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【大人もやってみた】STEAM学習

新しい学びかた、STEAM教育。
「説明の文章は読んだことあるけど、いまいちピンとこないなあ」って方いませんか?
私もそうでした。正直、実際にやってみないと具体的なイメージを持つのって難しいんじゃないかと思います。

ということで今回は、STEAM的な手法の学習につくるまなぶ京都町家科学館のナビゲーターが取り組んでみました。
(ふだん小学生向けの教材を開発している我々ですが、ここはあえて大人として学習していきたいと思います!)

ナビの思考の順番をなぞってみると、「STEAM教育とは?」の答えが なんとなく見えてくるかもしれませんよ。


身近なところからテーマ決め

さて、まずはテーマを決めたいと思います。
といっても、最初は小難しい研究テーマである必要はないでしょう。
なにせ、興味が失せてしまうと学習が進みにくくなるので…(苦笑)

と、頭をかくために持ち上げた腕が目に飛び込んできました。
ん?そういえば、自分の腕って普段意識しないけど、ものすごく複雑に動くよな…。
自分の背中を掻いたり、タンスの裏に落ちた書類を手探りで拾い上げたりしたいとき、あらゆる方向、あらゆる距離に末端の器官「手」を移動させてくれる、縁の下の力持ち。かなりカッコいいのでは…!?

ということで、今回の学習テーマは『ヒジはどうやって動いているか』で始めることにします。

「そんなんで学べるの?」なんて心配ご無用。
STEAM学習の特長のひとつは、あらゆる分野にわたって学ぶこと。
つまり手近なテーマで始めても、いずれ学校で習うような内容に触れることになるのです!


『ヒジがどう動いているか』

まずは自分の体を観察してみましょう。せっかく研究対象が身近なので、どんどん実験しないともったいない!
STEAM学習には数学(Mathmatics)も含まれるので、計測や空間のイメージも使っていきましょう。

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自分のヒジを動かしながら観察すると、以下のことが分かりました。
・ヒジは2次元的に開閉する
・ヒジ内側の角度は約30度~180度
・ヒジ関節を曲げたとき、外側に硬い骨が突き出てくる

この観察に、大人としてすでに知っている知識を盛り込むと、こんな感じでしょうか。

〇関節は骨と骨の継ぎ目で、いろんな角度に変えられるが、曲げられない方向や角度もある。とくにヒジは、ひとつの方向でしか開閉できず、その角度は約30~180度である。

ここから、どう学習を深めていくのか。

つくるまなぶ式STEAM学習のステップは、『じゃあ作ってみよう!』てな感じになります。
つくってみれば、更に気づきや疑問が得られ、もっと詳しくわかるキッカケが得られるのです!


つくまな流STEAM学習『つくってみる』

さっそく、作ってみましょう。
扇みたいに、決まった方向にのみ開閉する仕組み…。
板2枚を重ねてピンで留めたらできるかな?

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それなりに様になっています。
手も描いてみると、模型っぽさが増しますね。(そうか?)

そうそう、さっきの観察では、開く角度は最大180度くらいでした。
今のままだとヒジがあらぬ方向に曲がって痛そうです。
開きすぎないよう、ストッパーをつけてみましょう。

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これで、関節の逆反りは防げそうです。

ただし、問題発生。ストッパーが邪魔になり、90度以下にも曲がらなくなってしまいました!

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ストッパーの位置を変えてみるか、それとも…。

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試しにストッパーが当たる部分を切り取ってみると、30度くらいまで曲がるように。けっこう上手くいきましたね。


『つくる』を通して『まなぶ』

ここまで作ってみたところで、大変なことに気づいてしまいました。
このままだと動きません。
外部からの力で動かすことはできても、模型自身の力で動かないのです。
(当然っちゃ当然)

ということで、模型の中に動く仕組みを盛り込んでいきたいと思います。

骨を動かすといえば、筋肉です。
筋肉といえば、縮むよね。
縮むといえば、輪ゴムが代わりに使えるかな?

関節がしっかり閉じられるように。でも端っこすぎると輪ゴムの長さが届きそうにないので、中央あたりに留めます。

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しかし、開こうとすると、

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輪ゴムがジャマな位置に来てしまいます。
これじゃヒジが引っ掛かってタンスの裏が探れません。

しっかり閉じつつも、輪ゴムが伸びたときにヒジの内側に出てこないようにするには…

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片側をヒジ関節に近づけてみました。

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これなら、ヒジが太くなりすぎずに済みそうですね。
しかも、関節を広げるときに加える力が小さくなったのを実感しました。
筋肉の疲労も軽減できるなんて、めっちゃお得!

・・・・・・

ここで、ちょっと考えてみましょう。
なぜ輪ゴムを留める位置を変えたら小さな力で広げられるようになったのか。

小学校で習いませんでしたっけ、あの、てんびん?に重りを吊るすやつ。
支えている場所に近ければ重りがたくさん要って、遠ければ少なくていいという。
あれっぽくないですか?(物理が苦手なのが明白)

とにかく当てずっぽうですが、調べてみました。
検索ワードは『筋肉 つりあい』。
検索結果の1ページ目は、大学の研究室の論文だとか小難しそうな内容ばかりでスルーしてしまいましたが、2ページ目に気になるサイトが出てきました。

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日本クレーン協会(http://www.cranenet.or.jp/tisiki/rikigaku.html
の、基本的な力学に関してまとめてくれているページのようです。

言われてみれば、工事現場などで見る大型クレーンって巨人の腕か恐竜かというような、生き物じみた形です。
人間の腕とも似たような仕組みが働いているのかも??

で読み進めていくと、どうも「力のモーメント」という項目が参考になりそうです。
ナットを締め付けるとき、スパナはできるだけ端っこを持った方が軽い力で済む…。そうですよね、やったことあれば体感として知っています。

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その記事を参考にしながら、図など描いて考えていたのですが。(正しいのか不明)
けっこう単純なんじゃ?と気づきました。

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点線が輪ゴムの長さなんですが、どう考えても支点に近い方が、遠い方より短くなります。


輪ゴムは伸びるほど戻ろうとする力(ここでは負のモーメント?)も大きくなっていくのは体感で知っていますから、支店に近い位置で留めた方が軽い力(正のモーメント?)で開くというのも納得です。


【STEAM教育とは?】手を動かすと見えてくる!

ヒジの模型をつくるあいだに、生物や物理の知識に触れ(Science)、モノで表現し(Art)、より正確な再現を求めて試行錯誤(Technology、Engeneering)することができました。

このように様々な分野の要素を取り入れながら学ぶことで、「使いどころがわからない」となりがちだった知識が実生活と結びつき、生きて使える力になっていきます。

そして、作っているうちに浮かぶ疑問が動機となり、物理アレルギー気味だった筆者も積極的に知識の習得に取り組めました。
作っていて体験したこと(輪ゴムの戻る力など)は、知識の理解のヒントにもなりました。

分野横断的に学ぶSTEAM学習の流れに「実際につくってみる」という経験がいかに役立つかが分かります。

最後にもうひとつ、こういう学び方って、お子さんだけにさせていては勿体ないんじゃ?とも感じました。
いろんな経験を積んでいる大人が「あれって、そういうことだったのか!」と再発見する楽しさも、STEAM学習にはあると思うのです。

ここまで読んでくださった大人のみなさん、手始めに身近な材料で
『つくるまなぶ』始めてみませんか?

もちろん、お子さんといっしょに、というのも素敵です!
当館のオンライン講座なら追加キットは割安でご購入いただけますよ!
オンデマンド教材という、キット+動画の販売もありますよ!


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