2024年度(令和6年度) 大阪大学基礎工学部情報科学科 編入体験記(数学9割)
1. はじめに
このページをご覧いただきありがとうございます。品川シーサイド(@shina_sea3)と申します。
この度、大阪大学 基礎工学部情報科学科数理科学コースの編入学試験に合格することができましたので、今後阪大を受験される後輩のみなさんの参考になればと思い、編入体験記を書かせていただきました。
電通大や農工大の体験記も鋭意製作中ですので、よろしければそちらもご覧ください。
また編入試験対策のオンライン家庭教師もやっておりますので、興味があればX(旧Twitter)までご連絡ください。
2.スペック
私の基本的な情報は以下の通りです。
出身校: 東京都立産業技術高等専門学校
受験校:
・東京大学 工学部 計数工学科/システム創生学科 (不合格)
・大阪大学 基礎工学部 情報科学科 (合格)
・大阪大学 工学部 電子情報工学科 (未受験)
・電気通信大学 情報理工学域 Ⅰ類 (合格)
・東京農工大学 工学部 知能情報システム工学科 (合格)
TOEIC:885点(4年生の8月)
順位:9位(3年生), 4位(4年生)
勉強期間: 3年生の秋ごろ~
私の出身校は高専の中ではレベルが低く、高校受験のときにはあまり勉強していませんでした。また毎年の進学実績もあまりよくありません
そのため受験勉強は早めにやろうと3年生の秋から始めました。
3.高専での勉強
3年生9月~10月
中学の同級生がみんな受験の話題で持ち切りだったので、高専に入る前から大学編入を決めていた私もそろそろ勉強に着手しなければと思うようになりました。
しかし自分は自発的に勉強するという習慣が全くなかったので、机に向かって勉強する気が全く起きませんでした笑
なのでとりあえずは情報を集めようと思い、大学のことや編入試験について1か月以上かけてリサーチしました。この時期は勉強自体は全くしていませんでしたが、下調べをしっかりと行ったおかげで後々の受験校の最終決定がスムーズにいったので、自分的には価値があった期間だったと思います。
そして志望校はとりあえず筑波大と電通大に決定し、重い腰を上げてようやく勉強を開始しました。
3年生11月~2月
とりあえず最初はまず数学とTOEICから始めようと思い、「編入数学徹底研究」と「銀のフレーズ」を買いました。
今まで本格的な勉強をしたことがなく、高専の定期テストもほとんど一夜漬けでしたので長期間勉強するという習慣を身につけることが一番大変でした。特に銀フレは一か月以上かけてやっと一周しました。単語帳は最初の一周が一番しんどいので、めげそうになっても気合で頑張りましょう。
12月ごろになると銀フレの単語もぼちぼち覚えてきたので「文法特急」を買ってやってみましたが、この本は既に大学受験で高校文法を完璧にしてきた人向けでしたので、高専でなんとなく英語の授業を受けていただけの私には難しすぎました。
なのでまずは「世界一わかりやすいTOEICテストの英文法」で基本的な英文法を習いました。
高専生は大学受験を経験していないので高校までの英語がきちんとできていないことが多いのため、ネットで調べて出てくる有名なTOEICの参考書を適当にやってしまうと失敗してしまう可能性が高いです。
3年生春休み
銀フレ、英文法、文法特急を終わらせた後、「でる1000」でPart5,6の演習を積みました。その後、でる1000が終わった3月ごろに学校でTOEIC IPテストがあり、こちらのテストで645点を取ることができました。リスニングとPart7対策は特に何もしていないのに600点越えを記録できたのでビックリしました。
また物理に手を出そうと思い、とりあえず高校物理の参考書で有名な「物理のエッセンス 力学・波動」を買って一周しました。しかしこの本は物理が全くの初心者に一から教えてくれるという本ではなく、私には合っていなかったため失敗しました。
私の高専での物理の授業は酷かったので、物理の基礎が出来ていない私には早すぎました。高専生にとって、物理は英語に比べて基礎が出来てる人と出来てない人が分かれると思うので参考書選びが難しいです。
4年生4月~7月
この辺から段々勉強習慣が身に付いてきて、ようやく受験生らしく毎日長時間机に向かって勉強が続けられるようになってきました。またこの辺りから第一志望を東大にして、その過程で電通大レベルは確実にクリアするという作戦でいくことにしました。
私が気になっている大学では英語の筆記試験を実施するところも多かったため、TOEICは早く終わらせて長文読解や英作文にも手を出す必要がありました。なのでTOEICは夏休みまでに800点を取って終わりにしたかったので、この時期はTOEICを中心に勉強していました。具体的にやった参考書は単語帳「金のフレーズ」「金のセンテンス」、リスニング対策「世界一わかりやすい TOEICテストの授業(Part 1‐4 リスニング)」、Part7対策「精選模試 リーディング3」です。またこれでTOEICの全セクションを対策できたので模試として「公式問題集8」、「公式問題集7」あたりをやっていました。今は公式問題集9が出ているので、最新のものから順番にやっていきましょう。
