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ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ

TSUKUBA LIVE! noteをご覧の皆さんこんにちは。
筑波大学ホームゲーム TSUKUBA LIVE! にて全体運営の学生ディレクターを務めています、体育学学位プログラム修士2年の兵藤秋穂です。

これまでツクバライブをつくるTL!クリエイターズとして2年間活動し、計7回のホームゲーム開催に携わってきました。数少ない発足当初から在籍するメンバーとして現在も運営に関わっていますが、この春の大学院修了に伴い、今回がTL!クリエイターズとして迎える最後のツクバライブになります。

ツクバライブからの卒業を間近にしてコラムの執筆機会をいただきましたので、このnoteでは少し私自身の話をさせてもらおうと思います。思いのまま書き進めた結果、想定以上の長文となってしまいましたが、少しだけお付き合いいただければ幸いです。



1. 人生の転機、スポ変

大学2年生の秋、人生を変える授業に出会いました。「スポーツが変われば、大学が変わる」という、全学対象の自由科目です。各回にスポーツの最前線で活躍する講師の方々が登壇し、日本の大学スポーツの健全化や最大化について講義していただく授業なのですが、これが私にとっては非常に衝撃的で、同時にとても刺激的なものでした。

「日本の学校スポーツに存在する歪みについて」や「エンタメ空間を創り出すためのスタジアムの工夫」「スポーツが持つ教育的な価値とは?」「アメリカの大学スポーツはどのようにして発展したのか」「地元企業が大学スポーツとともにできること」など、体育専門学群の授業でも触れられないような視点からも切り込んだ興味そそられるテーマと、知識と行動力に富んだエネルギッシュな講師陣による講義の数々。私は一瞬にしてこの授業の虜になり、各回の授業後には必ず講師の先生に質問をしに行くくらい、魅了されていました。

学群2年、#AD授業 スポ変を受講していた当時のツイート

この授業を受けて感じたことは、「大学スポーツはもっと面白いことができる、可能性に満ち溢れた分野だ」ということでした。これまでスポーツに関わる職業といえば教員しか思い浮かばなかった私にとっては、こんなにも多角的なスポーツへの関わり方があるということ自体が衝撃的でしたし、それに気づいたことで自分自身のキャリア選択の幅が一気に広がるきっかけにもなった瞬間でした。

そして2020年3月、実際に大学スポーツ分野で大きな発展を遂げている、アメリカ・ハワイ大学を訪問します。

2. ハワイで見たCollege Sportsの衝撃

ハワイ大学の構内に掲げられたAthleticsのフラッグ

ハワイ大学で見た大学スポーツは、どの瞬間も初めて目にするものばかりで、終始興奮冷めやらぬ6日間でした。日本の大学とは比べ物にならないくらい大規模なスタジアムやアリーナが学内に複数完備され、学生アスリートの競技環境はもちろん、栄養サポートやコンディショニングサポートの充実度も、日本のプロチームに匹敵するレベル。加えて、アメリカでは大学スポーツが教育の一環として捉えられており、全ての学生アスリートが学業と競技の両立を実現させられるよう支援体制が整備されています。

大学とは思えない施設の数々

そして何よりも驚いたのは、男子バレーボールのホームゲーム観戦でした。大学生の試合を見るために、アリーナが開場する1時間以上も前から多くの地域住民や子どもたち、学生たちが会場の周辺に押しかけているのです。観客のほとんどが「H」のスポーツエンブレムロゴの入ったウェアを見に纏い、スタジアムフードを片手に次々と座席を埋めていきます。

ハワイに住む人々にとっては、家族や友達と一緒にホームゲームに遊びに行く週末が日常になっていて、大学スポーツが生活に彩りを与えるものとして溶け込んでいる、そんな印象を受けました。得点が決まればアリーナ全体がドッと沸き、空間全てがハワイ大学の選手たちにエールを送る大応援団になっていきます。チームのことを何も知らない私たちでさえ、気づいた時には自然と声を出し、観客席にウェーブを生み出すひとりになっていました。

人生始めてのホームゲーム観戦@ハワイ大学

ハワイでの体験は、大学スポーツの面白さや可能性を存分に教えてくれたと同時に、私が学生アスリートとして在籍する日本の大学スポーツの現状とのギャップを可視化させました。

私たちがかさむ活動費用に苦しみながら、老朽化した練習環境に不満を言いつつ練習をし、ガラ空きのスタンドを視界の隅に捉えながら競技会に出ている間にも、海を渡ったアメリカの学生たちは、スカラーシップ制度のもと、充実した競技環境と学業サポートを受けて文武両道を実現させ、観客で満員となったスタジアムの中心で大声援のもと競技している。

18歳から22歳の時期を同じ「学生アスリート」として過ごしているのに、日本とアメリカでは経験できることにこんなにも大きな差があるのかと痛感しました。もし日本でも、学生アスリートが大学で過ごす4年間の間にたくさんの魅力的な経験を得ることができたのなら、そして大学での経験を価値あるものだったと振り返ることができたのなら、大学スポーツはもっとたくさんの人の人生を豊かにする存在として根付いていくのかもしれない。

この経験をきっかけに、私自身の中に「大学スポーツがたくさんの人々の生活を豊かにする未来をつくりたい」という想いが芽生えていきます。

3. TSUKUBA LIVE!での歩み

TSUKUBA LIVE!に関わるたくさんの筑波大生たち

ハワイから帰国後は、新型コロナウイルスの影響により対面でのスポーツ活動が大きく制限されました。少しずつ活動の規制が緩和されていくと同時に、筑波大学でも大学スポーツの新たな取り組みが始動し始め、2022年1月に現在まで続く筑波大学ホームゲーム TSUKUBA LIVE! の企画が本格的に歩みを始めます。

