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【CEOインタビュー】”デザインを理解するAI”でWebサイト開発の未来を変えよう

「AIで、ヒトの創意に火をつける。テックの現場を単純労働から解放し、ヒトがもっと新しいことに挑戦できる世界へ。」

このミッションのもと、Webサイトのフロントエンド開発自動化に取り組むTsunagu.AIはWebサイトのコーディング時間を50%削減することに成功しました。
しかし『FRONT-END.AI』で目指しているのはもっと先、完全なる自動化です。

経済産業省が2022年5月に「未来人材ビジョン」で示したように世の中のエンジニアの需要がさらに高まる背景の中、2025年のフロントエンド開発完全自動化を目指してチームを導くCEOにインタビューしました。

Web業界に向けたプロダクトを選択した理由は。
なぜAIによる自動化が必要なのか。
Webサイト開発の未来をどうイメージしているのか。
Tsunagu.AIで得られる経験とは。

CEOの言葉で創業期にあるスタートアップ・Tsunagu.AIの姿を鮮明にしていきます。


プロフィール

代表取締役CEO:森 隆晃(もり たかあき)
株式会社メンバーズにて、リスティング広告入札最適化ツールの新規事業を経験。 その後Webサービスの構築・運用支援を担当。 株式会社グッドパッチではUXデザイン支援業務に従事。2017年に株式会社Tsunagu.AI 設立、代表取締役CEOに就任。20年変わらない属人的な制作フローをAI/機械学習の技術で解決すべく、Webエンジニア向けローコードサービス『FRONT-END.AI』をリリース。


Tsunagu.AI創業までのストーリー

ーー今日はエンジニアをはじめとした新たなメンバーに向けて、Tsunagu.AIの過去から未来までじっくり話を聞かせてください。

よろしくお願いします。私自身は大学生のアルバイトの頃からWeb業界にいまして、長い業界歴すべてが今につながっています。
改めて話そうとするとどこから話したらいいか迷ってしまいますね。

ーーでは、Tsunagu.AIの掲げる「テックの現場を単純労働から解放する」というミッションがどうやって生まれたか、からお願いできますか。

はい、これは新卒で入社した会社で新規事業担当として携わった「リスティング広告自動最適化入札ツール」事業が原体験になっています。

「リスティング広告」は検索エンジンで入力したキーワードに連動して、企業のWebサイトを表示させる仕組みで、今では大部分が自動化されています。でも、当時は出稿に関わる大部分の作業を人力でしなくてはならなかったんです。だから、広告担当者は成果を出すために必死で遅くまで会社に残っていました。

そこで開発されたこのツールは「最適化」という数学の領域を活用して、一番申し込みや資料請求・クリック数が取れる入札パターンを過去データから割り出すことを可能にして状況を一変させました。

ーー最適化ツールのおかげで、担当者の方が早く帰れるようになったんですね。

それも早く帰れるようになっただけじゃなく、頭を使うレポーティング作業にも時間を使えるようにもなったんです。私はこの経験に「ああ、データで人の働き方って変えられるんだな」と、心を揺さぶられました。

ーーまさに「単純労働からの解放」そのものですね。でも、Tsunagu.AIはWeb広告ではなくWebサイト開発現場に向けたサービスを開発しています。なぜこちらの領域に移ったのですか?

実際、私はその事業に強い先見性も感じていて、愛着もありました。しかし、残念ながら事業が売却されてしまったんです。事業を買い取ったり、売却先に転籍したりしてでも事業に関わり続けたいとも思うべきでしたが、当時の私は決断ができませんでした。

結果、その事業は「アドテク」の領域として時代の波を掴み、大きな成長を遂げます。私の胸には大きな後悔が残りました。この経験から「時間がかかっても諦めずに続けること」「時代の波を掴むこと」の大事さを学んだ私は、次に同じような可能性を感じられる事業に出会ったときには、迷わずに起業しようと決意したんです。

ーーそれでWeb開発現場向けのサービスを?

最終的にはそうなりました。でも、この頃はまだそんな考えはなく。「次の波となる技術に出会った時のためにもっとモノ作りのことを知ろう」と、短期間ですがエンジニアとして開発現場にも入っていくことにしました。

ーーでは、次のターニングポイントはいつやってきたんですか?

