見出し画像

自己肯定感を編む 

50歳過ぎにして編み物を始めたら、自己肯定感が生まれた。

思春期に「女の子らしさ」に反発していた私は、編み物をしたことがない。10代の私の家庭は荒れていて、早くから精神的自立を迫られた。だから羨ましさ余って「可愛らしい、守ってもらえる女の子」像に拒否反応があった。なのでおしゃれとか、手芸とか、いわゆる女の子ぽいことは避けて生きていた。

それなのに50歳を過ぎて、夫に手編みのニット帽をプレゼントすることになってしまった。
何故こうなったかと言うと、うちは夫婦して名探偵コナンの赤井さんのファン。赤井さんがかぶっているようなシンプルな黒のニット帽が欲しい、と夫が言い出すのは当然の流れであった。編んでみようかな、とうっかり口にした手前、チャレンジすることになった。
結果としてこのチャレンジは、私に自己肯定感をプレゼントしてくれた。

まったくの初心者だから何も知らない私は、まずネットで情報収集をした。
・耳かきのようなかぎ針を使った編み方
・2本の棒を使う棒針編み
2種類の編み方があるという。簡単そうなかぎ針編みにすることにし、とりあえず初心者用の本とかぎ針と毛糸を買った。この時点で小一万円の出費。ニット帽なんて百均で売ってるのに…、というのはおいといて。

いっつも夫の世話になっているから、私ができることはやってあげたい。
やってあげたいけど・・・できる・・・・のか? ・・・・届いた毛糸を触りながら不安はつのる。

いきなりうまく編めるはずがないので、練習を兼ねてまず自分用の帽子を編むことにした。つまり私はニット帽を二つ編むことになる。冬の間に編めるだろうか。一抹の不安が吹き抜ける。
まずは、糸の持ち方から。まさにゼロからのスタート。針の動かし方から、いきなりつまずいた。本ではよく分らない。そこで、動画を探した。動画は分かりやすい。無料でアップしてくださっている皆さんに心から感謝した。紙の本は辞書的に使うのが良いみたい。

まず、いろはの「い」のくさり編み。お、できた。なんだこの感覚は!、うれしいぞー!! できることが増えるのは、こんなにうれしいことだったんだ。

ほくほくと機嫌よく編み進めていく。自分の手の中で「物」ができていく。今、私の心に、ほんわりとひろがりつつあるこの気持ち。これが自己肯定感というやつか?、これが自己肯定感というやつだったのか。
長年求め続けていた自己肯定感、天啓のようにいきなり実感した。
・私が何かできる。
・成果が見て触って確認できる。
・できたことが自信につながる。



パソコンや万年筆で文章を書くのとは違う、達成感がある。「データ」ではなくて「物」だからだろうか?
たとえ編んではほどくを何回繰り返しても、ほぼ編みあがっていた編地の幅が不ぞろいなことに気づき全部糸にもどしても、肩が凝って目が疲れても、編むのは楽しい。

単に毛糸を編んでいるのではなく、自己肯定感も編んでいる。手仕事にはこんなに素敵な世界が隠れていたとは。夫のためにニット帽を編み始めたのだが、自分がうれしくて楽しいから編むようになった。

私の集中力では長時間編めないので、隙間時間にマメに編んでいる。慣れてくると無心になれる。これも頭の快感(ただし編み間違える)。
旅行先にも持参して、夜は編みのんびりを編んだ。

こうして長方形の布が2枚編みあがった。最後の難関は長方形の短辺同士をのつなぐこと。その後に円柱の一方を絞ることである。
おそるおそる縫い進める。お、意外と何とかなった。では絞りはと、簡単おもしろい!
最後の工程は少々あっけなく、こうして私の編み物初作品のニット帽2枚が完成した!!!

当初の完成目標はクリスマスだったが、なんと結婚記念日に間に合った。素晴らしいスピードである(当社比)

新しいことができるようになると、それは自己肯定感に直結する。
新しいことができるというのは、なんてワクワクするんだろう。
自分の手が何かを作り出すという経験で、自信が持てるようになる。
編み物を始めてよかった。今年のクリスマスはサンタさんから、思いがけない素敵なプレゼントをもらった。


お読みくださりありがとうございます。これからも私独自の言葉を紡いでいきますので、見守ってくださると嬉しいです。 サポートでいただいたお金で花を買って、心の栄養補給をします。