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ファンタスティック・エクスプロージョン「帰ってきたファンタスティック・エクスプロージョン」

80年代から90年代にかけて活動したクリエイター集団 “京浜兄弟社” に在籍していた永田一直と、彼が主催するTRANSONIC RECORDSに所属する鈴木隆弘(SUZUKISKI)による昭和ハウスユニット。

永田一直は笑いとシリアス、CoolとFoolの均衡をギリギリで保つ天才です。
TRANSONIC RECORDSのサブレーベルであるZero Gravityでは純度の高い電子音楽を展開し、本人名義の作品では現代音楽を思わせるキレの良いノイズを鳴らします。
また、テクノの源流としても有名なクラウトロックのスーパーユニット ZERO SETの「speed display」をカバーを行った際は不安定なメビウスのシンセを完全コピーするという離れ業を魅せ付ける程の実力者でもあります。

そんな彼がリーダーを務めるFantastic Explosionは確かな演奏力と思い切りの良いおふざけが発揮されるユニットです。

1997年のデビュー作から【これが、70年代型ドラム&ベース・サウンドだ!!】などと良く分からないコンセプトを掲げ、カビ臭い昭和の映画やCMに胡散臭いUFOネタをサンプリングしてコラージュしまくる荒技を披露。
その後もライブ盤を含めて1999年までに4枚という早いペースで作品をリリースして休止期間に入ります。
今回紹介する「帰ってきたファンタスティック・エクスプロージョン」はその名の通り2003年にリリースされた4年ぶりとなる復活作です。

この作品では昭和テイストのコラージュは踏襲しつつ、今でこそポピュラーとなったマッシュアップを取り入れることでさらなる馬鹿馬鹿しさと職人技を同時に味合わせてくれます。
やっぱり聴き処は菓子メーカー ロッテのCMソングのボーカルをそのまま使用した「チョコレート」ですね。
アイドルのPerfumeにもそんな曲があったと思いますが、こちらの方が数倍カカオが香るチョコレートディスコを聴かせてくれます。

前回紹介したセニョール・ココナッツと同様、このFantastic Explosionも曲の間に挿入されたコラージュはYMOの『増殖』へのオマージュだと思います。
YMOが後世に残した物は大きかったなと痛感します。
しかし、「帰ってきたファンタスティック・エクスプロージョン」はそれだけではありません。
まずタイトルはどう考えてもウルトラマン。
滝田洋二郎監督の「コミック雑誌なんかいらない!」からの台詞をサンプリングした『ロス疑惑』。
New Orderの「blue monday」のリズムを拝借。
SF嗜好だってそう。
このアルバムには永田一直のルーツが詰まっています。
その支離滅裂を支離滅裂のままダンスミュージックに昇華させる彼はやっぱり天才です。

〜ここからは個人的な意見〜

30分満たないミニアルバムなので、今でも良く聴いてます。
『馬鹿馬鹿しい』とか一丁前に言わせて頂きましたが、実はそんなこと思ってません。
そのユーモアに脱帽して格好良いとしか思えません。
テレビでビートたけしを観る時と同じ感覚です。
どんなに馬鹿なことをやっていても、芸よりも知性が表に出てしまってスッキリ笑えないというか『嗚呼、格好良い』としか思えない。
僕は北野武監督のファンと言うかともあってか、多分その感覚は人よりも大きいですが。

実は永田一直に出会うまで僕はクラブミュージックが苦手で。
何ていうか、人を躍らせる音楽って聴き手に合わせている気がして魅力を感じませんでした。
「こうすれば盛り上がる」みたいなある程度の決まりみたいなのも感じ取れてしまって「つまらん」と。
でも、本当に良い音楽を聴けばどんなジャンルでも好きになれます。
Fantastic Explosionは新しい音やリズムではなく、新しい遊びを提唱したのだと考えています。
この姿勢に僕は惹かれました。

直訳すると“幻想的な爆発”。

これも裏をかいてギャグなのか?


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