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誕生日のお祝いより嬉しいことと親子の誕生日が一日違いの理由

vol.8【ワタシノ子育てノセカイ

6月22日は次男の誕生日だった。産んでから10年が経ったらしい。来年こそ一緒にお祝いできたらいいな。ちなみに前日の21日は私の誕生日。次男と私の誕生日は一日違いなんだ。

ところで私にはふたりの息子がいる。親権は1年半ほど前に父親に裁判所で譲った。つまり私は母親だが親権はない。ついでに5年以上、息子たちは母親と自由に会えていない。21日直近では長男とは約1ヶ月、次男とは2週間くらいかな?音信不通になっている。

ついでに2022年6月21日、20日だっけ?法務省から法制審議会へこんな提示が。「離婚した父母双方を親権者にできる『共同親権』の導入案を」。5年前からだいぶ変わったな。

世界は謎だらけ。

さて私の誕生日の21日。2022年も静やかに夜が過ぎゆくかと思われた午後7時過ぎ、スマホが鳴る。

「お母ちゃん!誕生日やから電話したで!おめでとう!」

次男からのビデオ通話だった。胸が詰まって泣きそうになる。「お祝い」にじゃない。いやうれしいけど。次男の通話までの過程を私は想像したんだ。

現在までの5年間、次男には私とコンタクトをとる手段がない。スマホ?家の固定電話?自転車?いやいや。詳細は省く。

次男が私に連絡するには作戦がいるようで、実行には時期の見計らいが大切らしい。

見計らう時期とは何かしら特別な日

次男がのちの24日の密会で教えてくれる。

「誕生日やったらいけそうやん?」

実際「いけた」から彼の狙いは的中している。たかが誕生日されど誕生日。私たち親子にとっての誕生日は、親子が現実でつながり続けるための貴重な日でもあるみたいだ。

次男が21日に連絡をくれたとき、次男は長男が留守だと教えてくれる。私は次男が私とビデオ通話した旨を、長男へ伝えるように受け応えた。

さて。ビデオ通話ではいつも時間の8割を、次男は通話アプリの着せ替え機能の操作に費やし、私とあれやこれやと遊ぶ。いつもがどんな頻度かはさておき、次男は要件を伝えたらじきに満足する。

今回の要件は『母に「おめでとう」を伝える』のようだ。

ところで次男は概ね言いたいことを先に伝える。結論を先に言おうとするので、頭の中に解があるとサクサク口にする。解がないとめっちゃ考えてなんしか解を出す。だから考えてもわからなければ「わからへん」が解になる。

単細胞の私にとってはわかりやすくて助かる。

次男とのさっぱりした時間はあっという間に過ぎた。

一時間後、またスマホが鳴る。長男からだ。

どうやら次男の伝言が長男を動かしたもよう。応答するやいなや長男は話しだした。ほどなくして私は「進撃の巨人」を知っているか質問される。長男はHuluのアニメでハマったらしい。物語の概要を私が尋ねると、怒涛の如くお喋りが始まる。20分以上が経つ。

長男は私が説明を求めるとき、割とコンパクトにまとめてくれる。しかし今回はなかなの長編である。よっぽど丁寧に話たいのかなと想像していると、話し終わった長男が最後にポツリ。

「75話分の要約な!おもろそうやろ?」

1話は約25分らしい。おおよそ30時間分の物語をまとめてくれたようだ。満足したらしい長男は通話を終えようとする。とはいえこのまま通話を終えると長男は後悔する。そこで私は最後に尋ねた。

「今日はなんで電話してきてくれたん?」

長男が固まった。

「あっ!お母ちゃん誕生日おめでとう!そうそう!誕生日の電話やで、コレ。」

ふたりで大爆笑する。

30分近く長男の声が流れて表情を見つめられる時間は幸せ過ぎた。もちろん次男との時間もしかりだし、すべての時間をつむぎだしてくれた次男の行動には感謝しかない。

次男は誕生日への執着が強く、物心つきはじめたころからの口癖が3つある。

ジロウの誕生日の前は誰の誕生日でしょうか?
お母ちゃんの誕生日の次は誰の誕生日でしょうか?
ジロウとお母ちゃんの誕生日は一日違いやねんで!

思いつくたびに誰かれかまわずに口にしていた。その物心がつきはじめた時期、次男と私は一緒に暮らせなくなる。そこから6年後の2022年の誕生日に私はふと思った。

私は我が子とどんなときも繋がりが途絶えないように、一日違いの誕生日で次男を産んだんかもしれへんな。

次男の誕生日への執着も一緒に意味にした。

私は記念日に疎く誕生日すら忘れてしまう。だけどこの5年間、誕生日がすこぶる記念日だ。

2022年誕生日、進撃の巨人が記憶に仲間入り。

壁に覆われた世界で人の心は豊かになりますか?


▼長男氏熱弁の塀に囲まれた世界のお話

▼塀の外「共同親権制度」の世界へ

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