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¿¿¿地球¿¿星との接触【掌編】1282字

 ちょっと寄らせてもらおうと軽い気持ちで連絡したら、えらいことになってしまった。なんとこの星では、今まで他星との接触をしてこなかったらしい。そこそこ栄えているように見えたのに鎖星状態だったなんて。

「星を閉ざしているのに何か理由でもあるんですか?」と聞いてみた。すると意外な答えが返ってきた。

「別に閉ざしていたわけではないんですよ。ただ、文化を持つ星との接触が出来なかっただけで。我々もあなたのような他星の知的生命体がいると知り、驚いております」

 これは大発見かもしれん。今更になって未開の星が見つかるなんて。ひょっとすると俺の名前が発見者としてこの星に付くかもしれない。現地人はこの星を「地球」と呼んでいるらしい。俺の名前「¿¿¿・¿・¿¿¿¿¿¿¿」と併せて「¿¿¿地球¿¿星」とするのもいいかもしれない。

 ちなみに俺の母星を彼らは「バハラットC385b」と呼んでいるらしい。他にも「¿¿¿星」も「¿¿星」も認識していた。認識しているのに他星と交流がないなんて。ちょっと理解できない。やっぱり、鎖星してたんじゃないかといぶかしがっていると、観測しているだけで接触はできていないらしい。観測イコール接触ではないのは技術的な問題のようだ。観測技術は相当なものなのに、そっち方面の技術は「¿¿¿・¿星」レベルだ。

 まあ、そんなこんなで、この星にとって俺の来訪は歴史的なことらしかった。そのため二十年ほど待ってくれと言われた。調整するのでどうでもいいが、この星には時間をコントロールする技術もないようだ。まあ、鎖星状態なのだから仕方がないともいえる。

 俺も「U.F.O.」を出来る限り飾り付けて降り立つとする。前に近くまで寄った時の映像がシェアされて大人気になっているそうだ。現地人たちに「U.F.O.」と呼ばれているらしい。この中古マシンが大人気とはねぇ。「U.F.O.」の名前は俺も気に入ったので貰うことにした。

 まず、「U.F.O.」のステッカーをボディ中に貼った。そして、現地人のお祝い事、「結婚式」で頭に付けるティアラとベールをマシンに付けた。「U.F.O.」を頭に見立てているわけだ。そして、降り立つ地点の局所的文化も取り入れている。「鳥居」というゲートを模した物を「U.F.O.」の上に設置した。これだけ迎合すれば、彼らは涙を流して喜ぶに違いない。

 そうして、パチンコ店のネオンを再現したライトアップと、人気のアニソンを大音量で流しながら着陸した。同じく工夫して飾り立てた服で地上に出て行こうとしたのだが、何やら様子がおかしい。

「うおーい!!」「どけろー!!」「やめろー!!」「金だろ、金ー!!」「台無しだー!!」「何考えてんだよー!!」「やり直せー!!」と罵声の嵐。驚いて地上とコンタクトを取る。

 どうやら、「撮りU.F.O.」と呼ばれる過激派が騒いでいるとのこと。見るとただならぬ数の「撮りU.F.O.」たちが「U.F.O.」を取り囲んでいる。俺が喜んでもらおうと飾り立て、いろいろ演出したこれらが気に食わなかったらしい。

 俺は急激に冷めてこの星には寄らずに去ることにした。


2021年10月


見出し画像に写真をお借りしました。


 作中の罵声は「江ノ電自転車ニキ」騒動のものを参考にしました。ちょうどその時期だったもので。余談ですが自転車と電車の例の写真、額縁に入れて飾りたいほど好きです。いい仕事するなぁと彼らを見直したことを記憶しています。

爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!