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サルミさん【掌編】(528字)

小学校の頃クラスにサオリさんとナルミさんって女の子がいたんだ。

どっちも可愛い子で俺は両方に恋をしていた。別に二股してたわけじゃない。ただの片思いなんだから別にいいだろ。

ある時、俺は用事があって2人の名を呼ぶ必要があった。

クラスのマドンナ2人の名前を口にする。

小学生男子にとって女子を呼ぶのは緊張するもんだろ。好きな女の子だったらなおさら。

「サオリさん、ナルミさん」って呼ぶべきところを俺は……

「サルミさん」って呼んでしまったんだ。サルミ…サルミ…サルミ…猿ミ!

俺は笑い上戸じょうごだったからね、自分の発言がおかしくって、おかしくって大笑い。

「サルミさん」発言と笑いこける俺の様子でクラスも大爆笑。サオリさんとナルミさんには後で叱られたけど、それがきっかけで仲良くなった。

20年も前のいい思い出だ。「なぁ、サルミ」

そうするとサルミはキィーっと猿みたいな真似をしておどける。

20年経った今、俺はサルミと暮らしている。

サオリは目がぱっちりで可愛い子だった。

ナルミは笑うとえくぼが出る可愛い子だった。

サオリとナルミのどっちと暮らしてるかって?

サルミはサルミだよ。

サルミは猿なんだから。

「なぁ、サルミ」そういうとサルミは猿みたいに口を大きく開けた。

猿みたいにっていうか猿か。

笑えてきた。


***


2021年1月

爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!