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パソナ淡路島移転問題 在京メディアの逃れられぬ『地方見下し』の視点

昨今を賑わしている、パソナの淡路島への移転問題。ちょっと思うところがあったので述べればな、と。
 ちなみに僕は大阪在住で、月に最低1度は淡路島に旅行で行く、そこそこな淡路島ユーザーです。
 けれども、パソナ出資の施設にはほとんど行ったことないです。行ったことあるのは、淡路島夢舞台くらいかな。
 理由は簡単で、パソナ自体が好きじゃないからです。小泉政権下において、竹中平蔵とのズブズブの関係が気に食わないわけです。


 以上地方在住者の僕の紹介も終わったので、パソナ淡路島移転問題で、目に付いた記事を3つ紹介できればと思います。

 ①
 ビジネスジャーナル『パソナ、淡路島へ本社移転、裏に補助金等の優遇措置…社内「必要なくなれば、さっさと移転」』
 https://biz-journal.jp/2020/09/post_177841_2.html/amp

 『淡路島は首相官邸が推し進めている地域活性化総合特区指定を受け、現在、『あわじ環境未来島特区』となっています。さまざま補助金や税制などの優遇措置を受けられるというメリットがあるから、このタイミングで移転するというだけのことで、その状況が傾けばさっさと店をたたんで、またどこかに移転するのではないでしょうか』

 淡路島が地域活性化総合特区指定を受けたのは平成23年のことであり、今に始まったことではない。
 淡路夢舞台という、ホテル、植物園及びレストラン等が一体となった複合施設が平成12年に開業の際にパソナは大きく関わっている。パソナと淡路島の関わりの歴史は浅いようで実は深い。また、パソナは淡路島に膨大な資本投下を行っている。ニジゲンノモリ、GRAND CHARIOT 北斗七星135°、HELLO KITTY SMILE、青海波 -SEIKAIHA-、のじまスコーラ等々。
 また、普通の企業がそんな気軽に本社移転を決めない。失敗した時のリスクがでかすぎる。どれだけのコストがかかるのか。
 そんなことを単なる行政の優遇措置だけで選択するわけがない。

 こういう事実は社内では、既知のものであることから、上記のインタビューが本当に社員に行ったものであるか疑問が大きく残る。本当にインタビューしているのならば、この社員は相当に頭が悪い。
 
 パソナの淡路島移転を批判したいのなら、どういった優遇措置が取られて、どれだけの恩恵を受けているのか、とか具体的に示すべきだろう。
 もちろん、そんなことは書けないから謎のインタビューという、空虚で無責任な形式をとっているんだろうけど。パソナが、地方を食い物にする的なストーリーで批判しつつ世論誘導したいんだろうな、と言うのが透けて見える。

 ②
 ABEMA TIMES『1200人の大移動 ネットでは不安の声も「実質的なリストラ?」』
 https://news.livedoor.com/lite/article_detail/18829768/

 ざっくりまとめると、社員にとったら迷惑でしかない、ということです。
 東京に持ち家ある人や子供いる人はどうするの、とか。もし転勤を断った場合、事実上の左遷。最悪の場合、リストラ対象。なんてこともありうるのじゃないか、と。この批判は至極真っ当です。もう少し言い換えれば、会社内でどういう合意形成があったのか、ということだと思います。
 この問題で気になることなんですが…パソナが社員に対して、淡路島移転の具体的な説明をしてるはずなんだけど、そういう内部向けの情報をマスコミが報道してない、ことかなあ。全部、プレス向けの情報じゃん。代表者の暴力的な決断を否定するんだったら、そこの武器を使わないと倒せないよ、と思うわけです。もちろん僕も知りたいしね。

 ちなみにパソナがどういう組織がというと。
勤続年数平均9年とかなってます。かなり若い組織です。リクルートみたいに、長くいる組織ではなくステップアップのための会社なんじゃないかな、と。いわゆる日本的な大企業よりは若い会社だから、社員への量的な弊害はまだ少ないほうかな、と。社員にとっては迷惑な話だけど。


NHK NEWS WEB『パソナ 淡路島に業務一部移転へ』

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20200901/2020009663.html

地元の人の意見。

「パソナグループによる観光施設も増えていて、淡路島じゅうがパソナグループに押されているように感じます。もっと地元の産業を一緒にすくい上げてほしいし、淡路島の人も雇ってもらい、若い人が働ける場を作ってもらいたい」

 これは来るな、というわけじゃなくて。根っこにはきてほしいという感情がある。やり方の問題かな、と。
 パソナが来れば、間違いなく街は発展する。

【以下、私見】

 パソナに対する報道を見て、地方在住と東京在住の人で全く捉え方が違うんじゃないかな、と思います。
 在京のメディアは否定から入ってる、否定する材料をとにかく探して批判している。一方で、それ以外は肯定的。神戸新聞、NHK兵庫なんかは肯定的なわけです。
 東京から離れることにデメリットばかりです。
これほど大掛かりな本社機能移転なんて誰もやったことがないこと。社員の生活。淡路島の敷地の確保。優秀な人材が集まらないんじゃないか、等々淡路島と関係の深いパソナですら、問題がウルトラ山積みなわけです。この山積みの問題を指摘して、非合理だ、と在京メディアは述べているわけです。
 他方で、こういうラディカルなやり方でなければ、地方創生なんかできないわけです。自発的な産業を生み出すのは難しい。観光産業もこれからどうかわからない。ってなるといかに企業を誘致するかってのが大事なんです。
 そのラディカルさを肯定的に語れる東京のメディアはいないわけです。なぜなら地方に住むことは馬鹿げているから、地方に作るべきは、本社機能ではなく、工場以外ありえないから。これは合理的で全くの正論です。この合理的に考えられる正論は、正論であるが、常に地方への見下しが内包されている。
 それゆえ、地方創生に必要なラディカルさを根源的に肯定できない。
 こういったメディアの姿勢を見るたびにメディアなんて所詮東京のもんだなあ、となんとも思えぬ感情を抱くわけです。今回はその最たるもの。

 本気で地方創生を考えるならば、実は、在京メディアの認識の枠組みを変えなければ、ということも今回の報道で浮き彫りになったのかなあ、と思うわけです。ラディカルさを支持できるか否か。でもこのラディカルさは半分以上宗教みたいなもんだから原理的に無理なんですよね。
 あと、今回の構図が面白いです。パソナってのは、マスコミの文脈では新自由主義日本格差社会の元凶みたいな捉えられ方をしてるわけです。そういう人たちが日本の課題である地方創生を本気で取り組もうとしている(本当の意図はどうあれ)。
 パソナは地方創生という、社会問題を解決しようとしてる。他のメディアに蔓延る、無力な学者記者よりも、圧倒的な実行力を伴って行っている。だから、今回は余計にパソナ批判の精度が落ちてると思いますね。大義名分を持ってるのはパソナであり、他の人はただの批判者に過ぎない。

 こうなってくると、安倍政権VS野党の構図がパソナVSマスコミの構図に重なってくるようなそんな風に見えてもきますよね。

 まあ、だいぶ脱線しましたが、今回の件については、パソナに問題あることもそうなんですが、もっと理解しないといけないのは、マスコミのこういう構図が根深くあるということです。これを自覚的になって報道しないと相手は倒せないと思います。そういうことを加味した批判が出てくると良いんだけどなあ。

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