見出し画像

多様性と視野を広げる重要性について考える

多様性は大切だと色んな所で言われています。
ただ、なぜ多様性が重要なのかをしっかり理解している人は少ないのではないかと『多様性の科学』という本を読んで改めて感じました。

多様性と言うとすぐに「同性愛者を受け入れろ」、「移民、難民も受け入れろ。かわいそうだろ。」というように社会的少数派を守れ的な話に移ってしまいますが、そういったことではなく、多様性の本質を学べる本です。

この本は9.11テロが多様性の欠如から起きてしまったという話から始まります。
多様性の欠如がどういう悪影響をもたらしたかと言うと、一つの事象に対して画一的な視点からしか見ることができずに、本当の問題を見抜けなかったということです。

これは所属しているメンバーの優秀さには関係ありません。
優秀なメンバーを集めても視点が画一的になってしまうと本当に重要視すべきポイントがズレてしまいます。
組織の強さと多様性は対立するものではありません。
社会の課題を解決しようとしたり、企業が競合他社と戦い、市場を見ながら財やサービスを売るとなると様々で複雑な問題に対処する必要があります。
その時にいくら能力があるとは言っても視点が1つだけだとそもそも解決すべき問題がどこにあるのかを見落としてしまうリスクが高いのです。

少し話題を変えて私が同じ時期にaudiobookで聞いていた本に『キリンを作った男』という本があります。

私は学生の頃から酒はあまり飲まず、今もソーバーキュリアスとして生きているのでビールについてはほとんど知識がありません。
そんな私が「ビール」と聞いて真っ先に思いつく商品はアサヒのスーパードライです。
だから、ビール業界のトップはアサヒでキリンは2番手だと思っていました。
自動車業界で言うトヨタと日産のようなイメージです。
この本を聞いてキリンが長らくビール業界の覇権を握っていたことを初めて知りました。

ただ、ビール=スーパードライのイメージは変わっていなかったのでこの本を聞く中で最も記憶に残ったのはスーパードライがリリースされた時のキリン社内のエピソードです。
少しだけネタバレすると、アサヒのスーパードライは従来のビールよりも苦みが少なく、飲みやすいビールだったようです。
味見もしたうえでキリン社内のスーパードライに対する見解は「恐るるに足らず」というものが大半でした。

結果としてスーパードライは大ヒットしたわけですが、キリンがスーパードライの脅威を見誤ったのは、まさに多様性の欠如が原因になります。
スーパードライに対して危機感を持った社員はキリンの中に実は存在しました。
そして、その社員は女性だったのです。
スーパードライは恐るるに足らずと考えた社員は大半が男性社員でした。
どういうことかと言うと、スーパードライは従来のビールよりも飲みやすい味でした。
それはビールを愛飲してきた男目線では物足りないものであったかもしれませんが、これまでビールを飲まなかった女性がスーパードライなら飲めると言ってビールを飲むようになったこと、それに伴いこれまで晩酌は一人で行っていた男性がスーパードライのおかげで夫婦で晩酌の時間を持てるようになったのです。
そしてはスーパードライは女性が飲めるビールだからヤバいと気づいたのがキリンの女性社員だったのです。
もし、当時のキリンが男女半々の組織であればスーパードライは結構ヤバい商品かもしれないということに売れる前から気づけていたかもしれません。(当時の日本企業にそれを求めるのは無理があるかもしれませんが)

この本の中にはキリンの一番搾りや氷結が生まれたエピソード、主人公である前田仁の人事やキリン社内の事などいろいろな話題がありますが、私が特に印象深かったのはスーパードライ誕生の時のキリン社内の視点になります。
今回のテーマは多様性ですが、この本を私以外の人が読んだら、当然スーパードライ以外の部分が最も印象に残る人も出てくると思います。
この視点の違いもまさに多様性なのです。
そのため、一つの本を読んだら自分だけの感想ではなく、他の人と本の感想をシェアすることで他の気づきも得られると実感しました。
実はそういうことがこちらの本の中に書かれています。


多様性というのは言い換えれば視野の広さだと思います。
何か問題を解決しようと思ったら自分と同じような人を用意するのではなく、自分と異なるジャンルの人を人選することが大事です。
また、視点の違い自体がその人の能力だとも考えられます。
先ほどのキリンの話だと女性であるだけである意味気づけたものが男社会だから気づけなかったと言えます。
そういった点で言えば、管理職を男女半々にするというのを目標に掲げる会社をたまに見かけますが、理にかなっているのかもしれません。(その会社が多様性をそこまでしっかり考えて掲げているとは思えませんが・・)

ただ、自分一人でも視野を広げることは可能だと思い、その努力は大切だと感じました。
例えば、落合博満が江夏豊と麻雀を打っていた時のエピソードは有名ですが、待ち牌をコロコロ変える落合に対し、江夏はピッチャーはじっと構えているバッターの方が嫌だという話を聞き、それを野球に応用したという話があります。
これは野球だけをやっていては気づかなかった点でしょう。

視野を広げるというと読書というのが真っ先に思いつきますが、休みの日に遊んだり、普段行かない場所に行くなどでもいつもとは違う視点を持つことを鍛えられると思います。

仕事の場で優秀な人は良く見かけますが、その仕事の分野以外で情報収集ができていなければ、その人の戦略を素直に聞き入れるのはあまり得策でないです。
実際に私の経験で仕事をめちゃくちゃ熱心にやっていた上司がいましたが、その人から出てくる戦略はいつも自分が経験したものだけだったのを思い出しました。
社会人は仕事だけしていてはダメという言葉の意味をようやく理解できたような気がします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?