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小さな頃の思い出と、それだけじゃなくて

暑いなーと思う日に、フッと思い浮かべるものって何ですか?
例えば子供の頃、ヤンチャだった小学生の頃、部活ばっかりしていた中学生の頃…

汗をかきながら食べたスイカやそうめん、お祭りのかき氷。屋台で買った焼きそば。
家族みんなで公民館から毎年見ていたしょぼめの花火。朝から夜まで遊んだ遊園地。
人によって思い出すものは全然違って、それがその人だけの思い出というものなんでしょうね。

私には、夏になると小中学生の頃よく見ていた、ある一場面が思い出の1ページです。
そしてその思い出は去年再び新しい形で更新されて、その後永遠に見ることが出来ない1ページとなって深く刻まれています。

私のおばあちゃんは実家のすぐ近くに住んでいて、料理がとても好きな人で、私の学生時代には給食センターのおばちゃんとして働いていました。
遊びに行くとたまに、給食で出るメニューが食卓に並ぶことがあって感動したり、手作りの色々をよく食べさせてくれました。
学校帰りにおばあちゃんちに寄ると、夏は決まって手作りのシソジュースを出してくれました。
家族はみんなあまり好きではなかったので、飲むのは私とおばあちゃんの2人だけ。私が美味しい美味しいってたくさん飲むのが嬉しかったみたいで、いつも、毎年、シソジュースを作ってくれました。
あの透き通ったキレイな赤紫の色。氷たっぷりで、飲むとカランという音。すごく冷たくて、すぐに汗をかくコップの表面。
鮮明に思い出せるほど、とっても大好きな空間でした。

去年、道の駅の野菜コーナーでシソの葉が売っているのを見かけました。
ふと、おばあちゃんに電話して、シソジュースの作り方ってすぐ分かる?と聞いてみると、電話越しであーだよこーだよと教えてくれたんですが…「あ、じゃあ今度そっちに帰る時にシソの葉買って帰るから、教えてください!」と。

膝を痛めていて、背中が曲がってきて、歩いたり動いたりするのがしんどかったのでいつも台所のイスに座って、おじいちゃんがごはんを作る時にアドバイスしていたおばあちゃん。
シソの葉を買って行くと、まずは葉っぱを茎から取ってね、、と、ひとつひとつ手順を教えてもらいながら、おじいちゃんにも一緒に手伝ってもらいながら、無事に鍋いっぱい作ることが出来ました。
作ったことがある人なら知っているかと思いますが、初めはくすんだ紫色が、後半にクエン酸を入れると一気に鮮やかな赤紫になるんです。
その瞬間おじいちゃんとめちゃくちゃ感動したなー。
おばあちゃんに試飲してもらったら、ちょっと砂糖入れすぎたね、と笑ってました。でもいつも飲んでいたあのシソジュースをおばあちゃんとおじいちゃんと一緒に作れたのがすごく嬉しくて。夏の新たな思い出の1ページとなりました。
作ったあと、おばあちゃんが「もう作ることないから、クエン酸持って帰っていいよ」って言ったんです。でも「また来年もここで一緒に作るから置いとくよ」とそのまま置いて帰ったんです。

おばあちゃんとのお別れが来たのは、その夏の終わりのことでした。
たしかに自分で出来ることがどんどん出来なくなってきたり、痛いところが多くて辛そうではあったんですけど。寝たきりとか、喋れないとか、そういうのもなくすごく突然で、誰もが心の準備もないまま。その直前まで誰も予想していない形で、さよならもなく、あっという間に虹の橋を渡ってしまいました。
いまだに居ないのが嘘みたいに思えるくらい…

去年懐かしの味を偶然思い出して、教えてもらえたこと。一緒に作れたこと。
物事は色んな巡り合わせだと思いますが、ひとつひとつ大事にしていきたいなと本当に感じました。
今年も作ろうと、去年使ったクエン酸をもらってきました。出来たらおばあちゃんに持っていってあげよう。


長文にお付き合いいただきありがとうございました。

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