに向き合い、それぞれライフマップを描いていきました。

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(後藤さんのスライド資料より)


今回のワークショップでは、自分を見つめ、アウトプットする時間が多く、筆者自身もこれまで、そしてこれからの自分を見つめる濃い時間となりました。

特に印象的だったのが、ヒューマンテクノロジーの核の部分のお話です。私自身も、「誰かのために」という奉仕精神は、自分自身のキャパシティを超えると「負荷」となり、結果として「自己犠牲」につながってしまう面もあると感じてきました。

だからこそ、まず自分自身が真に何を願うのか、その心を知ることはとても大切だと感じます。私自身も、焦らずすぐにその願いを見つけようとせず、日々のいろいろな経験を通して、じっくり自分の願いと向き合っていきたいと思います!


Written by Mari Kozawa


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