他者への想像力を働かすには体験が必要と感じた事。

この週末、偶然にも手話を使ったイベントに2件参加したので、気づいたことを覚書に。

一つ目。手話を中心とした演劇「『華指1832』」を見た。
セリフも発せられるし、BGMもあるのだが、2時間の上演のうち、8割ほどが手話の手が触れる音、漏れる声、たまに踏み込まれる足音・・・私は手話を理解しないので、そういった人向けに全編を通じて字幕が舞台の上方に表示されているのだが、どうしても、舞台上とその上方とを常に視線を移動させることになり、すごく集中力が必要だったようで、観劇後疲労感すら感じた。
聞こえに不自由を感じている方は、いくら字幕アプリができて映画や演劇なども劇場でたのしめる機会が増えてきたといっても、このような集中力、負荷がかかっているのかもしれない、という体験になった。

会話においては、主に耳から入る言葉の情報を頼っていると思っていたが、目から入る情報、対面空間であればさらにその場全体の情報を五感をすべて使ってキャッチしていることに気づいた。

次の日に参加した「GEWEL オープンフォーラム2021
D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)へのブレークスルー
~私の組織でもやってみよう~」
オンラインフォーラムでは、見え方、聞こえ方、トランスジェンダーや発達特性のある方の具体的な困りごととその取り組み例と生の声を紹介していたた。

この日の気づいたこと1つ目は、フォーラム中、UDトークという、発話を同時字幕化してくれるアプリや、手話での同時通訳が導入されていた。
UDトークは2年前私も字幕を修正する係として触ったことがあったが、誤変換が多くて、すごい速さで進む講演の展開にほとんどついてゆけず、苦い思い出だったが、今回はそこまでストレスを感じることがなかったことに、アプリの進化や字幕修正チームがしっかり準備されていたのであろうと感心した。

2つ目に、見え方に特性のある方にとって見やすい資料とは、聞こえに特性のある方がオンラインミーティングでの苦労している点、工夫できること、字幕ツールなど紹介されたので、リンクを張っておく。
また、パブリックトイレなどの設計配慮や、こういったテクノロジーが特定の特性のためだけでなくほかの困りごとを抱えている人にも役立っていることも知れた。例えば、聴覚障害の方のための無料の即時字幕ツールが普及することが発達特性で耳からの情報だと理解が困難な方にも助かるなど。
これらの製品、JIS規格など、今回のイベントに参加して初めて知った視点や情報ばかりだった。

この2日間で共通して感じた事は、今出来上がっている社会の仕組みやサービスに自分がたまたま、不自由を感じなくてすんでいるだけなのだということ。
でも世の中には、そうではない人が一定数いて*1、
では、何をどう取り組めば、お互いが居心地の良い空間になるのか。
友人や同僚など身近に配慮が必要な人がいると気づかない中で、想像だけで当事者意識を持続けることは、残念ながら難しい。
だからこそ、パラリンピックでも某チャリティー番組でも映画や本でも、なんらかのきっかけからでも、自分の人生の範囲に引き込んでいくことが、私にとっては一歩だと思う。そうでなければ、入ってくる情報も入ってこない。私はまだその段階。

このイベントの最後に、D&Iを実践することは思いやるとか気持ちの問題ではなく、こうした具体的な取り組みであること、D&Iへの取り組みの最初の一歩を踏み出すことが、勇気ある一歩にならないよう、周囲や私たちは失敗しても試みることに受容的であることも同じくらい大切ということをおっしゃられていたのが心に残っている。

*1 「WeThe15」キャンペーンでは、世界の人口の約15%、12億人が何らかの障害があるとされている。
https://www.wethe15.org/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?