異世界転生する方法【小説】1,013字

異世界転生が流行ってるっていうからよ、てっきり本当に転生する術が見つかったのかと思ったじゃねぇかよ。

何だよ、小説や漫画の話かよ。

これを何人かに話したら鼻で笑われたよ。現実にそんなことありえるかって。

ということは、だ。まだ異世界転生の仕方は俺しか知らねぇんだな。

異世界転生なんて簡単だ。誰だってできるよ。

……違う、違う。現実逃避とか精神世界の話じゃないんだ。実際にこことは違う世界に飛べる。

俺なんて何度も飛んでるよ。この世界だって俺にとっては10番目くらいの世界だからな。

異世界って言ってもゴブリンとかエルフとかそんな世界じゃねえよ。異世界同士にそんなに違いはない。

日本は日本だし、言葉だって日本語だ。でも、ちょっと違うのよ。なんつったらいいかな。実際に異世界に飛べば分かるんだけどな。

まあ、気軽にお試しって訳にはいかねぇよ。俺みたいに根無し草じゃねーならやめときな。

一度異世界転生したら同じ世界に戻ってくることはできないんだからよ。

俺も最初に飛んだ世界がよくてよ、2度3度試してみたけど戻れなかった。もったいないことしたね。

1回異世界転生できたから、またできるのか試したくなってさ。まあ、その結果、何回でもできることがわかったからよしと考えてるよ。

で、肝心の方法だけどな。

やろうと思えば誰だってすぐにできる。ある場所であることをするだけ。

俺は別に隠そうとしてないよ。でもな、断言できる。お前はきっとやらないぜ。

まあ、この世界に満足してたらやる必要はないんだけどな。

いいよ、話してやる。

便所、あるだろ。

洋式便所の便器に水張ってんだろ。

その便器にな、顔を突っ込むのよ。

ちゃんと目も鼻も口も水に浸かるようにしてな。

それで10秒ほどそのままジッとしてると異世界に転生できるのよ。空気が変わるというかね、飛んだら肌でわかるから。

顔を上げたらもうそこは異世界よ。

確かに汚いよ。でも、それだけで転生できるんだぜ。やるだろ。

どこの便所でもいい。お前んちの便所だっていいんだぜ。ほら、誰でもやろうと思えばすぐできる。嘘じゃなかっただろ。

うん、新品の便所でもいいのかって考えるよな。俺もさ、5回目ぐらいで気付いて試してみたんだよ。新しい便器をそのために買ってさ。

ダメだった。数回しか使っていないほぼ新品の便器もダメだった。使いこまれた便器じゃないと飛べないらしい。

俺は、もうすぐまた異世界転生するつもり。今のこの世界はちょっとな。

お前はどうする？

2021年5月

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見出し画像にイラストをお借りしました。