【ツクルバ会社説明資料解説Vol.5】カウカモの成長戦略
こんにちは。IR担当の重松です。
今回は、下記の会社説明動画のスライドの解説記事第5回目になります。
前回のVol.4では、カウカモの競争環境について解説しました。
カウカモは、競合に対し、「見るだけで楽しい」という顧客体験を提供して差別化を図り、これによって蓄積されたユーザー基盤とデータを武器に、早く適切なマッチングとデータ活用による魅力的な物件創出で競合優位性を確立しています。
今回は、会社説明資料の中から、カウカモの成長戦略のスライドについて解説します。上記の競合優位性をどう成長戦略に活かしていくのか、ご覧いただけますと幸いです。
1.カウカモの成長サイクル
カウカモ事業の成長サイクルは上記のとおりです。図の右側から順を追って説明します。
オンラインであたかも内見しているかのような体験が得られるストーリー調の魅力的な記事により、潜在的買主を含めた買主がカウカモ上に蓄積していきます。
次に、増えた買主に対するオンラインとオフラインを統合した洗練された顧客体験により、取引が増えていきます。
取引が増えると、「カウカモには魅力的な市場がある」ということで、売主も増えていきます。さらに、カウカモは、売主に対してデータに基づいて物件の企画・開発や売却提案をすることで、物件をより魅力的にして売却することが可能です。
そうして売主が増えると、魅力的な物件が増えます。魅力的な物件が増えると、魅力的な物件を目当てに買主がさらにカウカモ上に蓄積していきます。
このように、蓄積された買主ユーザー・データ基盤を起点とした成長サイクルが、カウカモの成長サイクルです。
2.今後の成長戦略の考え方
現在、展開エリアが東京都区部と横浜の一部であるのに対し、買主のユーザー基盤は登録会員数30万人、年間利用者数200万人います。
今後は既存のユーザー基盤とデータを武器に、売主や売り物件を増やしていくことに注力していきます。そうすることで、カウカモ上に魅力的な物件が増え、これを目当てにした買主を増やしていくことができると考えるからです。
会社説明資料解説Vol.2で説明したように、カウカモでの希望価格成約率は85%、売却期間は首都圏平均4.15カ月に対して平均2.03カ月での成約となっています。
この、「カウカモなら早く適正な価格で売れる」ということを武器にして売主サイドを強化していきます。
3.今後の成長戦略の概要
今後の成長戦略としては、スライドの水色部分の「物件供給の拡大」と「構造的なテイクレートの改善」に取り組んでいきます。
以下では、成長戦略の具体的な実行例を紹介していきます。
4.物件供給の拡大①個人売主チャネルの開拓
物件供給の拡大施策のメインは、個人売主物件獲得のためのチャネルを開拓することです。具体的には、デジタルマーケティングやエリアを特定したチラシ配布など、オンライン・オフラインを含めたマーケティングに注力しています。
その他、マネーフォワード社のような他業種の事業者様とのアライアンスを進めています。具体的には、以下のような事業者様からの紹介を受けるチャネルを強化していくということになります。
・不動産を保有しているユーザーとの接点を持っている事業者様
・物件を売るきっかけとなるようなライフイベントに接点を有している他の事業者様
特に、マネーフォワード社との提携については2022年中に不動産保有者向けのサービスを共同でリリースする計画となっています。
これらの個人チャネル開拓の強化は、2020年7月期からすでにトライアルとして行っています。その結果、個人売主からの媒介獲得数は2019年7月期比2.2倍に増えています。
また、カウカモで売却してもらうための独自の訴求商品のトライアルも進めています。
上記は、昨年10月にリリースされた「築古限定リノベ売却パック」というサービスです。
これは、リノベーションが必要な築20年以上の物件について、ツクルバが費用を負担してリノベーションを行うというものです。ツクルバは、売却時に、リノベーション費用、仲介費用、サービスパッケージ費用をいただきます。
これまで、築古の物件はなかなか売れず、結果として安く買い取られてしまうというケースが多くありました。ですが、カウカモのデータを活用してリノベーションを施すことで、個人売主自身が早く適正な価格で売ることが可能になります。例えば、2980万円の部屋がリノベによって4490万円で売れるという事例もあります。リノベの費用を考えても、売主の利益は増えます。
さらに、4か月以上売れなかった場合は、「ツクルバが買い取る」という買取保証つきです。これにより、売主としては、ダウンサイドを予め限定したうえで、早く適正な価格で売れるというメリットがあります。
これは、どのような物件が売れるかを、把握しているツクルバだからできるサービスです。
5.物件供給の拡大②再販事業者との連携強化
次に、再販事業者との連携強化についてです。
これは、カウカモで蓄積されたユーザー基盤とデータを活かして、再販事業者の販売支援を行うというものです。データ活用により、エリアごとのターゲットユーザー、リノベーションのデザイン、価格帯などを企画・提案することができます。
