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酒飲む理由【掌編】(569字)

昔は神童なんて言われてよ、学校の成績は一番だった。先生からも親からも褒められてたんだよ。しょうちゃん、祥ちゃんって友達にも慕われてた。

大学だって国立だよ、国立。国に期待されてたってわけよ。

大学卒業して入った会社が悪くてね、1年で退職してやった。地元に帰ってきて……うん、もうかれこれ20年か。親戚や近所には家の手伝いやなんかしていることにしてるけど、昼間っからブラブラしている無職だよ。

会社辞めるまでは酒なんて付き合いでしか飲まなかった。それが今じゃ毎日浴びるほど飲んでるんだもんなぁ。

祥一しょういちは酒でダメになった、なんて言われるけど、本当は違うんだ。

俺はな、あいつは記憶力がいいだけで本当は頭が悪いとか、性格が暗いから人に嫌われるとか、精神が弱いから仕事が続かないだとか、そんなふうに、俺に問題があるような言い方をされるのが、大っ嫌いなんだ。

全部、酒のせいにしたい。別に、飲まなくったっていいんだよ、本当は。

だから、俺は酒を飲んでいる。酒さえ飲まなけりゃ立派な人になっただろうに、酒さえ飲んでなけりゃ、今頃は……って言ってほしいのよ。

祥一が悪いんじゃない、酒が悪いんだっつってね。

ほら、今も「あの酔っ払い」って誰か悪口言ってるだろ? それでいいんだよ。俺は酔っ払いのダメ野郎。酒さえ飲まなきゃ、今頃総理大臣か大統領!

誰も悪口なんて言ってない? 幻聴で結構、結構、コケコッコー。


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2021年1月

爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!