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シン・ゴジラを劇場で6回観た人間によるシン・エヴァンゲリオン感想(ネタバレ有)

シン・エヴァンゲリオン劇場版を初日で観てきました。どうしてなかなか、「観た」以外の感想は何を書いてもネタバレになってしまうので、少しでも内容を知りたくない人はぜひまた鑑賞してからお越しください。

【ネタバレなし】本稿の書き手のエヴァ(庵野)遍歴

自分語りなので、感想だけ気になるという方はスキップしていただいても問題ない段落です。

平成元年生まれの筆者がエヴァンゲリオンというコンテンツと出会ったのは小学生のときで、きっかけはおそらくコミックボンボン。その時分から現在に至るまで、TV版も旧劇も新劇も折に触れて一通り観ています。いるけれども、ちゃんと「観るぞ!」と腰を据えて鑑賞したことがほとんどなくて、作品そのものへの思い入れはそんなに強くありません。

自分にとって影響が大きかったのはゲーム作品で、Nintendo64のエヴァのゲームをめちゃくちゃやってました。あとはスパロボ。そんな経緯もあったので、エヴァンゲリオンは「ロボットアニメ」だと思ってます。

シン・エヴァ鑑賞にあたって自分が興味をもっていたのはエヴァンゲリオンという作品よりも庵野秀明というクリエイターのほう。同氏が声優として主演した2013年の『風立ちぬ』、大阪芸大時代の同氏をモデルにした人物が登場する2014年の『アオイホノオ(テレ東ドラマ版)』、そして同氏が監督した2016年の『シン・ゴジラ』という、庵野秀明の個性が大きく顕れた3つの作品にここ10年間で出会った(そして自分にハマった)ことが大きいです。

特にシン・ゴジラについては上映当時、自分の人生がかなり塞がっていた時期でして、たまたま鑑賞した同作が放つわけのわからないエネルギーに強く引き寄せられて、それを解明するために6回劇場に(4DX・日本語字幕版・爆音などいろんなバージョンで)通うハメになりました。

そんなわけで筆者はシン・エヴァという作品について、エヴァンゲリオンという作品世界の帰結よりも、"2012年12月。Qの公開後、所謂、鬱状態となった"のちに、『風立ちぬ』『シン・ゴジラ』――あと『アオイホノオ』原作者島本和彦とのシン・ゴジラをめぐるプロレス――を経て"再生"した庵野秀明がどんな作品を創るのか、ということを期待して鑑賞に臨んだ次第です。


【ネタバレあり】シン・エヴァンゲリオン劇場版の感想





100点!!!!!


めちゃくちゃよかったです。本当によかった。庵野秀明は完全に"許された"んだなと感じられて、心底嬉しくなりました。

魂の浄化

映画の中で、碇ゲンドウが起こそうとしたフォース・インパクトとは『魂の浄化』だと説明されていました。もっと言えば、ゲンドウ自身はフォース・インパクトのことをアディショナル・インパクトと称していた。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』というリブートシリーズは、当初3部作を予定していたものが、今回のシン・エヴァンゲリオンが途中で"追加"されて事実上の4部作になりました。序破Qを1st/2nd/3rdと見立てれば、シンはまさに4thであり、アディショナル。

シン・エヴァンゲリオンという映画は、"Qの公開後(あるいは、それ以前にも何度となく)壊れてしまった"庵野秀明が、『風立ちぬ』や『シン・ゴジラ』等の救済を経て掴んだ希望をもって描いた、自身の魂を浄化するための作品だったのでしょう。

序盤から中盤にかけて「壊れて」しまい心の殻に閉じこもっていた碇シンジを救ったのは、優しすぎず冷たすぎない距離で、いつか自分で立ち上がるだろうと見守り続けたかつての級友たちでした。ほんと、鬱の治療のように、ただ時間が解決することにみんな任せていたんですよね。このシンジの回復に一時間ぐらい尺を取っていた気がしますが、庵野秀明にとっては切実に描写したかった部分なんだろうな。

親から子への物語

碇親子、ミサトと『加持リョウジ』、村の住人や猫など、いろいろな場面で親子の形が描かれる本作。特に、ゲンドウとミサトにおいては、「子」に向き合うことのできなかった親だという描写が象徴的です。

ゲンドウ、式波アスカ、カヲル、マリなど、新劇を通じて(あるいは旧作から)背景がはっきりとは明かされてこなかった人物たちが、それぞれの望みの独白をする場面があります。振り返ってもみれば、エヴァの登場人物はTV版の放送から現在に至るまで、作劇の都合上ひどい目に合わされ、それぞれの行動原理もろくに明かされないままあーだこーだと消費者のおもちゃにされたキャラクターばかりでした。

シンエヴァで最終的にほとんどのキャラクターは救われました。死んでしまうキャラクターもいるけど、当人たちは満足して散っていきます。本作は、庵野秀明自身という"親"が生み出した"子"であるキャラクターたちに向き合って、今まで伝えられなかったことを伝え、一人残らず救うためのカントクなりの『補完計画』だったのでしょう。

現実に向き合う

書き割りのセット上で激突する初号機と十三号機、カヲルがシンジに伝える「イマジナリーではなくリアリティに……」というセリフ、そしてクライマックスの宇部新川駅のシーン、"俳優"の神木隆之介が声を当てた声変わりしたシンジなど、ところどころでメタ的な描写がありました。

「リアルを見ろ」というのは、やっぱりアニメから始まったクリエイターが行き着く答えなんでしょうね。

***

そんなわけで、大満足なシン・エヴァンゲリオン劇場版でした。こういう『生前葬』みたいな映画は、本当にエネルギッシュで好きです。風立ちぬとか仮面ライダー1号(2016)とか。

最後に余談、個人的に一番心に残った場面について。ミサトがシンジと和解して、シンジが「ミサトさん、『加持リョウジ』君に会ったよ。すごくいい奴だった」と二人で写った記念写真を渡すシーン。

マジいいシーンなんすよ……。涙が止まらなくなってしまった。これこそが"許し"だよ。

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