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ブランコとマーテおばさん

 よく晴れた土曜日の朝は、なんと気持ちが良いのでしょう。マーテおばさんは温かい紅茶を水筒に入れると、お家から出て五回か六回曲がった場所にある公園まで出かけました。
 公園の木の上にはムクドリたちが集まってぴいぴい鳴いています。丁度、今は秋の終わり頃。木の実がたくさんなった枝にムクドリたちは夢中です。
 マーテおばさんは、白黒の猫が横切ったので嬉しくなって目で追いかけていました。だって猫は可愛いのですから。マーテおばさんは猫を撫でたくて屈んでみましたが、もうそこには白黒毛皮の姿はありませんでした。少しがっかりしたマーテおばさんは公園を歩きます。すると、なんと言うことでしょう!ブランコがふたつ、木陰に並んでいるではありませんか!マーテは嬉しくなって急いでブランコに駆け寄ります。マーテおばさんは知っているのです。ブランコに乗れば空に近づけることも、楽しくなることも。
 ブランコの椅子は水色で、上からぶら下がった鎖は銀色でした。マーテおばさんはブランコに座って地面を蹴りました。すると風が全身を包んで景色が上下に揺れ動き、ブランコが上にのぼればのぼるほど空とマーテおばさんは近くなりました。そして今日は雲ひとつない土曜日で、ムクドリたちが鳴いていて、白黒の猫と出会えて。マーテおばさんはとても幸せになりました。だってこんなに素敵なことが三つも並んで、おまけにブランコにも乗れて。こんな嬉しいことってあるのでしょうか。
 マーテおばさんは、ひとしきりブランコをこいで秋の空気を吸い込んだので、そろそろ帰ろうかと思いました。よいしょ、とブランコから立ち上がります。すると、マーテおばさんの大きなお尻がブランコにはまって、とれなくなってしまいました。いくら引っ張ってもブランコは外れません。困ったマーテおばさんのところに、ひとりの小さな男の子がやってきます。男の子は大きな声で、おはようございます!と言うので、おばさんも大きな声でおはよう!と返事をしました。
 
 おばさん、ブランコが外れなくなっちゃったの?
 そうだよ、少し手伝ってくれないかい?
 いいよ、僕にまかせて!
 
 男の子はそう言うとおばさんの後ろ側に周りブランコの板を一生懸命引っ張りました。よいしょ、よいしょ、と男の子が後ろに向かって力を込めます。マーテおばさんは前に向かってぐいぐいと進みます。
 すると、お尻はすぽん!とブランコから外れました。
 
 わあ!
 わあ!
 
 マーテおばさんも男の子も驚いて目を丸くします。
 
 良かったね!おばさん!
 ありがとう坊や。お礼にこの飴をあげるよ。
 え!?いいの!?ありがとう!
 
 こうしてマーテおばさんは今日の幸せを男の子に分けました。幸せは独り占めするより分けた方が大きくなるのをおばさんは知っているのです。
 
 じゃあね坊や。私は帰るよ。
 僕はまだ公園で遊んでく!またね!
 ああ、またね!

 こうして、土曜日の朝はゆっくりとお昼に変わり、マーテおばさんの今日の冒険は一度休憩になりました。だって今日のお昼ご飯は、とっておきのかぼちゃのグラタンなのですから。

おしまい

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