見出し画像

「嘘つき上手と、嘘つき下手と」の話

息子が5、6歳の頃。

夫が仕事帰りにスイーツを買って来てくれた。


私はその時、ご飯を食べたばかりでお腹いっぱいだったので、

「明日、帰ってから食べるから、二人とも食べんでな」

と念押ししておいた。


次の日。

仕事が終わって、息子を保育園に迎えに行く。


帰宅し、買い物したあれこれを冷蔵庫に閉まっていると、スイーツを発見。  

(おー!そうじゃ、後で食べよう!)


2階に上がり、洗濯物を取り込み、1階のキッチンへ戻ろうとした時。

私は驚きの光景を目にする!


息子が冷蔵庫の前で、あたりの様子をうかがい、コソコソしている……

(はっ!私のスイーツを食っている!ヒドイ!食べんでな、って言ったのに!)

さて、どうしたものか……

私は素知らぬ顔で、冷蔵庫のドアを開け、


「あれ?昨日のスイーツがない!息子よ、食べた?」

と聞くと、


「何それ?知らんよ」


ワォ!

しれっとした顔で嘘つきやがって!

見たし!


「え……ホンマに?」

「かっちゃんが食べたんじゃない?」

(息子は夫の事をお父さんと呼ばず、愛称で呼ぶ)


なる程、果てさて、どうした物か……


「あのさ、私のお母さん、もう死んで、天国おるじゃろ?」

「うん」

「で、内緒にしとったけど、本当に困った時とか大変な時、後は……誰かが嘘ついた時とか、私に頭の中で教えてくれるんよ」

「え?ホンマに?」

「うん。聞いてみてもいい?」


と言って、私は目をつぶり、瞑想する様な体勢でしばらく黙り込んだ。


「やっぱ、〇〇がスイーツ食べた、って言いよるけど……」


すると、息子は目を輝かせ、

「スゲー!お母さん、本当に天国のおばあちゃんと話が出来るんじゃ!」

「うん。スゲーんじゃけど、そうじゃなくてさ。ダメじゃろ?お母さんの楽しみにしとったスイーツをさ。君は昨日、自分の食べたでしょ?しかも、かっちゃんのせいにして……」

「うん……ゴメン」

という出来事があった。


また、ある日。

私はコンビニで、美味しそうなスイーツを三人分買ってきて、夕食後に食べようと思っていた。

夫と息子はスイーツの存在を知ると、夕食前に食べてしまった。

私は、後の楽しみに取っておいて、先にお風呂に入る事にした。

お風呂からあがり、キッチンの方へ歩みを進めると……


ドアの隙間から、衝撃的な光景が。


そこには、冷蔵庫の前でキョロキョロと、明らかに挙動不審な動きをする夫の姿があった!

(ええ?君も盗み食いすんの?)


私は何食わぬ顔で、冷蔵庫を開けた。


「あれ?スイーツがない!かっちゃん、食べた?」

「食べてないよ」


夫の顔がニンマリしている。

夫は壊滅的に嘘が下手なのだ。


「かっちゃん……お口の周りにクリームがついてるわ」
 
「えっ?」

と口の周りをゴシゴシした。


「いや、嘘じゃけども」

「ひ、ヒドイ!騙した!」

「あー、うん。ヒドイの私かー」


そんなこんなで、我が家では今この瞬間も、カイジ達も驚愕する程の騙し騙されのデスゲームが開催されている。


ここがそう、あの幻の……

夢と汗と涙を乗せた「希望」という名の、エスポワールなのだ。













気が向けばサポートして下さると、大層嬉しいです!頂いたサポートは私自身を笑顔にする為に、大事に大事に使わせてもらいますゆえ、以後よしなに(๑•̀ㅂ•́)و✧