見出し画像

なくなったデジカメ

去年は、6月に父を連れて旅行にでかけた。そうか、あの“事件”から、もう1年もたつのか。


「お父さん、写真現像してくるからデジカメちょうだい」
父のデジカメが、見当たらない。

先日出かけた時の画像がそのままになっているので、写真にして、データを削除しようと思ったのだが見つからない。一昨日の父の日記に、写真を現像しなければと思っていると記されていたから、その時にはあったのだろう。


明後日から一緒に旅行に行くと、その場で父に話す。あまり早くに話しても忘れてしまうし、かえって混乱を招くだけだからだ。

父は、いつもあるはずの場所を探し始めた。その後、引出し、戸棚、離れにある父の作業部屋と、あちこち探すもどこにもない。現像しようと持ち歩き、どこかに置き忘れてきてしまったのだろうか。

旅行に行くのに、カメラがない。焦りだした父が混乱し始め、先日のデイサービスに忘れてきたと言い出した。絶対に持っていっていないと確信しつつも、念のため電話をかけて聞いてみたが、やはりない。


「そのうち出てくるよ、ひとまず新しいものを買えばいいよ」
と、声をかけたが、頭を抱えて溜息をつき、何度も何度も闇雲に引き出しを探し続ける。


おかしい。

普段の父の行動から考えると、恐らく家のどこかにあるはずだ。本当になくしてしまったのだろうか。だとすると、また少し、父の認知症が進行したのだろう。その日とうとう、デジカメはみつからなかった。


翌朝になって、ふと、以前弟が私に言った一言を思い出した。そしてその後すぐ、デジカメはみつかった。毎日毎日、写真にしようとカメラを持ち歩きながら、バタバタとした日々を過ごし続けた、私の鞄の中から!


「父ちゃんより、姉ちゃんの方がボケてる!!」


今回もまた、同じことを弟に言われるのだろう。
ふぅ・・・。


サポートしていただいたお金は、認知症の父との暮らしを楽しみながら、執筆活動を続けていくのに使わせていただきます。