2015年です。それが『深層学習(ディープラーニング)』でした。

東京大学大学院の松尾豊教授の公演で、この話を伺った私は「これは私たちの働き方に必ずパラダイムシフトを起こす」と確信して起業を決意します。

ーーですが、機械学習を活用したサービス開発には専門的な知識が必要ですよね。

はい、ですから「まずAIのことをもっと学ぶ時間を確保できる場所を探さないと」と、週3で働くことを認めてもらえる環境を探しました。この頃に声をかけてくださったのが株式会社グッドパッチです。

グッドパッチはプロダクトにおいて、UIデザインを最重要なものとする最先端のスタートアップ企業でした。これは大学で学んだ私の古い「経営マネジメント観」を大きくアップデートさせる経験になりました。

ーーなるほど、株式会社グッドパッチでUIデザイン・スタートアップの経営マネジメントを学びつつ、残りの時間でディープラーニングについて学んだのですね。

そうですね。いくつかの事業アイディアが出てきた中で、当社を2017年4月にたちあげました。そして、2017年5月の末に観た論文に衝撃を受けました。それがデンマークのトニー・ベルトラメリ氏の論文『Pix2code:Generating Code from a Graphical User Interface Screenshot』です。ここに書かれていたのがjpegカンプをディープラーニングのモデルに読み込ませると自動でHTMLコードを出力させることのできる技術でした。

ーーその論文に出会ったとき、森さんはどう感じましたか?

衝撃を受けましたね。私はキャリアの中でマークアップ業務に時間を取られてスキルアップに時間を割けない若手Webエンジニア、コーダーの現実を見てきていましたから。

「この技術を元にプロダクトを作れば、HTMLコーディング作業が自動化できる。そうすればJavascriptのフレームワークやサーバーサイドの言語など、興味ある高度な技術にチャレンジする時間がとれる。エンジニア自身が『エンジニアとしての幸せ』を追求できる世の中をつくることができるかもしれない」

そう考えたらいてもたってもいられず、翌々日には論文を書いたベルトラメリ氏に「一緒に事業をやらないか」とメールをしていました。

ーーそれで、ベルトラメリ氏の返答は?

「日本はもうちょっと後でね」と、つれない反応でした。でも、私は「次の波が来れば起業する」と決めていましたから、独自に仲間を集めて事業を立ち上げることにしました。



Webエンジニアが『FRONT-END.AI』で向き合う自分ゴトの課題

ーー『FRONT-END.AI』が解決しようとしているWebエンジニアの直面する課題についてくわしく教えてください。

現在Webサイトは急速に進化し、アニメーションなどの動きを用いたりブラウザの表示速度に対応したり、といった後工程の比重が増していっています。
それにも関わらず、HTMLやCSSといった土台のマークアップコーディングが全く減らないというのが問題なんです。

ーーなぜマークアップコーディングの業務量を減らすことができないのでしょうか。

もちろん、今までもテンプレートやデザインシステムを作ることで作成プロセスを標準化して手間を軽減しようというアプローチはあったんです。
しかし、課題は作った標準化の仕組みを維持することです。特に企業のプロモーションに使われるようなサイトは、同じようなデザインにはそうそうなりません。標準化しにくい領域だったのです。

ーーたしかに、企業のWebサイトは年々デザイン性が増し、多様なデザインになっていっていますね。

これまではそうしたオリジナルデザインに対応できるようなツールがなかったんです。
もちろん、個別性の高いデザインをWebサイト上で表現することがWebエンジニアの役目です。しかし、基礎的なマークアップコーディングを各サイトで一つずつ行わざるを得ないと、全体の業務量は増えるばかりです。

ーーWebデザインがよりクリエイティブなものになっているということは、Webデザイナーの仕事もまた高度化していっているのでしょうか?

おっしゃるとおりです。
しかも、デバイス毎に最適化されたクリエイティブなWebデザインが求められますから、デザイナーも学ぶ領域が増えました。その結果進んだのがデザイナーとWebエンジニア・コーダーの分業化です。

以前はWebデザイナーといえば担当することも多かったコーディング作業はエンジニアが担当し、「デザイナーから受け取ったデザインカンプをエンジニアが読み解きマークアップコーディングを行う」というアナログ作業が発生することになりました。

ーー担う後工程が増えていることを考えると、エンジニアの負担は大きいですね。

デザイナーも求められるものが増えているわけですから、デザイナーが悪いわけではないんです。
ただ、このWebエンジニア・コーダーが担うアナログ作業の存在が、若手エンジニア達が遅くまで似たような単純作業を繰り返し、クリエイティブなコーディングに対応するスキルアップの時間を捻出できない事態を招いていると、私たちは考えました。

ーーそのアナログ作業を自動化して負担を減らそうというのが『FRONT-END.AI』というプロダクトだということですか?

