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ゼネコンにはゼネコンなりの改善がある

ゼネコンの現場にトヨタのかんばん方式を採用できるかと言えばできません。

もちろん作っているモノが違うということもありますが、一番の違いは作っている場所の違いです。

建設業っぽい言い方をすれば、トヨタの工場は「本設」、ゼネコンの現場は「仮設」ということになります。

ゼネコンが他の業界と決定的に違うこと|つなぐ|note

上の記事でも書きましたが、ゼネコンの現場は工事が終われば移転する、あくまで仮の生産拠点でしかありません。

ただ移転するだけであれば、次の現場にノウハウや暗黙知をそのまま持っていくことも可能です。

例えばサーカスは移転しながらショーを行いますが、開催するたびにショーの完成度は上がっていきます。

それはサーカスは移転してもテントの大きさも、メンバーも、ショーのプログラムも同じだからです。

回数を重ねるごとにメンバー間の連携も強まり、個々のプログラムの完成度は高まっていくでしょう。

しかしゼネコンの現場は移転すると、現場の大きさも違えば、一緒に働くメンバーや協力会社も変わりますし、そもそも造るモノ自体が変わります。

毎回違う条件で一から現場のルールや意思の疎通を図っていかなければいけないので、暗黙知を共有することが難しくなります。

だからと言ってゼネコンの現場の管理レベルが低いということではありません。

そのような条件であるにも関わらず、常に一定の品質を確保できる現場という仕組みを迅速かつ確実に作り上げるノウハウは、他の業界にはないものです。

しかしトヨタのかんばん方式をゼネコンが現場に採用できるかというと無理だと思いますし、あまり意味がないかもしれません。

それは前述したとおり、建設業の現場は仮設であり、造るモノも毎回違い、しかも現場の状況は日々変わっていくからです。

トヨタの工場なら、次の日に行ったら自分の生産ラインが1階から2階に変わっていたということはないでしょう。

しかしゼネコンの現場は日々状況が変わり、昨日まで1階までしかなかった建物が2階、3階と上がっていき、それに合わせて施工管理の方法も変わっていきます。

ここが建設業の難しいところであり、一般的な企業のノウハウをそのまま取り入れることができない理由でもあります。

造船業も建設業と近い部分がありますが、造船業の場合は少なくとも固定されたドックがあるので、生産拠点が移動するようなことはありません。

そう考えるとやはり建設業はかなり特殊な業界だと言わざる得ないと思います。

ゼネコン勤務時代に有名な経営コンサルティング会社と仕事をさせていただきましたが、このゼネコン特有の感覚はなかなか理解していただけないと感じました。

ゼネコンにはゼネコンなりの強みと弱みがあり、それをちゃんと理解しないまま世の中で流行っている一般論的な改善策を取り入れてもあまりうまく行かない原因は、こういったことも一因だと考えています。

このnoteではこれからのゼネコンのあるべき姿について考えていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。



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