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選挙の「開票」はこうやっています ─見ることができます─

大きな選挙があると、時々ちらりとテレビに映し出される開票風景。体育館の中の大きなテーブルを何人もで取り囲んで、投票用紙を仕分けしているあの作業。具体的に何をしているかご存じですか。
〇〇市元職員だった私が、一例を挙げて開票作業を解説します。

投票箱はハイヤーで


20時まで(一部例外あり)の投票時間が終わると投票箱は施錠したままハイヤーに乗せられて、開票場に運ばれます(南京鍵が投票開始時からかかっています)。ハイヤーに同乗する職員以外は自力での移動なので、人間より待遇がいいです(投票から開票まで続けて従事する職員が多いのです)。
開票会場に設置されたいくつもの大きなテーブル群に、作業班ごとに投票箱が置かれていきます。なかなか壮観です。
〇〇市ではすべての投票箱が揃うまで、開票は始めません。職員は20時半に集合しているので、しばし待機します。

離島がある自治体では、投票箱は船や自衛隊のヘリ等で運ばれます。

いよいよ開票開始!

投票箱と鍵の確認

開票管理者と開票立会人が、投票箱の乗っているすべてのテーブルを回り、投票箱に南京錠がかかっているか確認します。南京錠をあける鍵は封がしてある封筒に入って、投票箱のそばに置いてあります。

開票開始宣言

選挙管理者が開票の開始を宣言します。これを合図に鍵の入っている封筒を破り鍵を出し、投票箱の二つの南京錠を開けます。投票箱を縦に開いて投票用紙をかき出します。南京錠と鍵と封筒は速やかに回収されます。

混ぜて混ぜて、開いて開いて


投票の秘密を守るために、複数選挙区の投票箱から出された票を混ぜます。投票時には二つ折りにされることの多い投票用紙ですが、折っても開く特殊な用紙を使用していますので、投票箱から出された時点でほぼ開いています。たまにガッチリ折ったままの用紙があります(どれだけきつく折ったのでしょうか)。
まず用紙を手当たり次第に集め、表裏上下を揃えて3センチ程度の束にして輪ゴムで束ね、イチゴパックにいれます。束になった票は随時イチゴパックごとに回収され、読み取り機にかけていきます。

候補者、政党ごとに仕分け

票の仕分けは手作業の自治体と、読み取り機を使う自治体の二種類にわかれます。
〇〇市では読み取り機を使いました。読み取り機が票を候補者ごと政党ごとに分けてくれるので、手作業に比べかなりの時間短縮になります。
読み取り機が動き出すと、パラパラパラという音が場内に響きます。この音がここちよくて、眠気をさそいます。

3回点検


読み取り機が仕訳けた票の束の内容を、人間が手作業で確認します。この時に疑問票を取り出します。

※疑問票とは、候補者(政党)名以外が書いてある票、白紙票、候補者(政党)名が不完全な票をいいます。

人による確認は2回、人を変えて行います。1度目にAさんが確認した票の束は、2回目はBさんが点検します。
人と機械で3回は確認します。

内容確認の終わった票の束は計数機にかけ、数を確認します。この確認は計数機を用いて3回行います。

疑問票審査

候補者名が不完全などの疑問票を、有効かどうか審査します。専門知識が必要なので、選挙管理委員会の職員や選挙管理委員会OB職員が担当します。
仮に候補者に田中Cさんと田中Dさんがいたときに、「田中」とだけ書かれた票があったときは、CさんDさんにそれぞれ0.5票ずつ投票されたとみなします(按分あんぶんといいます)。

途中経過をアナウンス


開票の途中経過はあらかじめ決められた時間に場内にアナウンスされ、ホームページでも公開されます。

開票は見られます

開票作業は公開されていて、見ることができます。公開するのは、公職選挙法第69条「選挙人は、その開票所につき、開票の参観を求めることができる」と定められているからです。
開票会場に体育館を使用している自治体が多いです。注目の選挙ではかなりの数の参観人がいます。一般の参観者の他に、マスコミの腕章をつけた人もいます。大きな選挙になるとテレビカメラも入ります。注目される選挙では、オペラグラスで職員の手元を見ながら開かれている票の候補者名をリアルタイムで読む上げる人もいたりします。多分テレビの速報番組のスタッフと思われます。


翌朝開票の選挙もあります

選挙費用を誰が出すかは、選挙ごとに異なります。国政選挙なら国、都道府県の選挙なら各都道府県、市区町村長および市区町村議会議員の選挙はそれぞれの市区町村が出します。
開票時間は既定の勤務時間外なので、職員に手当が必要です。この人件費を節約するために自分のところの選挙の開票は、翌朝行う自治体もあります。例えば、衆議院議員選挙は当日の20時半から開票を開始、市長選挙は翌朝7時半から開票します。すると一人当たりの人件費はざっくりと(あくまで仮定)
即日開票=休日夜間の時間外務手当 @1,300×?(終わるまで)
翌日会場=平日1時間分の時間外手当@1,000×1(8時半からは勤務時間)

投票に行こう

選挙の舞台裏を少しわかっていただけたでしょうか。
選挙は民主主義のはじめの一歩です。
あなたに与えられた大切な権利です。必ず投票に行きましょう!

コラム

20時半集合の開票作業。家を出る20時には当確が出て、結果が分かっていることが多いです。これ知ってしまうと一気にやる気をなくすのです。何のための開票作業かと… とは言え、いざ開票所に着けば独特の緊張感。自ずと集中してました。

自治体は数か月前から選挙準備を行っています。間違いなく、漏れがないように細心の注意を払っています。一所懸命準備した選挙の投票率が低いと、悲しくなります。
皆さん、大切な権利を行使しましょう





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