あとがき
小説を貪るように読み漁っている
最近の話だ
なかなか難しい人生だった
“独り"を感じることが多かった
出逢った人の運が毎回悪すぎると周りから慰めてもらえることもよくあるけれど
ここまで長く様々な立場やステージで生じるとなるとかなり早い段階で
自分が変で社会や環境の次元ではなく
高いコミュニケーション能力を有する
“ヒト"という動物として
集団の中で生きるには不適合なのだろうと自覚していた
そんな独りの現実から物理的に逃げることはせず
周囲にできるだけ波風を立てない我慢を選ぶ
変な自分にとって概念として逃避できる空間
それが小説の世界だった
もうどれだけ涙を流していないだろうか
もうどれだけ怒りを表していないだろうか
もうどれだけ助けを求め甘えていないだろうか
変な自分が各ステージでのコミュニティに受け入れてどうにか所属の欲求だけでも満たして生きるためには
常に自身の言動と置かれたポジションが乖離しないよう
その違和感から生じるストレスを他者に与えないよう
俯瞰に俯瞰を重ねることが必要だった
その結果理性ばかりが強くなり本能と解離した
感情表現が実に乏しい人間が出来上がってしまった
本を読む時
そんな自分が普段他者に表現できない
悲しみ、怒り、甘え、怠惰、退廃、自傷
その他諸々のどうしようもなさを
追体験し吐き出し共感し救われる
小説の世界ではいつだって私は私らしく
“ヒトらしく"いられた
小説の中で楽しみにしているのが
同業者による巻末の「あとがき考察」である
わずか数ページの中に何冊も書き上げる筆者の重厚な言葉が凝縮され洗練され記されている
1冊で2冊読んだような贅沢な読後感に浸ることができる
この本はテーマが食であることに惹かれて手を取ったが
本編はさることながらあとがきが秀逸で
とてつもなくくらった
以下意訳
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私はたぶん今後も
満ち足りた人を祝福する小説を作らないのだろう
そういう人生を心の底では信じていない
それよりも苦しい時間を耐えていく人の
人生に豊かさを作りたい
その人生にはきっと私の席もあるのだ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人から声がかかる時
誰かが悩み苦しんでいる時
予算をかけたくない時
人員不足の補填
このあたりが多い
楽しいことをする時
自分が注力貢献したことが恩恵を受ける時
悲しいがな声がかかることはほぼなかった
もちろん声をかけてもらえることはとても光栄で嬉しいことだ
しかし
空気のような無害ではあるけれど
決して一緒にいて面白みのある人間ではないんだと
心が折れるような自覚もぜひざるをえない時もあった
でもこのあとがきのもとでは
きっと存在意義の無い人間ではないのだと思える
悲しみと切なさが同居していた私の心の中には
この作者の言葉が鎮座しじっくりと効いてくるような“席"が確実にあった
そしてこの小説を素晴らしく尊いものとして
胸を張って周りに勧めることができる
店頭の目立つところで棚済みされ
メディアにも取り上げられ
多くの人の心の中で救いとなっているのだろう
私には私にしか座れない席がきっとある
それはとても繊細で下手すれば持ち主が自ら傷つけてしまうような脆く危うい処だ
ただ自身を苦しめてきた俯瞰力は
一転して他者を深く思いやり寄り添い
優しく丁寧に添うことを可能にした
産みの苦しみがあるのなら
苦しみから生じる産みもあるのだ
この3年間鋭利な刃物のような言葉を幾度も浴び続けた
でもそれは誰にも言ってはならないもので
我慢してその傷を深く増やしていった
特にこの3ヶ月はいつも漠然と悲しくて
気を抜くと涙が流れてきそうで
食べ物の味もわからなくなっていった
でもどれだけ余裕がない時でも
どれだけ刃物を投げ続ける相手にでも
関わる人全てに
花束のような愛のある言葉と行動を心がけ貫徹した
外では様々な評価が流れるかもしれないけれど
私はそんな自身を
私だけでも誇りに思い認めてあげたい
小説を貪るように読み漁っている
最近の話だ
なかなか難しい人生はこれからも続く
“独り"を感じることも相変わらずあるだろう
でも何も諦めなくて良い
私は小説のように生きよう
苦しい人生を耐えていく人のそばで
私にしか座れないその席で
その人の人生に豊かさを作りたい
今まではらんだ痛み苦しみ悲しみ辛さ
それらを全て受け止めて昇華した
花束のような愛を添えて
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