そろそろかね?【小説】485字
「よみ子さん、昼飯はそろそろかね?」
「あら、おじいさん。お昼はもう食べたじゃないですか」
「そうだったかな。何時ごろ食べたんだったかな?」
「1時ごろでしたよ」
「まだ12時半だが……」
「いやだ、おじいさん。昨日の1時ごろですよ」
「それじゃあ、今日はまだお昼は食べていないんじゃないかな?」
「今日は食べてなくても昨日食べたじゃないですか」
「昼飯は毎日食べるもんじゃないのかね?」
「もう、おじいさんったら。今食べたらお夕飯が食べれなくなりますよ」
「夕飯まではまだ時間があるんじゃないかね?」
「おじいさん、夕方になったらすぐお夕飯ですよ」
「今はまだ昼じゃないのかね?」
「お昼の次は夕方じゃないですか。すぐですよ」
「お昼は諦めるしかないのかね」
「おじいさん、お昼お昼ってそればっかり。もっと大事なことを忘れていませんか?」
「はて、何だったかな?」
「いやだ、おじいさん、そろそろじゃないですか」
「よみ子さんよ、もう済んでるよ」
「あれ、そうですか? それはどの辺りですか?」
「昨日書いている。今日なくても昨日はあったじゃないか」
「あらやだ、おじいさん、昨日も特にオチはありませんでしたよ」
2021年8月
見出し画像にイラストをお借りしました。
爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!