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ゲルニカ 『改造への躍動』

まずはこのアルバムから着手しよう。
ゲルニカを一発目に持ってきた理由は単純。

『人気があるから』

極私的にその作品を語ると言っても、やっぱり読んでくれる人が居ないとつまらないので。
そういう意味でも、僕自身はアンダーグラウンドな存在にはなれないしなろうとも思えない。
媚びない、とは人間の欲求を逆らう行為であり無理が生じる。
はみ出し物が排除されるこの世の中ではアングラが深呼吸出来るスペースは喫煙所よりも狭いだろう。

『人気があるから』と言っても、読者の皆様の周りに「戸川純最高だよね」なんて言うナウなヤングは少ないでしょう。
それでも、人気があるんです。
何故そう言い切るのか?
僕はその昔、熱心なインスタグラマーでして、好きな音楽や映画に関する記事と写真を毎日更新しフォロワーもそこそこいたんですよ。
今では完璧な惰性で投稿しているのですが、昔に載せた戸川純の記事には未だにイイネが来ます。
しかも、海外から。
まぁ海外からのイイネなんで、noteに戸川純の記事を投稿しても皆様の関心は惹けないのかも知れませんが。

兎にも角にもゲルニカの『改造への躍動』です。
このユニットを知らない方も多いと思うので簡単に紹介を。

70年代末に活動したニューウェーブバンド[8 1/2(ハッカニブンノイチ)]でキーボードを担当していた上野耕路とバンドの追っかけをしていた女優の戸川純が出逢い、そこにデザイナーの太田螢一が加わって1981年に結成したテクノ歌謡ユニット。
表に立つのはボーカルの戸川純と作曲と演奏を担当する上野耕路の二人で、作詞とコンセプトやデザインを担当する太田螢一は裏方に徹しています。

どうでも良いんですが、太田螢一と大瀧 詠一が被って言いにくいのよ。
おおたけいいち とおおたきえいいち ね。
oota keiichi と ootaki eiichi ね。
ootakeiichi と ootakieiichi ね。

音楽的には多重録音のテープとチープな電子ピアノで作る似非オーケストラな歌謡曲を大正浪漫溢れる戸川純が強烈なファルセットで唄う(演じる)というもの。
時代も手伝って、メジャーレーベル[アルファレーベル(YEN)]から細野晴臣のプロデュースでこのデビューアルバム『改造への躍動』をリリースしました。
どう考えてもアンダーグラウンドな存在のユニットですが全く世間に媚びることなくメジャーレーベルからデビューする、というあざとさ。

僕がゲルニカを知ったのは10年程前。
20歳の僕はこのアルバムを手にする前にYoutubeで彼等(戸川純と上野耕路)のテレビ出演時の映像を観ました。
『“ゲル”が独語のようで、“ニカ”が露語のようだから』と神経質極まりない挙動不審でバンド名の由来を語る上野耕路と、元祖不思議ちゃん テポドン級の地雷少女の戸川純の振る舞いにまんまと騙された。
僕はその時太田螢一の存在を知らず二人のズレ具合を[素]と思っていましたが、これは完璧な計算のもとに演じられた姿。

こう言うのを[あざとい]って言うのよ。
最近は「ぶりっ子でムカつくけど可愛いのは認めるから少し嫌味を含ませてこう呼ばせて頂きます」みたいな感じで[あざとい]って言うでしょ?
それは合ってるんやけど、
『あざとい、愛されメイク』みたいな本末転倒なコピーが出回ると訳わからんよね。

ゲルニカは前衛的と言うよりも温故知新を体現した完成度の高いポップスで、微かな笑いと共に聴いた瞬間 100年前にタイムスリップさせてくれる。
デモテープを聴いた細野晴臣がその音源をそのままLP化した、という逸話のあるこの作品のローファイな音質も時代錯誤な作風に似合っています。

一回聴いて駄目な人は駄目だと思いますが、聴いてみて嫌悪感さえ抱かなければ何回か聴いているうちにちゃんとハマると思うので是非動画サイトで御一聴を。


話しは変わりますが、
大森靖子がデビューした時は「戸川純再来か!?」と結構期待したんです。
同じあざとさを感じて。
椎名林檎とは違うあざとさ。
因みに椎名林檎さんと戸川純は全然違います。
林檎さんはプロフェッショナル過ぎるので。
でも、イマイチ大森靖子が大爆発しなかったのはやっぱり時代のせいなのかな?
勿体無いよね、良い人材なのに。

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