恥ずかしがり屋の立方体【ショートショート】(406字)
「……だよねぇ~、ミシちゃん」
優子とミシちゃんは大の仲良し。優子はこの四角い生物が可愛くて可愛くて仕方がない。それに唯一の話相手でもある。ミシちゃんは家にいる時は跳ね回っているのに、たまに散歩に連れ出すと全然動かない。だから優子が半ば引きずる形で散歩する羽目になる。
「恥ずかしいのかな、ミシちゃん。そんなんだと本当に箱になっちゃうよ」優子はミシちゃんを撫でながらこんなことを呟くが、丸々太って立方体みたいに座るその姿も愛おしくて好きなのだ。
前に優子の家に人が来た時もミシちゃんはただの箱みたいにジッとしていた。恥ずかしいのか人嫌いなのか。コップの水を玄関にぶちまける優子を見てもミシちゃんは動かない。人嫌いなのは優子も同じだ。
「似た者同士だねぇ~、ミシちゃん」
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これが我が町の名物婆さんだ。段ボールにヒモを括り付けて引っ張りながら街を徘徊している。面白がって話しかけてはいけない。婆さんは人嫌いだから。
爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!