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ロゴデザインをミニトライアルで--iPadと美術の授業--

 さて、デザインといえば実は世の中デジタル化されて久しいのです。

 シンボルマーク、ロゴデザイン。私が大学生の頃(約25年くらいまででしょうか)その頃からちゃんとすでに制作方法はデジタル化されてました。当時は家庭で持てるPCのメモリが低すぎて、印刷に耐えられるような画素数で手持ちのiMac、Adobeイラストレーターでどうこうできるってことはほぼ無理でした。だって、大学のデザインの授業ではミリペン、高校の授業では烏口でしたから、、、、、デジタル技術は急激な進化を遂げたものの、義務教育でデジタルデザイン作業できるようになるまでには20年軽くかかったんですね。こう考えると美術におけるこの時間は日本の経済と教育の責任のような気にもなります。

 というわけでiPadに全員が触れるようになったんであればiPadでロゴやシンボルマークを作る授業が普通にすればいいんですが、美術の授業では意外とまだ未開。

3つのトライアル


 そこで、ロゴデザインをしてみよう授業をデジタルでやってみる授業を作りました。

 iPadと無料アプリで実践しています。Adobe製品でやってません。
 対象は中学一年生くらいまでの小さなデザイントライアルです。小学生でもできますので、タブレットの扱いに慣れることと「デザイン」という世界に触れる導入とお考えください。私はそう設定していますが、デザインの最初の部分はちゃんと押さえられるようにしようと下記の展開にしました。


1、線種


 線にいろいろな種類があることを先に学びましょう。ロゴタイプにはいろいろな線があることを先に話します。

 以前noteにも線のいろいろプリントをあげてあるのでよろしければお使いくださいませ。軽くアナログで実践すると話が早くなりますので私は先にアナログで線を引く作業を試します。

 このターンではこのほかにもリアルで毛筆を使ったり、逆にTayasui Sketchesの線種を試したりというアレンジもできます。
 この鉛筆線種トライは大抵デッサンやクロッキーの前に話しておくのですが、これまで線の種類の説明をしてこなかった場合はデザインの前に入れると線種の幅が増えると思います。たくさんの線種を選んで使えるというのは表現力を増やしてくれるので、そうですね、、、、どんな表現欲求、要求にも答えられる状態になると思います。

 いくつか有名な作家の線を紹介するのもいいと思います。が、小さなトライアルが膨らみすぎちゃいますので、今回はこの辺で。

2、ロゴ観察・ストック


 実際の生活の中でたくさんロゴにも種類があること発見し、情報をストックします。(ロゴとシンボルマークが一体化している場合もありますからそこは融通きかせましょうw)

 実際の生活から発見してくれると嬉しいですね。登下校中に見るお店のロゴ、自分の家族の務める会社のロゴ、校章のカラー、ロゴ。もちろん、safariで検索するのもアリ。その場合はスクリーンショットでストックすることもできます。その際は気になるロゴを集めるためのフォルダを作って入れておくようにしたりします。(私はフォルダに情報をストックする授業は別に行なっていますので、それもまた別の機会に少し書きます)

 ここで、少し線種とともに色と形、雰囲気なども出てきますが、教師が言及するのは「文字の線」くらいにしておくと気が楽だと思います。全部同時にできるといいですけどね、そして結果的に出てくるものは全部一緒になってるんですけどね、、、、、敢えて情報は少なめにしておくとパニックを抑えられますし、生徒たちも自主的に気づけた方が楽しいと思うので、こちらは言及しないけれど、気付きは受け入れます。ここいらって難しいけど、ここいらこそ楽しいと自分は思ってます。

3,制作


 自分の名前(名字でも名前でも可。表記も平仮名漢字英語なんでも可)をロゴデザインし会社(ブランド)をつくります。
 何を売るのか。どんな雰囲気なのか考えながら作ります。何を売るのか、ターゲットはどんな客層なのか、これすごく大事!そしてわくわくする!

Tayasui Sketchesは水彩もいいぞ


 制作にはTayasui Sketchesを使いました。
 Tayasui Sketchesではペンの種類がいくつか選べるので、線種と入り抜きを意識することができると思います。
 課金しないとレイヤーを増やすことができないので、線種を気にして描く、というところまでの制作になります。
 ここから先の制作はもう少し込み入ったことのできるアプリで制作したいですね、、、、Adobe製品は専用の用語も出てくるので、中学2年くらいからかなと考えています。中1でレイヤーが無いと作業しにくい!好みの線を作りたい!と気づくと思いますので、そうしたら次のステージに行けると考えています。

デザインの良し悪しは別として左側にこんな感じにツールが出ますよと


トライアルの導入方法

 これら3つの実践は、各々十分程度でできますので、隙間時間で扱うことができます。
 私は、じっくり工芸をしている間に、5~10分トライアルで線種の実践、ロゴストック作業、ロゴ作り、、、、を毎回少しずつ取り入れます。制作に入り込むまでの導入として、課題が違いすぎるかなと思っていましたが、その心配はいりませんでした。むしろ、集中して自分の仕事を取捨選択できるようになった気がします。

 じっくり作業をするというのはすごく大事で、「何もしていいない時に物事は熟成してく」的な話を大学生の頃よくきいたものです。何時間もかけて作り上げた作品はやはり密度が違いますし。ただでさえ少なくなってしまった美術の時間を多いに制作に当てたいのは山々なのですが、教師の思いとはうらはらに生徒たちが作業に飽きたり、悩んだり、手が止まってしまってぷらぷら立ち歩いておしゃべりをしてしまうという実態に頭を悩ませないでしょうか?
 油絵具が乾く間、道具を片付けている間、たくさんの間が美術の時間として私たちを形作るのですが、飽きからくる怠惰な時間とそれと見極めが難しい時間でもあるのです、、、、、

 そこで、短時間トライアルを少しづつ入れてみたら、彼らは「自分のやるべき仕事」を把握すると同時に自分自身で時間に融通をつけて作業を進める自由が生まれたように思うのです。
 今はこれをする時間。わかっているけれど、悩む、手が進まないというシーンは私たちだってあります。制作ならなおのこと。

自分の時間をつくる道具

 「導入」は、必ず課題への入り口でなければいけないというある種呪縛のようなものが私にはありました。指導要領でそう扱ってきたので、、、、しかし、この小さなトライアルは、年間を通して走らせている大きな課題の一つでもあります。大課題と、単元ごとの課題とが同時に走ってるんですね。
 
 また、現在のように発達段階が細かく把握され、且つ個人指導をすることが当たり前になっている教育現場で、一斉授業の限界にも同時にぶつかってきた気がします。現在小学校では「自分たちの目標をはっきり持って。ふりかえり」と徹底されてはいますが、実際の作業は一斉に行われ、課題を把握できているのかその効果はもっと引き出せそうな気がしていました。
 
 ご紹介したトライアルは一度実践すれば生徒は活用できるようになりますから、美術室の中で資料を探したり制作をしたりレポートを書いたりと、自分のするべきことを自分で決めて自分でこなしてゆくことができるようになるでしょう、、、、美術の時間をもっと自由にそして自主的な制作ができる時間を増やしてくれるのではないかと思うのです。

 自分の目標を自分の方法で選んで乗り越えていける居心地の良い美術の時間にしたいなぁ。


 good-byハウツー授業。

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