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備長炭の隠れたニーズと半年で炭焼き職人になる方法

和歌山県田辺市に炭焼き職人の話を聴きに行ったら、あまり世に出ていないであろう炭のニーズと炭焼き職人の実情を知ることができたのだが、これも長らくアウトプットしていなかった。

2018年6月のこと。たまたま縁があって出会った方から「炭焼き職人にならない?」という提案をもらったことがきっかけで、田辺市へ足を運ぶことになった。

備長炭のニーズ

和歌山県は紀州備長炭というブランド炭の産地だ。原木となるウバメガシを和歌山県内で炭として加工すると、紀州備長炭ブランドを名乗って販売できるようになる。

炭の役割というと、七輪やバーベキューの火種、つまり燃料としての用途が思い浮かぶ。紀州備長炭はプロの料理家からも一定の評価を得ており、国内外の一流料理店にはわざわざ紀州備長炭を買い付けているところもあるそうだ。ただ燃料としてのニーズはノーブランドの安い木炭やガス等代替燃料との競合優位性に欠け、市場としては厳しい。

近年備長炭のニーズとして急浮上しているのは、原料としての用途だ。炭マスクとか炭化粧品、脱臭炭といった炭の効能に着目する日用品の原材料として、粉砕・細粒化した紀州備長炭を用いたいというメーカーからのニーズが急増しているという。

「炭焼き職人にならない?」の背景にはこういう事情があった。市場として紀州備長炭のニーズはまだまだあるのだが、それに製造が追いついていないということだ。

紀州備長炭の製造課題

紀州備長炭の製造には2つの課題がある。原木の調達職人の不足だ。

1. 原木の調達
紀州備長炭は前項冒頭の通りウバメガシを和歌山県内で加工することで名乗ることができるのだが、いま、和歌山県内の採伐しやすいところにあるウバメガシはほとんど伐り尽くしてしまったという。なので原木を調達するには伐り出しが大変な山奥まで取りに行くか、県外のウバメガシを調達するしかない。別に三重県産のウバメガシであっても、加工現場が和歌山県内であれば『紀州備長炭』を名乗っていいそうだ。

2. 職人の不足
多くの第一次・第二次産業と同様、担い手が不足している。備長炭を製造するための炭焼きの技法は、伝統工芸的に『炭焼き職人』に師事して時間をかけて学ぶのが現在も一般的だ。職人になりたいといって県外からやってくる人もいるが、その環境に適合できず離れていくことは多い。

炭焼き職人に半年でなれる方法

炭焼き職人に求められるのは、炭窯に入れて焼き上げる原木の出し入れを時間・気温・炉の温度・湿度・匂い等から判断して適切に管理することで、その判断ができるようになるまで長年の経験を要するのが職人技たる所以だ。

駆け出しの若手から老練なベテランまで複数の「炭焼き職人」とお会いしたのだが、その中で一人、異質な職人に出会った。他県から数年前に家族で移住して炭焼きに取り組むその人物は、炉の温度を管理している。

といっても特段難しいことをしているわけではない。炭窯に温度計を取り付け、その数値を逐次記録しているだけだ。しかしこれだけで製造の再現性が上がるし、温度を変えて結果がどのように変化するかあれこれ試行することもできるという。温度管理はその人の師匠にあたる人物が取り組み始めたことで、師匠が引退する際に氏が炭窯ごと引き受けて現在に至る。

温度管理を行っている炭焼き職人は地域でその人以外におらず、またあまり他の職人からの理解も得られていないという。ただ温度管理を知っている備長炭流通の関係者が言うには、「温度管理すれば誰でも半年で炭焼き職人になれる」とも。「3ヶ月で寿司職人に」みたいな話だ。

炭焼き職人は調達から加工まで一貫して取り組む必要がある。原木を伐り出しに行っている間は窯の稼働ができず、単身者はこれがネックになることが多いという。また伐り出しに要する時間や体力も並大抵ではない。業者から原木を購入する方法もあるが、当然その場合は金がかかる。

結局、大いに興味はあったものの今のタイミングで炭焼き職人になる決心はつかなかった。とはいえ、あまり外に出ていないこの情報を知らせることぐらいは手伝いたいと思い、今回記事を作成した。もし炭焼き職人に興味がある方がいたら、自分にご連絡いただければ対応できることはさせていただきたい。

余談:紀伊田辺のスナック街がアツい

最近、初めて訪れる地方に行ったときは現地のスナックに飛び込むのをノルマにしているのだけど、紀伊田辺駅前のスナック密集度と飲み屋街の雰囲気が激ヤバだった。スナック愛好家は一度訪れるべき。

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熊野古道の世界遺産化の影響もあって近年は外国人観光客も増加しているそうだ。飲みに入ったバーのマスターが「今度新しくゲストハウス作るんだ」と言っていた。それとは関係ないけれど、宿泊したゲストハウスタカオは若い外国人のオーナーさんがやってるゲストハウスだった。

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紀伊田辺、そのうち再訪したいな。

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