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世界一おいしいメロンパン

ふぁふはペンギンのぬいぐるみです。なまはげ村のまさる君の家にいます。
ある日、まさる君が学校へいったあと、さみしくなったふぁふは一人でお出かけしました。

家の近くの海にきました。浜辺には、小さな貝殻とつるつるの石が、たくさん落ちています。ふぁふのはじめて見るものばかりです。ふぁふはうれしくなって、貝殻をひろいます。よく見ると、小さなカニがいました。さわろうとすると、カニはあっという間に逃げてしまいました。

波うちぎわを見ると、緑色のビンがころがっています。波がくるたびにビンはコロコロコロコロころがります。近づいてよく見ると、ビンのなかには何か入っていました。
ふぁふは小さなお手手でいろいろ工夫して、やっとビンを開けました。中にあったのは手紙です。手紙にはこう書いてありました。


これをよんでくれた人へ
会いにきてください
メロンパンが大すきです
          きりたんぽ村  ぴよ

「ぴよちゃんってどんな子ふぁふ。会ってみたいふぁふ。メロンパンが好きふぁふか。おいしいメロンパンを食べてもらいたいふぁふ」
ふぁふは大事に手紙をもって、家にかえりました。ふぁふはぶたさんの貯金箱をあけてお金を机に並べました。お金を数えておさいふに入れると、スーパーなまはげに行きます。ホットケーキミックスと玉子とお砂糖と油を買いました。ふぁふはからくさの風呂敷に買ったものを入れて、背中にしょいました。

海ぞいにのびる白い道を、てくてくてくてくと歩きます。初めてあるく道です。小さいふぁふのとなりを車が走っていきます。びゅんびゅん走る車に追いこされながら、ふぁふはてくてくてくてく歩き続けます。

なまはげ村の村ざかいにきました。お地蔵さんが立っています。ふぁふは一人でこんな遠くまで来たことが、なんだか怖くなりました。まさる君の家はもう見えません。
「帰ろうかなふぁふ。ぼく一人で行けるふぁふ?」
ふぁふがあたりを見回します。岬の白黒しましまの灯台が見えました。
「きりたんぽ村はあの岬のちかくふぁふ。あの灯台、しんぱしーを感じるふぁふ。よし、灯台まで行ってみるふぁふ」

ふぁふは勇気をだして歩きつづけます。てくてくてくてく、てくてくてくてく。
岬にたどりつくと強い海風がふいています。すぐ近くでみる灯台はとても大きくて、カッコイイとふぁふは思いました。目の前の岩に波があたって、しぶきが飛んできます。気持ちのいい風がふぁふの毛をなでます。ふぁふは海にむかって、大きく深呼吸しました。白いかもめが楽しそうに鳴いていました。

ふぁふは石に座ってきゅうけいしました。たくさん歩いたので足がジンジンしています。ずいぶん遠くまできちゃったと、また心細くなりました。
ふぁふは大事に持っているお手紙を読みかえします。

これをよんでくれた人へ
会いにきてください
メロンパンが大すきです
          きりたんぽ村  ぴよ


「ぼくはぴよちゃんに、おいしいメロンパンをあげたいふぁふ。ぴよちゃん、よろこんでくれるかなふぁふ」
ふぁふは立ち上がりました。きりたんぽ村まではもう少しです。

お日さまがひくくなったころ、ふぁふはきりたんぽ村につきました。道ばたにきれいなお花が咲いていました。ふぁふはそっと、お花を一輪つみました。どうやってぴよちゃんを探そうかと考えながら村の中に入ります。
道であったおばさんが、ぴよちゃんの家を教えてくれました。

ふぁふはドキドキしながら、お家の前に立っています。なんて言おうか、と考えて、もじもししています。やっと勇気をだしてドアをノックしようとしたその時、ドアが開きました。

びっくりした顔で立っているのは、黄色いひよこのぬいぐるみの女の子でした。お目目がまんまるです。

ふぁふはなんと言ったらいいか分からなくて、手紙とお花を女の子にさし出します。女の子はそれをみて、ぱっとひまわりのような笑顔になりました。

「あなたが拾ってくれたぴよ?」
「うん。ぼく、ふぁふ。なまはげ村から来たふぁふ」
「そんなに遠くから、すごいぴよ! わたし、ぴよ」
「はじめまして、ぴよちゃんふぁふ。ぴよちゃんがメロンパンが好きだって書いてあったから、おいしいメロンパンを食べてもらおうと思ってきたふぁふ」
「おいしいメロンパンぴよ! ありがとうぴよ!!。かわいいお花もうれしいぴよ」