これも2020年7月期にすでにトライアルを行っており、これにより、自社企画物件数は、2019年7月期比2.4倍に増加しています。
再販事業者支援サービス
具体的なサービスとしては、再販事業者支援サービスがあります。
このサービスの特長は以下のとおりです。
・データ活用によりユーザーに“刺さる”物件の要件をブランドとして開発
・ユーザーはブランドページをフォローすると物件追加時に通知を受領⇒ダイレクトにファンユーザーに訴求可能
以上の特長により、ブランドの物件は、「早く適正な価格」で売れることが可能になります。
実際、こちらについては、2021年11月末日時点で首都圏平均4.15カ月に対して平均売却期間が1.58カ月、各ブランドのフォロワーの月平均成長率は19~36パーセントとなっています。
スターマイカとの提携
次に、こちらはスターマイカ社との提携により行っているサービスです。
こちらは、リノベーションされていない物件を、「リノベプラン」と「リノベ後のバーチャル画像」とセットで販売しています。
リノベ後の状態をバーチャル画像で見せることで、リノベ前でも、「早く適正な価格」で売ることができます。
実際、こちらの平均売却期間は首都圏平均4.15カ月に対して2.13カ月です。また、89パーセントが売出価格での成約となっています(注)。
6.構造的なテイクレートの改善
上記のスライドは縦軸は、上から順に今後拡大していく領域を示しています。そして、横軸は、左から順に、売主から買主に物件が流れていくフローを示しています。
横軸のそれぞれの五角形の中の鍵かっこには、ツクルバが獲得可能な最大のテイクレート(カウカモの流通総額から得られる粗利の率)が書かれています。
従来の主な事業領域
色の濃い紺色の箇所になりますが、カウカモはこれまで、主に買主側からいただく仲介手数料を中心に事業を展開してきました。
「検証済み・拡大期」にある事業領域
これに対し、2020年7月期の下期から濃い青色の箇所の施策の検証を行ってきました。具体的には、「再販事業者支援サービス」や、「自社エージェント比率の向上」、「購入付帯サービス」(リノベーションや保険等の紹介サービス)などです。
これらにより、マネタイズのポイントを増やしたり、自社の取り分を増やすことを企図しています。
「先行投資による開発期」にある事業領域
さらに、今後は、薄い水色の箇所に先行投資を行っていきます。
「売却付帯サービス」は、先ほどお話した築古限定リノベ売却パックなどのサービスです。
「個人売主物件の仲介」は、上記4で述べた個人売主チャネルの開拓により、戦略的に拡充していきます。
さらに、自社や他社のバランスシートを活用して、リスクを抑えた形で「企画商品の拡充」も行っていきます。
これらの取り組みは既に開始しており、今後も検証と改善を積み重ねていく方針です。
目標とするテイクレート水準について
ここで、会社説明動画では、IR Agentsさんから「目標とするテイクレート水準はどれくらいですか?」という質問がありました。
これに対するCEO村上の回答は、「現在のテイクレートは4パーセント程度です。これに対し、5年で2倍程度にしていくことを努力目標としています」というものになります。もっとも、これはあくまで"努力目標"です。テイクレートは不動産の市場在庫件数などの市場の影響を受けるものです。ですので、テイクレートは右肩上がりにスルスルと上がっていくというよりは、凸凹しながら上がっていくということを想定しています。
7.編集後記
IR担当の重松です。
会社説明資料・解説記事連載の第5回目、いかがでしたでしょうか。
株価は将来の成長の期待を織り込んで形成されますので、成長戦略は、株主・投資家のみなさまとしても気になるところだと思います。実際、機関投資家の方々との最初の面談では、我々IR担当としても、成長戦略についてしっかりとお話を差し上げているところです。
手前味噌で恐縮ですが、個人的には、カウカモの成長サイクルはシンプルでわかりやすいと思っています。もちろん、シンプルだから実行が簡単というわけではありません。不動産流通市場という巨大な市場で、大企業も含めてひしめき合っている中で、この成長サイクルを実行していくということは決して簡単なことではないと思います。
しかしながら、カウカモは、すでに買主ユーザーの獲得については、成長サイクルを把握してメソッドを構築済みです。また、これにより蓄積された買主ユーザー基盤とデータがあります。さらに、その買主ユーザー基盤とデータを基に売主に対し「早く適正な価格での売却」という価値を提供できるという実績もあります(上記2参照)。
今後は、これらを武器にして、「しっかりと認知を高めてカウカモの売主サイド強化の成果を出していきたい」と、ツクルバメンバー一同、事業に邁進しているところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。