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妹がいた【ミステリー?】992字

めちゃくちゃそっくりだったんですよ。
いや、本人だと思いました。
でも、そこに妹がいるはずはないです。

これは私が県外の大学に通っていた時の話です。

祖父母が金婚式を迎えたので親戚一同でお祝いしようという話になりました。

場所は、叔母の家の近くの温泉地に決まりました。

私はそこまで電車で向かうことに。

朝早く出ていたので時間に余裕があったんです。

乗り換え地の上野で降りてぶらぶらしていました。

上野公園を散歩していた時に、妹がいたんです。

高校生の妹がここにいるはずはない。

しかも、何をしていたと思いますか?

数人のカメラを持った男たちに囲まれてポーズを決めていたんです。

確かに妹は、兄である私が言うのもおかしな話ですが、悪くない見た目をしています。

しかし、引っ込み思案でこういうことをするような性格ではないんです。

それよりも、今、ここにいるのはおかしい。

他人の空似なのか、しかし、それにしては似ている。

似ているというか、違いがわからない。

私は妹にメッセージを送りました。

「今、どこにいる?」

少し待っても返ってこないのでもう少し近づいてみます。

言っておきますが、視力は問題ありません。

裸眼は悪いですが、コンタクトをしていましたから。

顔……妹です。

身長……妹です。

髪型……それっぽいですが、これはいくらでも変えられるでしょう。

服装……ひらひらしたスカートをはいて上はへそが出ています。

私の中の妹は、こんなガーリーな服を着るイメージはありませんでした。

いつも、ボーイッシュな恰好をしていました。

妹……ではないのか?

いや、顔も背格好も妹だし……。

ギリギリまで近づいてみます。

もしも、妹だとしたら私に気が付くでしょう。

妹の視線の先に立ってみます。

目があった?

うーん。

反応はない。

お客の一人として認識しているという感じ。

顔は同じなんだけどなぁ……。

でも、ちょっと違和感があります。

近くで観察したことで気が付きました。

カメラに向かってポーズを決める妹はキラキラした笑顔を振りまいています。

私の中の妹は、あんな風に誰彼構わずに笑顔を向けるような社交的な性格ではありません。

笑うとしても「ふっ」とニヒルに笑う感じです。

結局、あれは妹ではなかったのでしょう。

でも、本当に驚いたんですよ。

私の頭の中にしか存在しない理想の妹が具現化したのかと。

その後、親戚の集まりになど行かずに、「妹」の後を付けたのは言うまでもありません。

爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!