ふぁふは風呂敷包みを背中からおろしました。
「これからぼくがつくるふぁふ。キッチンを貸してくれるふぁふ?」
ふぁふはキッチンに入ると、ホットケーキミックスに玉子と油をまぜて、
もみはじめました。もみもみもみもみもみもみ‥‥  もみもみもみもみ‥‥

しばらくするとキッチンからいい香りがしてきます。ぴよちゃんのお腹がグーとなりました。
やがてふぁふが焼きたてのメロンパンを持ってきました。ふぁふは得意げのような自信のないような、ちょっぴりむずかしい顔をしています。

「ぴよちゃん、食べてみてふぁふ。どうぞふぁふ」
「いだだきまーすぴよ。あーん」
ぴよちゃんは大きなお口でメロンパンをほおばります。
「おいしーーいーーーーぴよーーー。すごくおいしいぴよ!!」
ふぁふがほっとした顔になりました。
「よかったふぁふ。おいしくなれと祈りながらパンをこねたふぁふ。それにパンは焼きたてが一番おいしいふぁふ」

ぴよちゃんの家族もきて、みんなでメロンパンを食べます。みんな、「おいしい、おいしい」と言いながら食べて、にこにこ顔です。
「そういえば、ふぁふの家族がしんぱいしてるんじゃない?」
ぴよのお姉ちゃんのちろちゃんが言います。
ふぁふはまさる君を思い出して、きゅうにお家に帰りたくなりました。
「そうふぁふ。何もいわないできちゃったふぁふ」、ふぁふが少ししょんぼりして言いました。

「じゃあ、私が自転車でふぁふの家まで送るよ」
ちろちゃんが言います。
「でもふぁふ、とおいふぁふ」帰りのことを考えていなかったふぁふが、あわてて答えました。
「大丈夫、自転車ならすぐだから。ぴよちゃんと一緒におくるよ」

こうしてふぁふとぴよちゃんは、なかよく自転車の前かごに入ります。ちろちゃんはペダルをぐんぐんごきます。ぐんぐんぐんぐん、ぐんぐんぐんぐん。
光る灯台があっという間にみえなくなりました。くらい海のむこうに、なまはげ村のあかりが見えてきます。

村さかいをこえると、ふぁふは自分をよぶ声が聞こえたような気がしました。
「ーーーふーー」
「ふあーーーーーー」
声はだんだん近くなります。
「ふぁふーーーーーー!!!」
まさる君のこえです。ふぁふは自転車のかごからとびおりて、声のする方へ走ります。ちいさいあんよで一生懸命走っていると、急にまわりが明るくなりました。まさる君のもっている懐中電灯のひかりです。
「ふぁふ!!!!」
ふぁふはまさる君にぎゅっと抱きしめられます。
「どこ行ってたんだよ、心配するだろ!」
まさる君がなみだ声でふぁふをしかります。
うしろから走ってきたちろちゃんが、おどろいて言いました。
「まさる君!」
「ちろちゃん!?」
まさる君とちろちゃんは同じ塾にかよっていたのです。まさるくんはあわてて、服のそでで目をゴシゴシしました
ちろちゃんが、ぴよちゃんを抱きかかえながら、今日のことをはなします。
「これ、ふぁふがつくってくれたメロンパン。ふぁふのお家の人のぶんよ。すごくおいしいよ」
ちろちゃんがまさるくんに紙袋をわたします。まさる君はぶっきらぼうに「ありがとう」と受け取ります。

「今度はぴよが、あそびに行っていいぴよ?」
ぴよちゃんがキラキラしたまあるいお目目で、たずねます。
ふぁふがまさる君を見ると、まさる君はちいさくうなずきました。
「きてふぁふ。またおいしいメロンパンやくふぁふ」
「ぴよちゃんと二人でおじゃまするね」
うれしそうにちろちゃんが言ったとき、まさる君の顔が赤くなりました。
でも暗かったのでだれも気が付きませんでした。

ふぁふはまさるくんにだっこされて、お家にかえりました。とちゅうでまさる君が「ありがとう、ふぁふ」と小さな声でいいました。でも、ふぁふはくたびれて寝てしまっていたので、きこえませんでした。

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モデルはこの子達です





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