白血球が無くなったときの話 3
先生の発熱予言が的中し、
さっきまで心のどこかに残っていた入院初体験のワクワクは一気に消えていきます。
「本当に、私の身体は入院が必要な身体だったんだ、、、。」
さっきまで柔らかかった看護師さんの動きが、点滴を変えに来たり、飲んだことの無い薬を持ってきたり、きびきびとしたものに変わるのを見ていると、さらにその実感が強まります。
菌に抵抗出来る白血球が、極端に低い訳ですから、もし万が一のことも有り得る状況です。
けれど、この時はまだ、そうは言っても自分は大丈夫だと、自信がありました。
身体の重たさは、さっきまでとは随分変わりましたが。
明朝、幸いにも微熱まで下がりました。
入院期間は約1週間くらいと確か言われていたので、何となく安静にして過ごしてさえいればいいんだと、何となく考えていました。
その間に、白血球の数が復活してくれればいいのですから。
けれど、現実はそう甘くはありませんでした。
熱が下がれば、気持ちは前向きになり、
好きな映画や漫画を見て過ごすのですが、
また時間が経つと熱が出始めるのです。
とにかく、身体がだるい。
そして、次の日には白血球がさらに減っていきます。
すると、今度は新しい症状が出てきます。
歯茎が腫れて痛いのです。
色も赤黒い様な、決して自然な色ではありません。
歯茎が痛いということは、入院生活の楽しみである食事が苦痛です。噛めない。
こうして、あれよあれよという間に、楽しみの食事がお粥に変わってしまいました。
実は、私がお粥が苦手ということもあり、この瞬間は、希望が消えたというよりも、絶望がやって来た気持ちでした。
「うわぁ、、、あぁ、、最悪だ、、、。」
それでも気を取り直して、
「白血球さえ増えれば。1週間だから。」
そう自分に言い聞かせて、現実を受け入れます。
お風呂は当然、初日から入れず、
その上、歯茎が腫れ始めると、出血を防ぐために歯が磨けなくなります。
頭は痒くなり、口の中も不快で臭う、身体が重い、また発熱。
「これは、もしかしたら本当に死ぬかもしれないんだ」
流石の私でも、少しずつそんな感覚を覚え始めます。
そして、入院4日目には、
とうとう白血球の数値が0を示しました。