そうです。
デザイナーとエンジニアの間にある「デザインを理解してマークアップコーディングを行う」という部分を『デザインを理解するAI』で自動化する。それにより、エンジニアを単純作業から解放し、創意工夫を活かすエンジニアリングに集中できるようにしようとしています。

私たちは十数個の「デザインを理解するAI」を自社で開発し、それらを複数組み合わせることで高精度のデザイン認識を実現しました。

FRONT-END.AIの画面イメージ


ーー開発チームが特に大切にしているのはどんな点ですか?

現場のエンジニアにとって最も使いやすい形にすることです。
私達が将来「完全な自動化」を目指していくにせよ、必ず移行期間があります。その間、ローコードのサービスとしてWebエンジニアの負担を大幅に軽減するにはどうしたらいいか。それをエンジニアのワークフローから徹底的に洗い出して検討しました。

コードの書き方にはエンジニアの個性がありますから、無理に自動化部分を増やそうとするとかえって修正に手間がかかり、エンジニアのストレスになってしまいます。それで現在の「余白のある形でコードを出力し、自分のコードとして快適に仕上げられるUI」に至りました。

ーーこのあたりはエンジニアの方々がエンジニア向けサービスを作っているだけに、ユーザーのニーズがよくわかるという部分があるのでしょうか。

それは間違いないですね。Webエンジニアの課題や未来を「自分ゴト」として捉えているからこそ、UIの使いやすさに対して妥協なく作り込めるのだと思います。



エンジニア自身がつくるWebエンジニアリングの未来

ーー『FRONT-END.AI』は2025年までにフロントエンド開発の完全自動化を目指しているということですが、これが意味するのは「Webエンジニアが不要になる」ということではないのですか?

Web業界についての課題意識は全員共通。役職や立場に捉われず意見交換します

そうではありません。
私たちが目指しているのは、Webエンジニアが『FRONT-END.AI』というツールを使うことで、今よりもずっと短期間で優れたWebサイトやWebアプリケーションを開発できる未来にしていこうということなんです。

単純作業をAIに任せることで、エンジニアは自分自身がスキルを磨いていく自己研鑽の時間を作れるようになります。そこでどんな部分を伸ばしていくのか。エンジニアとしてどのような創意を発揮するのか。どんな幸せを求めるのか。
エンジニア自身が今よりもっと追求できるようになっていくはずです。

ーーまさにミッションの"AIで、ヒトの創意に火をつける"ということなんですね。その未来をつくるために参加するエンジニアに持っていて欲しいマインドはありますか?

私は自分の経験から「時代を変える側に立つ」という意志が重要だと強く思っています。

世界の誰かがWebサイト開発やWebエンジニアの仕事を変えていくのを待つのではなく、業界の課題を知る自分達自身の手で「こうなったらいいんじゃないか」を実現させていく。それが大切なことだと思っています。

画像認識技術が進化したということは、”機械が眼をもった”ことだと考えています。4年の研究を経て、Webエンジニアの働き方や仕事が大きく変わる土台はそろいました。私は時代を自分たちが変えていくという気概をもったメンバーと力を合わせ、エンジニアのより良い未来をつくっていきたいです。



Web開発業界を自分達の手で変える経験を

ーー最後に、これから新たにTsunagu.AIのメンバーになるかもしれない方々へ向けてメッセージをお願いします。

同じ未来を見て世界をリードするプロダクトをつくるTsunagu.AIメンバー

私たちTsunagu.AIが取り組む「デザインを理解するAI」の実用化はまさに時代の最先端であり、それをWeb開発に活用している例は世界でも稀です。
日本発のスタートアップとして、世界のマークアップコーディングの自動化をリードする位置に私たちはいます。

とはいえ、Tsunagu.AIはまだまだ創業期。
これから更にAIのモデルを増やし、CSSの自動化やAdobeXDだけでなく、その他デザインツールとの連携など開発を進めていきます。世界のWebエンジニア業界の未来を自分達の手で切り拓く経験は、あなたに大きな成長をもたらす一生の経験となるはずです。ぜひ私たちと一緒に時代を変えていきましょう。

単純作業の自動化が好きな方、AIを使ったプロダクトへの知的好奇心がある方、自分を成長させたい方、まずは気軽にご連絡ください。カジュアル面談でお話できるのを楽しみにしています。

インタビュアー・執筆:北原 泰幸

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