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熱い人間になる方法【小説】488字

 焼き石に触れば火傷するほど熱いです。直接手で触れなくても焼き石に近づいただけで熱いと感じます。それは焼き石が凄まじい熱を発しているからに他なりません。

 私たち人間も熱を持っています。病気で高熱になったり、運動をして一時的に体温が上がったりすれば、当人はもちろん、周りの人も熱を感じることがあります。

 それは文字通り、せいぜい熱をほのかに感じる・・・程度のもので、熱くて近づけない状態になることはありません。通常、人間は焼き石のように熱を発することなどないのです。

 しかし、焼き石のごとく、いえ、それ以上に熱くなるときがやってきます。そうです。火葬です。火葬された後は遺族による骨上こつあげがあります。

 箸を使って焼きあがった骨を拾うのです。箸を使うのはこの世とあの世の橋渡しをするといわれていますが、単純に素手では触れないからでもあります。骨はかなり熱くなっています。

 それもそのはずです。千度前後の高温で焼き上げられたのです。焼き石はせいぜい三、四百度です。焼き石以上に熱い人間の完成です。

 どんなに冷酷な人も、冷遇されていた人も、クールな人も、冷え性の人も、火葬されれば熱々の人間になれるのです。


2021年8月


見出し画像にイラストをお借りしました。


爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!