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狂気の抑え方【小説】614字

俺は人とは見ている世界が違うんじゃないかと、ある時気づいた。
みんながいいという物、楽しいという物、それに対してプラスの感情を抱けない。
逆に、みんなが嫌だという物、つまらないという物に対してプラスの感情を抱く。
もちろん、みんながプラスに思う物に対して、くだらないとは言わない。
それをわきまえる知性はあるからだ。
そんなことをしても多数の愚者たちに非難されるだけ。なんの得にもならない。

俺は狂気な存在だと思う。
だが、その狂気に正気という薄皮を被せて周りに擬態している。
しかし、みんなもそうなのだろうか。
薄皮饅頭のその下にはアンコではなくデスソースが入っているのだろうか。
みんな擬態しているだけで異常性を隠している。
それを正常と呼ぶのだとしたら、俺はみんなと同じ正常である。
自らの狂気性に気づいているだけみんなよりも正常であると言える。

いや、そんなことはない。
自分が正気だと思っていてなお、滲み出る異常を隠せないのが俺の狂気である。自分では正常の範疇だと思っているから質が悪い。
この狂気は抑えなければいけない。

左眼に入れた聖十字クロスカラコンがないと左眼封じられたバフォメットから狂気が漏れ出し、人々を狂わせてしまう。
左こぶしに巻いている聖十字クロスバンテージがないと左腕禁じられしバーサーカーに抑えている狂気が全身に拡がってしまう。
首に巻いた聖十字クロスチョーカーがないと俺の咆哮人々を狂わせし地獄の歌声に人々は卒倒絶頂してしまう。
左太ももに巻いた聖十字クロスリングがないと左脚堕天した聖カモシカの脚が暴走して百メートル八秒台で走ってしまう(無意識)。



2021年8月


見出し画像にイラストをお借りしました。


爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!