no.3 検察官を目指しているが故に起きた事情聴取での悲劇

被疑者が逮捕されてからは、
検察での事情聴取が始まった。
1日4時間くらいの事情聴取が、5回。

「なんでもっと強く抵抗しなかったんですか。」
「なんで逃げなかったんですか。」


分かってる。
仮にも検察官を目指してるんだから、
「反抗を抑圧する程度の暴行脅迫」が要件になることも分かってる。
私のために、私の味方でいるために、
検事さんはそう聞いてくれてるんだって分かってる。
それでも苦しくて。


「じゃあ、もっと強く抵抗して、逃げれないかもしれないけど逃げようとしていたら、私の身体にはもっと沢山傷がついていたかもしれない。もっともっと、苦しい思いをしていればよかったのかな。もっともっと、身体にたくさん傷がついていたら、私が抵抗した証拠になったのかな。」
そんな言葉がこぼれてしまった。
半分泣いて、半分笑いながら。


検事さんは、泣いてくれた。
「違うの。あなたは何も悪くないの。
でも、あなたを守るためにはどうしても聞かなきゃいけない、必要なことなの。」

検事さんの涙を見るのは、苦しかった。
法律の冷たさと、検事さんの温かさの違いを感じてしまったから。


もっと辛い思いをしないと法律は私を救ってくれないんだ。こんなに苦しい思いをしてるのに、法律は私の味方をしてくれない。大好きな法律が私の壁となっている現実に、心底絶望した。
被疑者を起訴するにはどんな要件が必要でこの事件では何が論点になるのか、検察官を目指しているが故にそれが分かってしまう苦しさがあった。


性犯罪の厳罰化に反対する人は、この現実を本当に理解しているのだろうか。私たちの気持ちを分かっているのだろうか。と思ってしまう。
反抗を抑圧する程度の暴行脅迫や有形力の行使がなくても、心に深い傷を負う人がいる。同意のない性交は、相手の心をぼろぼろにする。


電車やバスに乗れない。
周りの人全員が敵に見える。
男の人とすれ違うだけでも悪寒が止まらない。
睡眠薬がないと眠れない。
抗不安薬が手放せない。
あの夜のことを、何度も何度も夢に見る。
過呼吸で倒れて救急搬送された。
駅で動けなくなり、号泣しながら駅員さんに助けを求め警察の人が迎えに来てくれた。
警察本部のカウンセリングを受け、
地域の被害者支援センターへ相談に行き、
心療内科ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。


これほどの苦しさを抱えているのに、
どうして法律は私の味方をしてくれないの。
なんでよ。私がいけないの?



大好きな法律の世界で、
人生で一番の絶望を感じ
20年間で味わったことのない挫折を経験した。

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