物理は「考える力学」というヨビノリたくみさんがおすすめしていた大学物理の教科書をじっくり読んでいました。
数学は徹底研究のベクトル空間までと確率のセクションが終わっていました。また東大では徹底研究での確率の内容では不十分なので「細野真宏の確率が本当によくわかる本」という本をやりました。
4年生夏休み
8月下旬のTOEIC 公開テストに申し込んだので、それまでは模試「公式問題集8」、「公式問題集7」、「精選模試 総合」、「究極の模試600問+」をずっと解いていました。スコア結果は885点で計画通りにTOEICを終わらせることができました。
TOEICが終わったので英語は入試に向けて単語帳「DUO 3.0」、構文解釈「基礎英文解釈の技術100」をやり始めました。私にはあまりDUOの形式がはまらなく、後に単語帳は「鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁」に変えました。また基礎英文解釈が終わった後、長文読解「関正生の英語長文ポラリス(1 標準レベル)」を解き始めました。
物理は考える力学が読み終わったので問題集「演習 力学」をはじめました。この本は解説や問題設定が適当だったり、やる必要がない問題があったりと使いこなすのが難しい本でした。力学の問題集は「弱点克服 大学生の初等力学」の方がいいと思います。
数学は徹底研究がラプラス変換・フーリエ変換以外は一通り終わったので電通大の過去問を15年分ほど解いてみました。徹底研究だけでも割とすらすら解けたので自信になりました。東大に向けてもう少し難易度が高い「数学/徹底演習(第3版)」と「編入数学過去問特訓」の中から東大に出るセクション(微分方程式, 確率, 複素, 行列)だけを解き進めました。
4年生10月~12月
この時期は文化祭があり、私は文化祭実行委員会の上の方のポストについていたので勉強時間を確保するのが大変でした...
英語はポラリス1が終わったので続編の「関正生の英語長文ポラリス(2 応用レベル)」をやりました。その後「ポレポレ英文読解プロセス50」をやりました。ポレポレは難しい問題はかなり難しかったですが、著者の方がYoutubeで解説してくれていたので助かりました。
物理は演習力学を進めつつ、「マセマ 電磁気学キャンパス・ゼミ」を読んだ後、「電磁気学演習」を並行して進めていました。
数学は参考書系と電通大の過去問は一通り解いたので、少しずつ東大の過去問を解き進めていました。この時点では分からない問題も多く、東大に受かった先輩もいないので解答もなかったので大変でしたが、高専の数学の恩師が一緒に解いてくださって助かりました。
4年生冬休み
英語は「関正生の英語長文ポラリス(3 発展レベル)」をやった後、「日経サイエンスで鍛える科学英語 SDGs編 」という本を読みました。これはScoientific Americanというアメリカの科学雑誌の本文とその日本語訳が書いてある本です。編入試験は科学系のトピックが出題されることが多いので、よい長文読解の練習になりました。
物理は演習力学と電磁気演習が終わったので「マセマ 演習 熱力学キャンパス・ゼミ」をやりました。これにて物理の参考書も全て終わったので、その後は電通大の過去問を解き始めました。電通大の過去問はこの時点でほとんどの問題が解けていました。
数学は引き続き東大の過去問を解いていました。
4年生1月~2月
この辺りから本格的に志望校を決め始めました。東大と電通大は最初の頃から受けることを決めていましたが、併願校をどうするか悩みました。まず東大と電通大ではレベルにかなり開きがあるため、この2つの間ぐらいの難易度の大学をいくつか受けようと考えました。色々考えた結果、阪大の基礎工学部と工学部を受けることにしました。また抑えの大学が電通大だけでは不安だったので、農工大も受けることにしました。
英語は東大の激ムズ和文英訳や他の大学の英作文に向けて「ハイパートレーニング和文英訳編」、「ドラゴン・イングリッシュ基本英文100」をやりました。
物理は電通大の過去問を15年分ほど解き終わり、阪大基礎工を解き始めました。3年に一度ぐらい分からない問題がありましたが、基本的にはスラスラ解けていました。
数学は東大の過去問を15年分ほど解き終わり、物理同様に阪大基礎工を解き始めました。数学は分からない問題も多く、正答率は6割程度だったと思います。
4年生春休み
受験前最後の長期休みということで一番力を入れて勉強しました。家ではたまにだらけてしまうことがあったため、春休み中は近くの自習室を借り、そこに通って勉強していました。
