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幸せを凝縮した緑の宝石 / 諏訪 櫻さん

想像力の断片
手しごとと想像力のお店TSUMORIは、商品を介して土地の魅力や新しい想像力のきっかけをお客様にお届けしたいと考えています。
この「想像力の断片」マガジンでは、お客様からいただいた声を随時公開していきます。


その「プレミアム」なシャインマスカットが家に届いたのは、10月あたまのことだった。

宅急便のお兄さんからおもみのある箱を受け取り、嬉々としてその箱を自分の部屋にもち込んだ。


私は、TSUMORIの化粧箱が好きだ。
それは漆黒のきりりとした箱で、蓋にはYAMANASHI PRIDEの金いろのロゴが入っているだけのとてもシンプルなもので、品のよい、ひそやかな佇まいをしている。

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その箱をあける瞬間を大事にしたい、とおもいつつ慎重に箱のふたに触れ、そっとひらいた。
そこには袋のあいだから大粒をのぞかせる、みるからに立派なシャインマスカットが2房、つめられていた。

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ちいさく歓声を上げながら、かた手で慎重にもち上げようとし、すこしおどろいた。

なかなか箱から出せない。
みための想像以上に、その果実におもみがあるのだった。
おお、と思いながらも、なんとかもち上げる。
いったんどこかに置こう、とおき場所を探すためにあたりをみ回してしまうほど、ほんとうにずっしりしていた。

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袋のなかからそうっと出すと、粒どうしで互いにおし合うようにして、ぱつぱつに大粒の宝石が詰まった表面が、かおを表した。
…なんて、立派なシャインマスカットなのだろう。

まるで高貴なお姫さまを思わせる佇まいをしている。

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ぱつぱつとはちきれないばかりの粒たち。

早速はり切って写真を撮ると、どの角度からみても本当にうつくしく、魅力的にみえた。

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粒が大きすぎるあまり、房から大きくはみだした粒がもう、なんともおいしそうなのだ。

正直、どこかひと粒つみとっても違和感がなさそうなところはないか、撮影がおわるまでの始終、シャインマスカットの房の表面中を血眼でみつめまわしていたのは、ここだけのはなし。
撮影をしながら、今すぐ食べてしまいたい、という衝動に何度もかられていた。

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ひとつだけ…

いや…だめだめ、がまん。

ほんとうに…もう…


マスカットの粒にちょっかいを出しているような写真を何枚も撮ったが、このときは実際に、食べたくてたべてくて、仕方がなかったのだ。


それでも、口にしていないその時私はまだ、ほんの3割も全然わかっていなかったのだとおもう。
そのマスカットの本当の凄さを。


ああ、もう、だめ…我慢できない…!!
ひとつぶだけ…
ええい!

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ぷちり。

100枚ほど写真を撮って満足してきてからやっと、おいしそうなひと粒をもぎ取り、そっと口にした。

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思わず胸に当てて、ブローチにしたくなるような美しさ。


かじる瞬間に、マスカットの粒は思いがけずパリッと爽快な音をたて、そのことにまず小さくおどろいた次の瞬間、
あたまはまっ白になった。
おもわず、まじまじとそのかじった半分をみつめる。

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ええ…え、これは何?

衝撃だった。


私の知っているシャインマスカットではなかった。


というのも、私はシャインマスカットというくだものをいままで、そのあまみの強さでしか、おいしさを判断する軸を持っていなかった。
いってしまえば正直、シャインマスカットは酸味がなくて単調な味だから、たくさん食べるとすぐにあきてしまう、と思っていた。

でも、だ。


このシャインマスカットはまるで違った。
パリッと皮が音を立ててはじけたその瞬間、シャインマスカットの香りー私が今まで力どれよりもちから強いーがパッと広がった。
口に入れたそれは、果肉がみずみずしく濃厚でそして、ほんとうに、心から透きとおるようにあまい。
それでいてたべあとは口にあまったるさをのこすこともなく、かろやかに喉を通りすぎ、ここちよい香りの余韻だけがのこる。


ーほんとうに、躍動感のあるおいしさだった。
マスカットの華やかな香りもすばらしく、何だか感動的な映画をみたあとのような心地になった。


あらためて大粒のきれいなみどり色のひと粒を摘み取り、じっくり見つめてから、行儀はよくないけれど、すこしかじり、中の半透明にひかる果肉の美しさをたのしんでから、あらためてそれが口の中にある幸せをかみしめる、というのをしばらく無言でくりかえしていく。


そしてその途中、贅沢に、と思いつつその大粒をまるごと口に入れて粒をかむと、思わず恍惚とした。
微塵もぶどうの風味を零すことなく、全てを口の中にとじ込めて楽しめてしまっている、そんな感じがした。

次なる粒に手をのばしながら、これはやばいな、、と小さくつぶやかずにはいられなかった。

そのシャインマスカットは本当においしく、常温でそのおいしさに感動した私は、「きっとおいしいシャインマスカットは、冷やさないで食べる方がおいしいのだろうな」と勝手に納得してしまい、そのままけっこう、半房ほど、食べてしまった。
それ以上においしくなることなんて、想像する余地がなかった。


しかし。

家族にもつぎの日にあげようと、つめたく冷やしたのこりのシャインマスカットを食べてみると、これまた感動的なおいしさだった。


正直、常温とつめたくひやしたマスカット、どちらがおいしいのかというのは比べられないのだ。
どちらにも違うおいしさがある。
つめたいマスカットは、前日に常温のおいしさを知っていてもなお、目をまるくするおいしさだった。
違いは、常温だとマスカットの濃厚なあまさをダイレクトにあじわうことができるし、つめたくすると味がすこしきりりと締まり、さらに澄みきったあまさになる。

そしてうれしいことに、冷やしてもその芳しい香りはかわらず健全だった。

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HPには、このシャインマスカットについて、山梨の農家さんのこだわりがとても詳しく書いてある。

よむと、山梨の農家さんが育てたシャインマスカットの中でも、このプレミアムのものは、大粒かつ糖度はやく十八度以上の最高級のものでしかも、厳選され、それを、収穫の最高のタイミングで届けてもらえるという、本当にぜい沢なシャインマスカットだということがわかった。
でもその説明がなくとも、あきらかにとくべつで、「プレミアム」な味だとわかった。
それはとてもすごいことだとおもう。

ああ、どこでもドアで大切な人たちの元に今すぐ行って、ひとりひとりの口にこのシャインマスカットをひと粒づつ、ほうり込みにいけたらいいのに。

そんなことを思わずにはいられない、とてもすばらしいシャインマスカットだった。


執筆:諏訪 櫻さん Twitter 

東京農業大学国際食農科学科4年
食農教育研究室所属
資格:食育インストラクター3級
石川県金沢出身。野菜と果物をこよなく愛する22歳。
小学生の頃になった拒食症をきっかけに、食と幸せの関係について日々考えるようになる。
大学では、食の生産から販売に至るまで一貫した様々な分野を学ぶ。


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