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カリフォルニア・セントラルコースト

看護師としてずっと働きたかったカリフォルニアで、初めて働くことができた場所は、セントラルコーストにある小さな町だった。
ずっとアメリカに住んでいても、セントラルコーストという地域を表す名称をきいたことはなかったけれど、
サンフランシスコとロサンゼルスの中間、有名な町で言うとサンタバーバラなどがあると聞いて、納得した。

ロサンゼルス、サンフランシスコも住むには楽しそうだったけれど、家賃が高いだろうし、自分の車を持ち込むには、渋滞や駐車事情が大変だろうな、と思ったので、落ちついた郊外で働きたいな、と思っていた。
そして、セントラルコーストはまさにうってつけの場所だった。

私が住んでいたのは2020年の夏から秋にかけての、3か月。
世はパンデミックの真っ只中だった。
私の赴任先は、葡萄畑、ワイナリー、そして商品用の花畑(花屋さんに売られる花が栽培されている)しかない、今まで住んだ中で、一番小さな町だった。
しかし、サンタバーバラまでは40分ほどで行けるし、ロサンゼルスまでも2時間弱。
どこへ行くにも車は必須だったけれど、隣町にはなんでも揃っていたので、
全然不便は感じなかった。

葡萄畑がなだらかに広がる丘陵、夕陽がみえる太平洋沿いの道など、
普段、通勤や買い物に使う道が、それはいちいち絶景続きだった。
田舎といっても、カリフォルニアはカリフォルニアなので、
州全体が過疎地のモンタナとは全然違っていた。

任期の3か月間、毎日幸せで、ここにずっと住むのはどうだろうか、とも思い始めていた。
そうは言っても、仕事の選択の幅や、自分のことだからどんなに良い場所でも、一つの所に居続けたら、そのうち飽きてしまうんだろうな…とも思ったり。

任期が終わって、シアトルに戻ったのだけど、
冬のシアトルなので、ずっと晴れない毎日の中、
3か月間一度も雨が降らなかった、セントラルコーストの日々を思い起こしていた。

20年ほど前の、なんとなく知っていた映画が、実は私がセントラルコーストに住んでいた場所についてだったと、シアトルに帰ってから知った。
早速、動画サービスで見てみると、懐かしい風景が次々と出てきて、私がいた時とほぼ変わっていなかった。
映画自体も素晴らしくて、こうして自分にとって大切な場所が映画の舞台になっているのはいいなと思った。
懐かしくなったら、その度にこの映画をみればいいのだから。

公開当時ではなく、中年過ぎてからこの映画に出会えたのがよかったと思う。
ワインを人間に例える台詞が、とても素晴らしい。

この映画、派手な作品ではないけれど、好きな人が多いみたいで、
日本版リメイクもされている。
大人の事情のせいなのか、アメリカ版はセントラルコーストだけれど、日本版はナパが舞台になっている。

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