乳がん治療 2-告知の夜 沈下橋を思い出す (過去ログ)
◾️はじまり
ある時、右の腋から2cm位下がった所に
グリグリがあるのに気付く。
ネットで調べるが、ガンという単語は
ヒットしなかった。
何? 脂肪の塊? それにしては硬いナと
感じながら日が過ぎた。
意を決し、検診を2年サボったクリニックの
触診と超音波検査で、
ほぼ間違いなく乳がんで
このグリグリはリンパへの転移だろうと
告げられる。
紹介された近隣の検査専門機関から持ち帰った
MRIデータが、午後の日差しが斜めに入る
クリニックの診察室のモニターに映し出されると
歪な形の何かが見えた。
・・・どちら様でしょう?
医師は一呼吸置き、こちらにくるりと椅子を向け
やはりリンパ節転移のある乳がんで
ステージは2~3だろう、と軽々言って退けた。
そして
検査、2年空きましたからね、とつけ加えた。
ハイ自業自得デス、と小さな胸に大きな風穴が
空いた私からそんな言葉を聞きたかった?
訳じゃ無いだろうけど、知りたいのは過去じゃない。
その場で、治療を始めるG病院への紹介状を貰い
2組の友人夫婦を引き合わせる約束の地へ向かう。
夕暮れのそのタワーの眼下に、無数の人と
高速を走る車の光の帯が流れていた。
いわば仲人役の私がいないと
このプロジェクトは始まらない・・・
その夜はバルで5人、たくさん食べて飲んで
とにかく笑った。
2組は意気投合、この先私がいなくなっても
大丈夫だと思いながら帰る途中、
何故か四万十川の沈下橋を思い出した。
沈下橋は水が引けば渡れるが
その橋に欄干はない。
自分が沈下橋なら、水中で水が引く事を
いつも願うだろうか?
そもそもただの橋でも、欄干にあたる物が
自分に・・・あるのだろうか?
そんなワインのプールに溺れた思考は捨て、
この夜はぐっすり眠る。
サポートで、同居を始めたカタツムリの飼育ケースを買いたいです。