見出し画像

山崎さん宅のプール【掌編】971字

最近暑い日が続きますよね~。こういう日にはプールで思いっきり泳ぎたくなりますね。泳いだ後にキンキンに冷えたビールをくぅーっとやれば暑さも和らぐってもんです。

そうそう、プールで思い出したんですけどね。

仮に、山崎さんとでもしておきましょうか。

この山崎さんね、ご自宅にプールがあるんですよ。羨ましいですよね。

でも、山崎さんの家がある住宅街はどのお宅もプール付きだったらしいですよ。いわゆる高級住宅街ってやつですね。

私がお金持ちで羨ましいですね~と言うと山崎さん、こう言うんです。

「建売住宅だからそうでもないですよ。うちの住宅街は敷地面積がどの家も同じなんです。それはそうと、問題があるんですよ」って。

山崎さんのお宅から二軒右隣のお宅、仮に山本さん宅としておきましょう。

山本さん宅にはその一帯には珍しくプールがなかったらしいんですね。

山本さんが山崎さんにプールが羨ましいと言うもんだから、山崎さん、こう言ったらしいですよ。

「プールなんて夏の数回しか使わないですよ。プールを作るんだったら池でも作った方がよかったです。管理も大変ですから」と。

この山崎さんと山本さんの会話を山本さんの4軒左隣の、仮に山寺さんとでもしておきましょうかね、山寺さんが聞いていたらしいです。

山寺さんはその住宅街イチの大きいプールがあるお宅なんですよ。

そして山寺さんが二人の話に混ざってきたそうです。

「そうですよ。うちなんて無駄に大きいでしょう? 管理が大変で大変で。年中入れる南国だったらまだいいですけど、日本の屋外にプールは合いませんよ。山口さんのお宅のように室内プールだったらよかったんですけど」って。

山口さん宅は山寺さん宅から見て道を挟んで左斜めのお宅です。

山本さんは山口さん宅のプールが室内にあるとは知らなかったそうなんですね。見に行きたいと言うもんだから、三人で山口さん宅に向かったそうなんです。

しかし、あいにく山口さんは留守だったそうです。すると山口さん宅の道を挟んで右斜めにあるお宅の山下さんがやって来て言ったそうです。

「山口さんならシンガポールに旅行中ですよ。ほら、あの有名なプールのあるホテルに泊まるそうですよ」と。

三人は顔を見合わせて笑ったそうです。

そこまで話し終えて、山崎さん言ったんです。

「問題です。私の家と山下さんの家の間には何軒あるでしょうか」って。



答えを出すにはまだ情報は足りないと思います。

爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!