ビーズ
僕はB'zが好き。
妻もB'zが好き。
さらに妻はビーズが好き。
ここでいうビーズは手芸のビーズだ。
妻は料理だけでなく、手芸もできるのだ。
月並みながら「しゅげー」と驚くばかりだが、その器用さにはただただ憧れる。
僕の手芸は中学校の家庭科で止まっており、玉留めもできない。
人は自分にないものを持っている人に惹かれるというが、妻はまさにその通りだと思う。
料理が出来て器用で繊細で綺麗。
がさつで不器用で馬鹿で汚い僕が惹かれる訳だ。
そんな妻が最近、ビーズで作ろうと選んだのはマスクチェーン。
そもそも、ビーズで何か作ろうとすることも素敵なのだが、そこからマスクチェーンを選ぶセンスがお洒落の一言。
そのセンスに追いついていない僕が、物理的に妻の後ろについていくと、向かった先は近所の手芸店。
たくさんのビーズを選ぶ妻の顔は、お菓子のお家で遊ぶ子供のよう。
「本当に楽しい。ここに住みたい」と笑う妻は、どのスパンコールよりも輝いていた。
選びに選び抜いた品々を手に入れた妻は、家でビーズケースに入れ替えていた。
色鮮やかなそのケースは、僕が見ても心踊る。
高校生の頃、ホームセンターでアルバイトをしていた時、様々なカラーパッケージの激落ちくんを見てテンションが上がったことを思い出した。
そして妻は早速、マスクチェーンの作成に取り掛かった。
はっきり言って、僕が見てもなんのこっちゃだ。
だが、みるみるその物は完成されていく。
倍速のように動く妻の手が、ビーズをものの見事に作品として作り上げていく。
横で見ている僕からしたら、マスクチェーンだけが作品ではない。
一生懸命にマスクチェーンを作る妻の姿も含めた、作品のように思えた。
なぜ、そんな風に思ったか?
それは、このマスクチェーンが、僕の母と祖母のために作っている物だからだ。
先日、母から美味しいジュレが届いた。
その味と想いに感動を覚えた妻は、母と祖母のために何か返したいと考えた。
そこで思いついたのが、手作りのマスクチェーン。
何か良い感じの物を買って返そうと考えていた僕は、自分が恥ずかしくなった。
心を込めて作った物を贈る。
やはり妻は、僕にないものを持っている。
だから惹かれるのだ。
全てが明らかになった時、マスクチェーンが完成した。
母はココナッツホワイト、祖母はパールホワイトを基調とした作品なのだが、この色についても妻は長考していた。
二人に合う色を考え、買って、作る。
一部始終を二人に伝えたら、どれだけ喜ぶのだろうか。
それを想像するだけ、僕は嬉しくなった。
そしてこの想いを、妻や家族にしっかりと伝えていこう。
玉留めも出来ないが、妻の心を留め続けるために、妻のためにできることを考えよう。
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