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未完成のまま表現する

はじめまして。色採亭折れんじと申します!

私は2023年度に3年次編入学し、筑波落研に入りました。そのため、学年は3年次ですが、まだ入会して1年も経っていません。

私は、落研に入るまで、落語を観た経験がほとんどありませんでした。今回は、そんな私が落研に入ったきっかけ、入会して感じたことを書きます。
少しでも落研に興味を持ったら、気軽に見学しに来てほしいです🍊

落研に入った理由

そもそも、なぜ落研に入ったのか。
かつて、私は高校演劇をやっていた時期があるのですが、役者の経験はほとんどなく、不完全燃焼になっていたところがありました。そのためか、大学入学時、何かしら表現に関係することがしたいな〜と思っていて、3年生からでも入れそうな雰囲気であることや、新歓ミーティングで見た会員2名の落語が本当に素敵だったこと。そして、落語に不思議な縁を感じていたため、「よし、入会しよう!」と勢いで落研に入りました。

さて、先に書いた通り、私は落研に入るまで落語を見た経験がほぼゼロでした。演目として知っていたのは、寿限無と芝浜(タイトルのみ)ぐらい。しかし、入会時、落語に対して漠然とした興味がありました。それは、何故か好きなアーティストや芸人が落語家について語る場面が多くあったからです。

その中でも強く惹かれたのは、星野源さんがエッセイで引用していた、二代目桂枝雀さんの言葉です。

私の大好きな落語家、二代目桂枝雀はあるテレビでこのような発言をしていた。

『「気が寄る」というか。
自分のことを、思いすぎるんですね。
でも、実は自分を思うことが自分を滅ぼすことなんですな。
人を思うことが、本当は自分を思うことなんです。』

『そして生活はつづく(文庫版)』著・星野源 p.127より

これを初めて読んだ時、「これ、あまりにも自分に欠けてる部分だ〜〜!!」と思ったのを覚えています。自分が、本当はもっとこうしたいという理想を考えすぎて、周りの人に上手く優しくできていなかった時期にこの本を読んでいました。

そしてこの言葉の後に書かれている源さんの文章で、「音楽や演劇をやっていると、自分がなくなったような感覚に陥る時がある」と書かれていました。これを具体的に言うと、表現を通じて目の前のお客さんと一体化できる時があること。そしてその時、自分自身の内面を考え続けてしまうところから、一歩離れられるということなのだと思います。
数年前の私はこの感覚に強い憧れを持ちました。

そこから時間が経っても、編入学試験で志望校に合格しても、心配性で真面目すぎてしまう現実の自分と、もっとユーモアを持って人と話したいという理想の自分のギャップが気になってしまう、すなわちかなり「気が寄る」状態が続いていました。何か自分が行動しなければ変わらない、何か表現をやりたい、そうだ何かと縁がある落語をやってみようかな、という思考回路でした。


落研にいて感じたこと


9月に開催された若手勉強会。それが、私を含めた新入会員5名のデビューの場でした。緊張してました。どれぐらい緊張したかというとテンパって着物の帯が結べず、電話で当時の会長に「着付けが…終わらなくて……😢」と泣き言を言って、手伝ってもらったぐらいです。

いざ高座に上がって落語を披露すると、演技をしながらもお客さんが笑っている顔が鮮明に見えて、本当に嬉しかったです。そして、落語を通してその場のお客さんとコミュニケーションを取っているんだな、とも感じました。自分が見せたい自分を表現出来る。熱中しているとそれこそ目の前のお客さんと一体化するような感覚が得られる。源さんがいう「自分がなくなる」の感覚に近いものがありました。落研に入って良かったと思いました。

今でも自分の現実と理想のギャップに気が寄ってしまい、落ち込むこともあります。一方で、欠けている部分がある、未完成のままで高座に上がり、表現し続けてこそ得られるものもあります。落語は人間の失敗や、欠けている部分の滑稽さをお客さんと共に笑い合える側面があるので、自分の未完成さも面白さかもな、と思えるようになってきました。

最後に。
ここまで書いてきたように、落研にいて、私自身の内面的な変化があったのですが、同時に忘れたくないこととして、落研の会員に対する感謝の気持ちがあります。
一人一人、通ってきた文化のジャンルや、学問の専攻分野が異なっていて、落語にもそれぞれの個性が出ている。それを実感する度にこの落研という場所が好きになります。会員によって落研に入った動機は違えど、高座に上がって落語を披露する時、「目の前の人たちがどうやったら笑ってくれるか」と試行錯誤している姿や志には重なるものがあります。

入会・見学希望は年中受け付けています。
それだけではなく筑波落研公式X、Instagramでは学内で行う寄席の告知も随時行っています。ぜひ、観にきてください!お待ちしております! 🤝🏻

落研の活動に興味をお持ちでしたら、活動について書かれているnoteも読んでみてください!


私は、これまでにエッセイやインタビューなど、その人自身の内面からでた言葉に背中を押された経験が多く、だからこそこの文章を書きました。

私自身、落語は漠然と敷居が高いものであるような気がしていたけど、実際に観てみたらそんな考えは吹っ飛ばされました。興味があれば新歓寄席に気軽に行ってみるのをオススメします!

演者自身は未完成で良いけど、落語を披露する時は余裕をもって稽古をして、完成させてから高座にあがった方がいいですね。そう思っているのに、毎回本番直前まで台本とにらめっこしてしまいます。

色採亭折れんじ

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