見出し画像

カナダってどんな国?~さまざまな英語が飛び交う多民族国家~

皆さんはカナダに対してどのようなイメージをお持ちですか?

メープルシロップ、スモークサーモン、ナイアガラの滝、カナディアンロッキーなど、自然豊かな国だというのが第一印象でしょうか。

もし私が、カナダとはどのような国かと聞かれたら、

 さまざまな英語が話されている多文化主義の国

と答えます。

ちなみに、カナダの公用語は英語とフランス語ですが、ここでは私たち日本人にもお馴染みの英語に限って話します。

アメリカ、オーストラリアなどと同様に、カナダは移民で成り立っている国です。

ですから、カナダ人とはどのような人たちかと聞かれたときに、これこれこういう人という定型のようなものがありません。

ここでは、出身、背景、人種、母語などが違うさまざまな人々が、英語というツールを使って暮らしています。

一方日本では、黒髪に茶色い目の日本人が母語の日本語を話して暮らしているのが一般的で、法律以外にも社会全体が共有する常識、慣習などが空気のように存在します。

このように、カナダと日本はお国柄がまったく違うので、日本人がカナダの多文化主義を理解するのは少し難しいかもしれませんね。

そこで、具体的な数字をあげて説明したいと思います。

英語圏のカナダに世界中から集まる人たち

カナダは移民政策を積極的に推進しています。

2022年には、年間目標数の43万1645人を達成。

さまざまな分野で労働力を確保することを目指して、移民数は2025年まで増やし続ける計画です。

最終的な年間目標移民数は50万人。

令和4年の東京都葛飾区の人口が45万868人なので、少なくともこれから2025年までは、毎年葛飾区規模の人口が移民としてカナダに迎えられることになります。

おそらく、カナダ政府は移民の出身国や文化圏が偏らないよう調整していると思いますが(1つの国や地域に集中した場合、カナダが徐々にその国の言語やその地域の価値観に取って代わられる恐れもあるので)、これはかなり大胆な政策だと感じます。

あらためて考えてみると、カナダという国は多文化主義という部分だけが確固たる国の軸であって、お国柄は時代によって多少流動性があるのかもしれません。

例えば、かつてはヨーロッパからの移民数が圧倒的でしたが、今はその多くがアジアからです。

ということは、これまで人口の大多数が白人で、ヨーロッパ文化の影響が大きかったカナダが、今後はアジア文化を色濃く反映するようになるかもしれません。

それでも、この国の人々は、「時代の自然な流れだよね」と言って何の抵抗感も持たずに変化を受け止めていくのでしょうか。

ネイティブの手を離れた、共通語としての英語

出身地域の異なる人々が集まって暮らすカナダでは、英語という共通言語を使ってお互いに必要な意思疎通をはかります。

ですから、ポーランド人の英語、インド人の英語、中国人の英語、日本人の英語など、それぞれが母語の影響を受けた英語を話します。

もちろん、ここで生まれ育った、母語が英語の人もたくさんいますが、基本的にさまざまな英語が話されているというのが、カナダの日常風景です。

また、ここでは親子で母語が違う例も珍しくありません。

我が家は子どもたちも日本語を話しますが、もし英語だけであれば、私と子どもたちも母語が異なっていたことになります。

2021年にカナダで行われた国勢調査によると、カナダ人の4人に1人が英語(とフランス語)ではない母語※を1つ以上持ち、8人に1人が家で英語(とフランス語)以外の言葉を主に話して暮らしていることがわかりました。

これを日本語に置き換えて言い直すと、4人集まったら1人は母語が日本語以外の言語で、8人集まったら1人は家で日常的に外国語を使って会話していることになります。

世界中のさまざまな地域から集まった人たちが、独特の英語を使ってお互いにコミュニケーションを取っている暮らしを想像していただけるでしょうか。

アメリカを形容するのに「メルティングポット(るつぼ)」が使われるのに対し、カナダには「モザイク」が使われます。

これは、アメリカでは文化背景を問わず最終的に「アメリカ人」になることを期待されるのに対し、カナダではポーランド系カナダ人、日系カナダ人など、自分のルーツを大事にしたまま生きていきやすいということなのかなと思います。

アメリカに住んだことがないので実情はわかりませんが、少なくともカナダでは、私が日本の価値観を大事にしていても奇異の目で見られることはありません。

それを他人に強要したり、そのことで他人に迷惑をかけたりしない限り、私が日本を大事にする気持ちも尊重されます。

※ここでいう母語とは、子供のうちに学んで今も理解できる言語のことです。

英語×モザイクの国は発展し続けるのか

このように、世界中から人が集まるカナダでは、英語というコミュニケーションツールを使って、各自がルーツを大切にしながら暮らしています。

「多様性(ダイバーシティ)」という言葉は、今日、日本でも耳にすることが増えたので、その意味をご存じの方は多いと思います。

カナダ社会は、この多様性を抜きに語ることはできません。

多様性イコール必ずしも善ではないので、この価値観を国柄のまったく違う日本にそのままスライド式に当てはめ、日本にも多様性をと主張するのはいささか乱暴だと思います。

でもカナダでは、1971年に多文化主義が宣言されて以来、少なくても50年ほどの間、この方針で国を築いて来ました。

ヨーロッパのキリスト教的価値観を共有する国々からの移民が大半だった時代と比べて、今はその範囲が世界中に広がった点がこれまでとの大きな違いだと思います。

この移民政策がカナダにとって吉と出るのか凶と出るのか、結果がわかるのはこれからです。

---
★ツイッターで、英語学習者のモチベーションアップにつながる海外&英語情報を発信しています。興味があれば、ぜひフォローしてください。下の画像をクリックして、フォローボタンを押すだけです。
 ↓↓↓

参考:
■While English and French are still the main languages spoken in Canada, the country's linguistic diversity continues to grow


内容を権利者の許諾なく複製・複写・翻案・放送・出版・データ配信(送信可能化を含む)することを禁止いたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?