私にとってツクバライブで過ごした2年間は、筑波大学に在学した6年間の中でも特に濃密で、かけがえのない時間でした。2年前、まだツクバライブという名称もそのビジョンも定まっていないような頃から、「大学スポーツをもっと面白くしたい!」という志を持った学生たちと出会い、たくさんの議論を重ねて、今まで日本のどの大学でもなし得ていないホームゲームをつくることに奮闘した2年間。ハワイ大学を訪問して味わった大学スポーツの可能性を、日本でも広げていけるようにと走り続けた日々でした。ここに来なければ交わることのなかった仲間たちとの「挑戦」の数々が、自分自身を大きく成長させてくれたと感じています。

クリエイターズの仲間と一緒に地域の夏祭りにブース出店

特にマーケティングチームのチーフとして過ごした2022年11月のサメテタテからの4回は、とてもとても苦しく、忙しなく、もがきあがいた、でも愛おしい、そんな1年間でした。マーケティングと広報の違いも分からないまま、見よう見まねで始まった「サメテタテ」の広報。会場を満席にできなかったらどうしようという不安に押しつぶされそうだった日々。販売開始23分でチケットが完売した時の表現しようのない喜びと安堵。初めてツクバライブの会場で、ホームゲームを作り上げるひとりになれたことを実感した瞬間。あの時から、本当の意味で私のクリエイターズとしての人生がスタートしたような気がします。

2023年11月には、私の人生を変えるきっかけになったハワイ大学男子バレーボール部をつくばに迎え、日本の大学史上初のホームゲームでの国際マッチを実現させました。筑波スポーツを中心に、1000人を超える観客が会場を埋め尽くし、試合が進むにつれてアリーナ全体が一体となって筑波大学に声援を送る様子を広報卓から見届けたときの高揚は、今でも忘れられません。

2022年3月、初のホームゲームに向けて準備を進めていながら、開催の3日前に中止が決定したあの時。満員の観客を迎えて開催予定だった「幻の TSUKUBA LIVE! FUSION」の予想図が、現実のものとなった瞬間でした。

開催が叶わなかった2022年3月26日の実現予想図
2年越しに、満員のつくばカピオが現実になった日


4. ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ

クリエイターズとして過ごした日々は、毎日が初めて挑戦することの連続でした。ツクバライブという場には、自分の身の丈以上の挑戦を心置きなくさせてもらえる環境がありました。

やったことがないからこそ、とにかく持てる精一杯を注いでみる。失敗することがほとんどだし、みんな本気でつくっているからこそぶつかることも少なくない。時には自分たちの精一杯を根本から否定されているような気持ちにさえなる。

チケットが思うように売れず、夢の中でチケットを売ったこともありましたし、当日を閑散とした観客席とともに迎える夢も何度見たか分かりません。それでも投げ出すことなく、2年間やってこられたのは、大学スポーツは面白いのだと、私たちクリエイターズがつくっているのはホームゲームにとどまらない「日本の大学スポーツの未来」なのだと、たくさんの人に示したかったからかもしれません。

皆さんは、漫画「宇宙兄弟」を読んだことがあるでしょうか。

数々の名言を残し、人生の教科書とも呼ばれている作品ですが、その中には主人公 南波六太の次のセリフがあります。

出典:「宇宙兄弟」コミックス第16巻より

「ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ」

振り返れば、大きな壁にぶち当たり逃げ出したくなる度に、この言葉を噛み締めながら必死にもがいた日々でした。身の丈よりもちょっとだけ難しい挑戦が、自分を成長させるための糧となり、「ちょっとだけ無理な挑戦」の積み重ねによって、始めた時には想像もできなかったような成果を、幾度となく得ることができました。

初めてのこと・経験のないことにチャレンジするのは、誰にとっても勇気のいることです。それでもそのチャレンジのハードルは、日頃の「ちょっとだけ無理な挑戦」と、それを成し遂げたときの「何にも代え難い充足感」によって、下げることができるのではないかと思います。

ツクバライブでの挑戦の数々は、間違いなく私を一回りも二回りも大きく成長させてくれましたし、一見無謀に思えるような挑戦にも怯まずに挑んでいける勇気を備えさせてくれました。きっとこれらの経験は、これから先社会に出てからも、さまざまな場面で私を支えてくれるでしょう。

大学院生活の大半を注いだツクバライブも次が最後。


5. おわりに

気づけば3月に入り、TSUKUBA LIVE! 男子バスケットボールの当日まで1ヶ月を切りました。会場にお越しいただくみなさんには、コート上で輝く選手たちはもちろん、その活躍をホームゲーム運営という立場から支えるクリエイターズたちにも注目してもらえればと思います。

一人一人に大学スポーツへの熱い想いがあり、その日までに積み上げてきた数えきれないほどの挑戦があります。そんなアツいクリエイターズたちの存在は、TSUKUBA LIVE!からは切っても切り離せないものです。

私自身もあと少しだけ、大学スポーツの未来をつくるクリエイターズとしての時間を全うしたいと思います。3月26日、私にとっての集大成となるTSUKUBA LIVE! を、ぜひ会場で共有しましょう。


筑波大学ホームゲーム TSUKUBA LIVE!
全体運営 学生ディレクター
兵藤秋穂


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