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人を信じられる風景を残したい

あなたは会ったことの無い人を信じられるだろうか。道ですれ違った人を信じられるだろうか。

どこの誰とも、どんな人とも分からない人を信じる ─ それが無人販売所である。
無人販売所とは農家の敷地の一角に、無人で、値段の札とともに野菜などが並べられている、あのお店のことである。店員さんはもちろんいない。客は買った物の料金を料金箱に入れて買い物をする。
赤の他人を信じられるからこそ、成り立つ商売の形である。

私は無人販売所が好きでよく利用する。新鮮な野菜が安いのだ。大きな葉っぱ付きの大根なんてスーパーではお目にかかれない。売っている野菜は朝採りたてで、どれもつやつやしてみな美味しい。そして手作り感満載の売り場が、またいい。手作りの陳列棚。手書きの料金札。直接会わなくても、経営している農家さんのぬくもりが感じられる。どこか懐かしい空間なのだ。

しかし、私は無人販売所を見ると、盗まれないのだろうかと心配になってしまう。私は盗難を恐れて、コンビニの傘立てに傘を入れないほどの、人間不審者である。そんな私から見ると無人販売所はあまりにも無防備に映る。でも、無人販売所が続いているところを見ると、世の中捨てたものではないらしい。ちゃんと料金を支払う人がたくさんいるのだろう。

赤の他人の善意を信じることによって成り立っている、無人販売所。無人販売所がある地域は、善意の人が多く住んでいる地域なのだ。いい所だと胸を張って自慢できる場所なのだ。無人販売所は人々の善意の象徴なのだ。
だから私は、盗難などの悪意が増えて、無人販売所が無くならないことを心から望んでいる。
人を信じることの象徴の無人販売所。嫌な事件が多く世知辛い昨今だが、末永く続いていって欲しいと願っている。

お読みくださりありがとうございます。これからも私独自の言葉を紡いでいきますので、見守ってくださると嬉しいです。 サポートでいただいたお金で花を買って、心の栄養補給をします。