英語は参考書が一通り終わったので東大の過去問を解きました。読解はある程度太刀打ちできたのですが、和文英訳や英作文がまずいことがわかったので、オンラインの英作文添削サービスを利用し始めました。英作文系は誰かにフィードバックをもらうのがいいと思います。
物理は阪大基礎工の過去問を15年分ほど解き終わったので東大の過去問を解き始めました。東大の物理は阪大基礎工とは比べ物にならないほど難しく、半分解けるかどうかといった感じでした。
数学は阪大基礎工の過去問を15年分ほど解き終わったので東大の過去問の解き直しをしていました。
4年生4月〜6月(受験直前期)
この時期あたりに今までのストレスのせいか睡眠障害になってしまい、体調をかなり崩してしまいました。幸い、すぐに病院に通ったおかげで比較的素早く体調が良くなりました。ただこの一件から直前期は詰め込むことはせず、体調を整えることを最優先にしていました。
勉強に関しては英語、物理、数学共に今まで解いた過去問(東大、阪大基礎工、電通大)の解き直しをしていました。また併願校の阪大工と農工大の過去問(物理、数学)を5年分ほど解きました。
専攻科と農工大で出題される専門科目については今まで全く勉強して来なかったため、「論理回路入門(第4版)」という論理回路の教科書を読みました。
3.試験当日
テスト前日(前乗り)
学校が終わって家に帰ってから新幹線で大阪に向かいました。
このとき大事な実験レポートを今日中に出さなければいけなかったので、新幹線内の2時間半で急いで書き上げました笑
ほんとはゆっくりしたかったのですが留年したら元も子もなかったので…
ホテルは江坂駅のアパホテルに泊まりました。1人で泊まることがほぼ初めてだったのでちょっとワクワクしました笑
阪大までは御堂筋線で千里中央→モノレールで柴原阪大前で行きました。
テスト1日目
朝テスト1時間前ぐらいに阪大につきました。阪大の豊中キャンパスは結構広いので予め基礎工の建物の位置を確認しておくといいと思います。
試験はB300 Skyというめっちゃでかい講義室みたいなところで受けました。
1日目は筆記試験で数学, 物理, 専門の3つです(来年から数理も専門がなくなるみたいですね)。
数学:
例年通り、1.解析 2.行列 3.確率の問題セットでした。
解析は積分を含む形で関数f(x)が与えられており、その関数の最大値や諸々の性質を導くという問題でした。あまり見たことがなく、やや難しいような気がしましたが一応全て解けました。
行列は3次正方行列Aのn乗やexp(A)などの基本的で簡単な問題でした。こちらも全て解けました。
確率は赤と白のボールが入った箱A, Bがあり、諸々の操作をしたときの確率を求めるという問題で、こちらも基本的には簡単でした。ただ一番最後の小問がある操作をしてこの箱がA, Bどちらであるか見分けられる確率を求めなさいという少し凝った問題でした。
総評として今年も数学は簡単だっと思います。阪大基礎工の数学はここ10年間でずっと易化しており、今年も例に漏れずといった感じでした。
また後述しますが2日目の面接の中で教授陣に「数学は確率の最後以外はほぼ全てあっている」というコメントをいただきました。阪大基礎工は点数を開示してもらえないのですが、おそらく数学は9割以上取れていたのではないでしょうか。
また数学と専門は後述の2日目の面接に備えて、問題を覚えているうちにノートに書き留めました。
物理:
力学, 電磁気, 熱力学から数理は2つ選んで解くため、力学と熱力学を解きました。
力学は詳しくは忘れてしまったのですが、円柱などの様々な形の剛体の運動やエネルギー保存に関する問題だったと思います。そこまで難しかったわけではないですが、解けなかった問題も少しあり、体感7割ぐらいだったと思います。
熱力学は有名なサイクルの熱効率などを求める問題でした。計算量がすごい多く、少し苦戦しました。これもおそらく7割ぐらい。
専門:
微分方程式とフーリエ級数が合わさった問題か確率と複素が合わさった問題のどちらかを選択します。私は確率と複素の方を解きました。
基本的にはよくある留数定理を使う問題でした。ただ途中で係数をミスってしまい、答えが若干合わなくなってしまいました。低めに見積もって8割ぐらいでしょうか。
筆記試験の総評としては各教科でそれぞれ少しづつミスをしてしまいましたが、概ね実力が出せきれたと思います。これで落ちたら今年は相当レベルが高かったんだなと思えるぐらいの手応えでした。
しかし筆記試験が終わっても安心はできません。数理はこの1日目の数学と専門の解き直しが口頭試問にあたるという記事があったので、ホテルに帰ったらまずそれらの解き直しから行いました。
4.おわりに
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