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とりあえずアイスコーヒー【小説】1,072字

 私はアイスコーヒーにしますけど何にしますか? 水でいいんですか? わかりました。

 母親の影響で高校生の頃は協生党の青年部に入っていました。別に協生思想があったわけじゃないんですよ。たまに市議会議員の家に集まって話を聞いたり、青年部の大人の話を聞いたり……。話を聞いてばっかですね。

 田舎だったので同年代はいなくて面白いものではなかったんですが、皆の知らない世界を覗いているみたいで。それだけで満足でした。

 大学進学を期に地元を離れたんですが、そこでも協生党の活動をしていましたね。平和の祭典に行ったり、ボランティアをしたりと高校の頃とは違いそれなりにアクティブな活動ができました。

 でも、籍は置いていましたが徐々に協生党には参加しなくなっていったんです。大学時代に一番時間を費やしたのは空鳳教の活動ですね。……ご存知ないですよね。いわゆる仏教系の新興宗教の一つなんですが、教えが哲学みたいで興味深かったんですよ。

 哲学セミナーに参加したら主催が空鳳教だったみたいで、そこからズルズルと(笑) ほぼ毎日のように勉強会に参加していましたね。たまに学外に出て宣教活動もしていました。まあ私は口下手だったのでついて行くだけでしたけど。

 朝と晩は毎日お経を読んでいましたね。月に一度はスーツを着て教祖様のいる会館に行ってありがたいお話を聞いていました。会費が高かったんでバイトを頑張って……今となってはいい思い出です。

 そうなんです。空鳳教の活動は大学時代だけですね。自分なりにまじめに信心してたつもりだったんですけどね。まあ大学卒業したらやっぱり働かなきゃですよ。

 ビジネスですよ、ビジネス。お金稼いでなんぼじゃないですか。タワーマンションに住んでスポーツカーを何台も乗り回して……。えっ? まあ今はその途中ですかね。でもそう遠くない未来ですよ。

 お金持ちになるにはビジネスオーナーになるしかないんですよ。あなたも私と一緒に成功を目指してみませんか? 良かったら私のメンターを紹介しますよ。

 忙しい方なんですけど、成功したい友だちがいるんですって言ったら貴重な時間を割いてくれました。ピラミッドのかなり上の人なんですよ。

 何のビジネスかって? しいて言えば日用品ですかね。別に販売するのとは違うんですよ。使ってみていいと感じたら友人に紹介するだけ。口コミで広めていくだけでお金になるんですよ。だから元手もいらないんです。

 詳しくはメンターの方に聞いてみてください。近くのカフェにいるそうなんでさっそく向かいましょう!

 ここの会計は……220円なんで1人110円ですね。100円でいいですよ。


2020年9月


 この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

 見出し画像にイラストをお借りしました。このようなお話に使ってしまい恐縮です。


 この話には、「政治」「宗教」「ビジネス」という三大何かが登場します。 しかも、人を選ぶものばかり。決して主流ではない彼らの活動は時に偏見の目に晒されることもしばしば。彼らの活動の先には求める物があるのか。 これらの活動を1人の人間がフルコンプしたとしたら……という発想を膨らませて書いた話です。

 私は政治活動は自分の主義と合致する政党を主流にするもの、宗教は心の平穏を保つもの、ビジネスはお金を稼ぎ社会に利益をもたらすものという認識です。私は文章を書き殴って、自分の言いたいことを表し、それによって心の平安を保ち、いずれ金も稼げたらいいなと思っています。ミニマムではありますが、「政治宗教ビジネス」全ての要素が揃っているわけですね。

 なんていう生意気なことを別サイトの後書きで書いていましたわ。本当はもっと長々としていましたが思想強めだったのでカットしました。



爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!