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告白雨雲【ショートショート】538字

もしもこんな雨雲があったら。
告白する前に結果を知らせてくれるミニ雲が頭上にいたら。
失敗の時は雨を振らせて、成功の時は花びらでも降らせてくれればいい。雨だったら告白せずに話を逸らすから。そうすれば傷付くことはなくなるのに。
ミヨちゃんも可愛いスーちゃんもダメだった。背が大きくて強面なのがいけないのかな。フラれ過ぎて意味不明なことを考えてしまった。
こうなりゃヤケだ!
スモモもモモもモモのうち。セーラー服の子にも学食の子にも片っ端から告白してやる。
こうして誰かさんと誰かさんに断られ続け、気付くと僕の上にミニ雲。荒唐無稽な妄想が現実になったらしい。やけに告白時は雨模様だと思っていたところだ。
黒縁メガネの真面目そうな子の時も、人懐っこい顔のひょうきんそうな子の時も、面長のひょうきんなそう子の時も、ずっと雨が降っていた。
僕は気付いた。あのミニ雲は僕のことが好きなんじゃないかと。
だから雲に告白してみた。きっとラムちゃんみたいな子が雲から顔を出すはず。
しかし、予想に反して、緑色でお腹の大きなオジサン雷様が現れた。
もしもOKだったらどうしようと僕が固まっていると……。
雲から金属製の洗面器が落下。僕の頭に大げさな音を立ててヒットする。
薄れゆく意識の中、「これはダメだね」と僕は呟いた。


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爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!